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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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外国で広がる謎の抹茶ブーム

 召喚魔術。

 サブカルチャーにより様々なオカルト知識がインストールされちゃってる日本人には馴染み深い言葉ですが、実は召喚には「召喚」と「喚起」という二つの種類があったりします。

 その定義は専門家の間でも揺れがあるのですが、簡単に言うと召喚は上位存在を自分の内に降ろし、喚起は下位存在を自分の外に呼びつける魔術です。


 じゃあ上位存在を外に呼び出すのはどっちなんだよと聞かれても、作者はちょっと中二病を患ってオカルトにはまっただけの一般人なので分かりません。

 というか魔術の専門家が現代に存在するってどういうことだってばよ。


「つまり異世界人の召喚は、厳密には召喚ではなく喚起に分類される魔術になります。召喚と喚起が異なる手順を踏む似て非なる魔術である以上、まずこの点を押さえておかないと無駄な思考を費やすことになります」


 そしてそんな召喚魔術について居間で緑茶片手に説明しているのは、意識高い系エルフであるイネルティアさんです。

 イサオさんを召喚しちゃったことからも分かるように、専門外ながらもそれなりに召喚魔術についての知識はあります。

 そのためエルテさんに請われて夕食後の一服ついでに講義をしているのですが、エルテさんはのっけから衝撃を受けて固まっています。


「……私そんな違い知らずに上も下も呼びつけてました」

「まあ定義などそれこそ定義する者によって変わるものですから。治癒魔術だって厳密には治癒促進に再生と復元など手順が細かに分かれるのですが、区別されることは稀ですし」


 例えるならスイカやトマトみたいなものです。

 スイカが野菜か果物かという論争はよくありますが、トマトについてはアメリカで裁判になり最高裁まで争っちゃったことまであったりします。

 一見どうでもよさそうな論争ですが、アメリカでは野菜と果物でかかる税金が変わるので重大な問題だったらしいです。


 人間の都合で存在が定義される。

 つまり兎はやっぱり鳥だったんだよ!


「私たちが行ったものはもちろん、エルテが行ったものも喚起魔術であったはずです。一定の条件付け以外は喚起対象を指定していない不確かな魔術ではありましたが、それでも本来ならばわざわざ異世界の壁を越えて対象を引っ張ってくるほど大規模なものではなかった筈。

 起こりえないはずの事が起きた。偶然と片付けることもできますが、それが必然となる何かがあったとも考えられます」

「誰かが私たちの術式に干渉したってことですか?」

「……(コクコク)」


 半信半疑で言うエルテさんに、京都名物茶だんごをもぐもぐしながら頷くイネルティアさん。抹茶の苦みの中の仄かな優しい甘さがたまりません。

 そしてお茶を一口。お口の中にものがある間は喋らない淑女の鏡です。


「……ふう。それなら話は早くなります。目的はどうあれ原因は特定される。しかしそんな企みを神々が見逃すとも思えません。しかし事が人為的なものではなく、世界間の壁に何らかの異常があった場合でも、神々がそれを放置するとは思えない」

「じゃあやっぱり偶然?」

「ええ。しかし世界間の壁を越えたというのは事実です。偶然だとしたら何故その偶然は起きたのか。そこから考えるのも糸口になるかもしれません」


 そう締めくくると、豆乳抹茶クッキーをポリポリと齧り始めるイネルティアさん。卵を使用してないのにサックサクです。


「なるほど。ありがとうございますイネルティアさん。参考になりました」

「いえ。お役に立てたのなら幸いです」

「でも最後に一ついいですか?」

「はい? 何でしょうか?」


 そう言って抹茶ホットケーキを切り分け口にするイネルティアさん。卵も牛乳も使っていないのにやわらかな口触りが絶品です。


「太りますよ」

「……」


 エルテさんの無慈悲な一言にフリーズするイネルティアさん。

 戦争だろうが……。それを口にしたら……戦争だろうがっ……!


「……大丈夫。エルフは太りません」

「いやまあ確かに太ったエルフって想像できませんけど」


 戦争じゃねえのかよっ……!

 今日も日本は平和です。



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