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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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空も飛べるはず

 航空力学。

 流体力学の中でも特に航空機を対象とした空気力学を指す言葉ですが、ほとんどの一般ピーポーには縁のない学問でもあります。

 かくいう作者も流体力学と航空力学は学びましたが、すっきりさっぱり忘却したので、何であんな馬鹿でかい鉄の塊が空を飛べるのか分かりません。

 こまけぇこたぁいいんだよ!


「その点ドラゴンって凄いよなあ。存在が現代科学に喧嘩売ってるもん」

「何をのんきに言ってるんですか!?」


 それはさておき。

 全速力で走りがたつきまくってる馬車に揺られながら言う王妃様と、つっこむお付きの騎士。

 以前王様と約束した通り、少数のお供だけを連れてお忍びでドワーフ王国へと向かっていたのですが、途中でドラゴンと遭遇してしまい絶賛逃亡中です。


「いや、実際ドラゴンって何で飛べるんだよ。航空力学云々以前に、羽がついてる場所が悪すぎて仮に飛べても絶対傾くだろ」

「確かに重心は悪そうだな。しかし今追ってきているのは地竜だから空は飛ばんぞ」

「何でお二人ともそんな冷静なんですか!?」


 あくまで平常モードな王様と王妃様に悲鳴をあげる騎士。

 全速力で街道を驀進する馬車の後ろには、土煙をあげながら迫ってきているドラゴン。

 ドラゴンとは言っても前傾姿勢の二足歩行で走ってきているので、どちらかというと恐竜に近い風貌です。


「ここはメルディアの領土なんだから、万が一追いつかれてもリチャードが時間稼ぎしてる間に国生が来るだろ」

「うむ。コクショウを頼るのは癪だが、こんな護身用のなまくらではドラゴンの鱗は突破できんから仕方あるまい」

「王自ら時間稼ぎとかしないでください!」


 そうは言っても、騎士だけでは時間稼ぎは難しいので、どのみち王様はドラゴン相手に剣を振るうことになるのでした。


 ちなみにドラゴンは駆け付けたオネエが正拳突き一発で倒しました。

 オネエは こしを ふかく おとし まっすぐに あいてを ついた♂



「いやー助かったぜ国生」

「……ドラゴン相手に奮戦してる人たちが居るって聞いて来てみれば、まさかアサヒちゃんたちとはね」


 しばらくして。

 狙い通りに駆け付けてドラゴンを倒してくれたオネエを捕まえてお礼を言う王妃様。

 一方のオネエは「まーた周りを振り回してるわねこの子は」と呆れ気味です。


 もっともオネエも周囲を振り回すという意味では大概なので、人のことは言えません。

 普段は見た目と趣味のわりに常識人なのに、たまに暴走するのは何故なのでしょうか。


「それで。設定は商家の旦那と若奥様ってところかしら」

「おう。今回はお忍びだからな。やっぱこういう恰好の方が落ち着くよな」


 そう言っていつものドレスよりは質素なワンピースを見せつけるように、クルリと回って見せる王妃様。

 その様子を見てオネエはため息をつき、ちょっと離れたところで騎士と話していた王様が嫉妬でイラッとしました。


「お忍びならもう少し大人しくできなかったのかしら。うちの部下だって貴方たちの顔は知ってるんだから、もうバレてるわよ」

「そこは見て見ぬふりをしてくれ。というか何で街道にドラゴンが出てんだよ。繁殖期か何かか?」

「あーそれはね。ちょっと北の領主が調子に乗って魔物の討伐をやりすぎたみたいで、餌がなくなったドラゴンが人里までおりてきちゃってるのよ」

「熊かよ」


 確かに熊みたいな状態ですが、戦闘力が熊と比べて洒落になりません。


「おかげで私は毎日竜王山近くを走り回らされてるわ。団長も竜殺しじゃなかったら、私過労死してたわね」

「おーいいなあメルディアは。うちも国生みたいな無双武将欲しいな」


 一応王様も装備を整えればドラゴンに勝てるのですが、君主がそう簡単に体をはるわけにもいきません。

 君主が国内最強。存在としては浪漫がありますが、実際にそうだと取扱いに困ります。


「ん? じゃあ国生はしばらくカレー食べに行けないな」

「なん……ですって……?」


 王妃様の何気ない一言に固まるオネエ。

 驚きすぎて瞳孔が開いています。さすがの王妃様もドン引きです。 


「……知らなかったのか? ジュウゾウさんからカレーが完成したって手紙が来たんだが」

「……しばらく家に帰ってないから。でも重要な連絡はこちらに送るようにエミリーに……ああ、カレーができたなんてドラゴンに比べたら些末事よね……」


 ショックを受けながらも冷静に考えるオネエ。でも目からハイライトが消えて王妃様がさらにドン引きしています。


「休みを……いえ駄目よ私。いくら何でもカレーのために国民を危険にさらすわけには……!」

「うわー……」


 仕舞には頭を抱えて葛藤し始めたオネエに、いらんこと言わなきゃよかったと後悔する王妃様。

 知らぬが仏とはよく言ったものです。


「お願いアサヒちゃん。こうなったらカレーをお土産に……」

「いや。流石にカレーを常温で二日以上保存するのは衛生的にヤバいだろ」


 苦肉の策を王妃様に否定され崩れ落ちるオネエ。

 今日も異世界は平和です。


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