カレーの王妃様
カレー。
日本と同じアジア圏であるインド発祥の料理ではありますが、日本に入ってきたのは文明開化後と割と最近だったりします。
明治に入り解禁された牛肉と、日本人が大好きな米と合うということで、文明開化の象徴とされることもあったそうです。
ちなみに日本でもしばらくはイギリス製のカレー粉がもてはやされていたのですが、ある時イギリス製と偽って国産のカレー粉を販売するという事件が起こったため「あれ? 国産でも味変わんなくね?」と国産のカレー粉が普及し始めたそうです。
それでいいのか日本人。
「おかわり」
そしてドワーフ王国のとある食堂にて、そんなカレーをおかわりしているのは、ガルディアの王妃様であるアサヒさんです。
久しぶりの故郷の味に胃が張り切っているらしく、既におかわりは三皿目です。隣で同じくカレーを食べていた王様が、呆れた視線を向けています。
「……アサヒ。確かにこのカレーとやらは美味い。香りと刺激が強いというのに、具材の味も損なわれておらずその辛さには中毒性があるとすら言える。だがいくら何でも食べるのが早すぎないか?」
「カレーは飲み物!」
王様の苦言にある意味名言で返す王妃様。
ちなみに「カレーは飲み物」というのはウガンダ・トラという芸人さんの言葉が元ネタなのですが、最近になってその言葉を現実にするべくカレーコーラなる飲み物が開発されたそうです。
発売日が四月一日なのでネタなのかと思ったら、普通に販売されていました。
やっぱ日本は未来に生きてんな。
「お待たせしました」
「お、ありがとジュウゾウさん」
おかわりを持ってきたジュウゾウさんに満面の笑みで礼を言い食べ始める王妃様。
自分には滅多に向けてくれない笑顔大サービスに王様が嫉妬しています。でもここでジュウゾウさんを害したら、ドワーフ王国と全面戦争になりかねないので王様も我慢です。
「ふむ。主人。このカレーのレシピを教えてもらうことはできないか? もちろん外部には漏れないように考慮するが」
「別に構いませんが、スパイスは今の所フィッツガルドの東地方でしか栽培されていないので少々値がはりますよ。お城で使われるなら、値段よりも希少性の方が問題になるかもしれませんが」
「そうなのか。あまり大量に輸入してこの店にも影響が出るようなら諦めるか」
そして王妃様のためにもカレーを輸入できないかと画策したものの、スパイスの量が少ないと聞き諦める王様。
しかし一方の王妃様は上げて落とされた形なので不満そうです。
「そういえばジュウゾウさん。カレー粉だけでも国生のところに送れないか?」
「カレー粉をですか?」
「ああ。あいつ忙しくてカレー食いに来れないって落ち込んでたんだよ。カレー粉があればあいつなら自分で料理できるだろうし」
「なるほど。なら私が調合したスパイスを送っておきましょうか」
王妃様の言葉を聞いてオネエにスパイスを送ることにしたジュウゾウさん。
後日テンション上がったオネエが勢いでカレーを騎士団の面々にご馳走したせいで、多くのカレー中毒者を生み出すことになります。
そして比較的ドワーフ王国に近いため、続々と仕事を休みカレーを食べに行く騎士たち。
メルディアの騎士たちがジュウゾウさんに屈服する日は近い。
「……やはりアサヒのためにもこの店に料理人を修行に出すべきか?」
「いいなそれ。是非やろう。すぐやろう」
そして王妃様ラブなあまり暴走を始める王様と止めない王妃様。
ジュウゾウさんのお店の明日はどっちだ。
今日も異世界は平和です。




