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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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ポーションと言われると回復アイテムかと思う

 日本の夏。

 気候区分的にはその大部分が温暖湿潤気候に分類される日本ですが、最近では都市部などで気温が上昇しているため、もう熱帯地方だろコレというほどに熱くなったりもします。

 さらに特徴的なのがその湿度であり「日本の夏は暑い? HAHAHA! アメリカはもっと気温高いぜ!」とノリノリで出かけたアメリカ人が「サウナじゃねえかファック!」とぶちギレて帰ってくるほどです。


 しかしそれでも日本はまだマシな方で、東南アジアやアフリカは日本よりさらに平均気温が高く湿度も高かったりします。

 どうりで動物園の象さんたちが夏でも涼しい顔をしているはずです。

 でもだからと言って氷に包まれた果物とかプレゼントされても象さんも困ると思うのですが、その辺はどうなのでしょうか。


「……神は死んだでござる」


 さて、そんな真夏日に安達家のリビングで転がっているのは、猫耳侍なヤヨイさんです。

 日があたらない窓際で少しでも風に当たる体面積を増やすべく伸びています。

 流石猫。本能的にできるだけ涼しい場所と体勢を嗅ぎ取っているようです。


 しかしTシャツに短パンだけで無防備に転がっている姿は非常に目の毒です。特に汗でシャツが張り付いた肌など致死レベルです。

 おかげでローマンさんが目を押さえながらリビングを転がりまわっています。

 どうやら逆まつげが眼球に刺さりまくる呪いはパワーアップしているようです。


「……ヤヨイさんの神様はエアコンなんですか?」


 一方ヤヨイさんの隣で呟くエルテさん。

 こちらも暑さに参っているのか、小さな体を投げ出すように転がっています。並んで転がっている姿はまるで母猫と子猫です。


 ちなみにエルテさんが着ていたローブのフードには何故か猫耳がついていたりします。

 なんか作者も知らないうちについていたのですが、可愛いから問題ありません。むしろグッジョブです。


「二人ともだれていますね。しかしこの暑さは確かに酷い」


 そしてその光景を見て呆れながらも、仕方ないとため息をつくイネルティアさん。

 日本に来たばかりの頃の意識高い系エルフなイネルティアさんだったら叱っていたのでしょうが、どうやら体形と一緒に心も丸くなったようです。

 ただしそのことを口に出すともれなくバーサーカーが降臨します。


「停電では仕方ない。真夏の真昼にというのはタイミングが悪いが」


 イネルティアさんの言葉にそう返すマカミさん。

 一見いつも通りですが、いつもは我儘に動くもふもふ尻尾が力なく垂れています。毛皮に包まれた狼形態になったらヤヨイさんたちの仲間入り間違いなしです。


 そして安達家の面々が揃ってリビングで伸びている原因は、突然の停電により冷房の類がストップしたためでした。

 電気――雷は日本では古来「神鳴り」と呼ばれたように、古今東西で神の御業とされることが多いので、先ほどのヤヨイさんの「神は死んだ」発言は案外間違ってなかったりします。

 つまり発電所で働くおじさんたちは神だったんだよ!


「わしも鍛冶場で熱いのは慣れとるんじゃが、この暑さはのう。リィンベル。おぬしの魔術で部屋を冷やせんのか?」

「できるができん。今わしは全力で冷蔵庫の中身が傷まぬように冷やしておる」


 こちらも参っているらしいオグニルさんに冷静に返すリィンベルさん。

 ちなみにリィンベルさん以外にも魔術を使える人たちは居るのですが、イネルティアさんやシーナさんはそんな生活に密着した器用な調整はできないし、ヤヨイさんとエルテは窓際で伸びています。

 微かな風に揺られてチリンチリンと鳴る風鈴が風流だけど空しいです。


「しかしリィンベルは汗もほとんどかいておらんではないか。自分の周りだけ冷やしてるのではないか?」

「わしがそんな小狡い真似をするわけなかろう」


 グライオスさんの指摘に眉をひそめるリィンベルさん。

 どうやら本当に魔術なしで暑さに耐えているようです。


「まあお年寄りは暑さを感じづらく、熱中症になりやすいらしいですからな」

「よし。その喧嘩買った」


 現れるなり地雷の上でブレイクダンスを始める安定のフリーダム神官ナタンさん。

 リィンベルさんの殺気で部屋の空気が冷えました。でもその殺気で汗が出るのでむしろ余計に居心地が悪いです。


「おお恐い。どうぞこれをお納めください」


 そしてそんな殺気もどこ吹く風で、持っていたお盆の上から抹茶かき氷を差し出すナタンさん。

 もちろん抹茶シロップは自家製です。

 抹茶の粉末やらポーションがあれば割と簡単に作れるので、是非皆さんのお家でも試してみましょう。


「……おぬしお菓子を差し出せば何を言っても許されると思っておらんか?」


 そう言いつつも抹茶かき氷を手に取り食べ始めるリィンベルさん。

 平気な顔をしつつもやはり暑かったようです。


「みなさん、かき氷できましたよー」


 ナタンさんに少し遅れて、同じくかき氷をお盆に乗せて現れるシーナさん。

 やはり暑いせいか、いつもは露出が控えめなのに肩の出たワンピース姿です。

 このまま外に出たら街行く人たちの目に逆まつげが刺さりまくること間違いなしです。


「かきごーりー……」

「くださーい……」


 そしてかき氷と聞いてゾンビのように床を這いずり始めるヤヨイさんとエルテさん。

 今日も日本は平和です。


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