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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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弁当に汁の出る果物を入れないでください

 弁当。

 一種の携帯食であり世界中で見られるものではありますが、実は日本ほどお弁当が発展し多様化している国は珍しかったりします。

 これは日本で一般的なジャポニカ米が他国のインディカ米に比べ、冷めてもそれなりに美味しくいただけるからだとされています。

 また中国などでは冷や飯は囚人の食べるものとして嫌われているのですが、日本ではそういった文化的な禁忌も少なかったため、お弁当文化が花開いたとも言えるかもしれません。

 そしてそんなお弁当を、首相官邸で美味しそうに食べる男が一人。


「うん。このだし巻き卵は上々だ。基本だからこそ料理の腕が光る。中々のもんだ」


 そう言ってだし巻き卵を咀嚼しているのは、外務大臣な柳楽くんです。口の中のものを飲み込みお茶をすすると、ほうと息をついて次のおかずに箸を伸ばしていきます。


「ほう。こっちの肉巻きは梅シソ入りかい。良いバランスだ。ごはんも進む」

「は、はあ。ありがとうございます」

「別に相手をしなくても良いですよシーナさん。柳楽さんは食道楽ですから。放っておいても勝手に熱中します」


 満足げにお弁当に舌鼓をうつ柳楽くんと、そんな柳楽くんの言葉に戸惑いながらもお茶を入れるシーナさん。そしてそんなシーナさんに声をかけながら、こちらもお弁当を食べている安達くん。

 口では冷静な事を言いつつも、やはりお弁当は美味しいのか顔には笑みが浮かんでいます。


「ひでぇな安達さん。それにズルい。毎日こんな美味い弁当食ってるなら、そりゃ国会や官邸の食堂なんざ使わないわけだ」

「だからシーナさんに無理を言って、柳楽さんの分も作ってもらったのでしょう。今回だけですよ。このお弁当をいただけるのは、家族の特権です」

「あら」


 柳楽くんの愚痴にスッパリ言い切る安達くん。その言葉が嬉しかったのか、シーナさんは驚いた様子を見せながらも嬉しそうに笑っています。


「ふぅー、食った食った。ご馳走様シーナさん。美味かったぜ」

「ご馳走様です。今日も美味しかったですよシーナさん。ありがとうございます」

「はい。お粗末様でした」


 お弁当を食べ終えた狐と狸に追加でお茶を入れるシーナさん。良妻っぷりが板についています。


「さて。弁当も美味かったが、シーナさんにわざわざ官邸まで来てもらったのにはわけがあってな」

「やはりそうでしたか」


 柳楽くんの言葉に、シーナさんの顔つきが「王女」のそれに変わります。


「問題は私の扱いでしょうか?」

「何故今更、とは聞かないんだな?」

「以前官邸にグライオスさんやローマンさんたちと集められたときに、柳楽さんは『もし異世界とコンタクトを取れるなら』と言っていました。そして異世界とコンタクトが可能であることを前提に方針を取り直すならば、あの時に集められた面々の扱いもまた考え直さなければならないはずです」

「そこまで気付くとは。優秀だねぇ。こりゃこのまま主婦だけやってもらうのは勿体ねえわ」


 シーナさんの言葉に愉快そうに笑って言う柳楽くん。どうやらシーナさんの推測は当たりのようです。


「というわけで、学校に通ってみねえか?」

「どうしてそうなったんですか!?」


 過程をすっ飛ばした柳楽くんの結論に、珍しくシーナさんからつっこみが入ります。


「『他国の王族をお預かりする』なんて状況が前代未聞ですからね。とりあえず『他国の王族が留学に来た』という建前で環境を整えることになりました」

「無理がありませんかそれ?」


 こまけぇこたぁ良いんだよ!


「確かに無理もありますが、これは私の希望でもあります。シーナさんには家事などお世話になっていますが、そのせいで家にほぼこもりきりですからね。もっと外との交流を、同年代の方との出会いが必要なのではないかと思ったのです」

「安達さん……」


「安達さんが居ればそんなん正直どうでもいいです」と言いそうになったシーナさんでしたが、そこは常識ある女なので口をつぐみました。

 もし口にしていたら、安達くんは色んな意味で危機感を覚えてシーナさん独り立ち計画を推進していたでしょう。

 ヤンデレは病む前に迅速に対応するのが一番なのです。


「それに似たような立場のローマンさんも、既に了承してくれています」

「もちろんさあ☆」


 安達くんの言葉に応えるように、バァーンッとドアを開け放ち謎のポーズを決めるローマンさん。

 今日も安定の残念なイケメンです。


「そういえばローマンさんはフィッツガルドで学府に通っていましたね。日本でも官僚を目指すのですか?」

「それもありますが、何よりも崇高な目的が学校にあるのです」

「目的?」


 未来を見据えた上での入学ではなく、学校そのものに目的がある。

 その意味が分からず、シーナさんははてなと首を傾げます。


「警備などの問題から、私たちもヤヨイさんと同じ学校になるのは必至。……即ち! 多くの文献(漫画)に語られる素晴らしい嬉し恥ずかし学園イベントが起きるのもまた必然! 故に此度の入学は私とヤヨイさんの間にフラグをぶっ立てる絶好のチャンス!」


 握りこぶしで力説するローマンさん。相変わらずの残念っぷりですが、多くの男の子の夢を叶えんとするその姿にはある種の説得力すらあります。


 ……え? 学園ラブコメ編? ねえよ。


「流石異世界でも先進的な国だっただけはあると言うか、フィッツガルドの二人はサブカルチャーへの理解度がたけぇな」

「グライオスさんも最近ダンジョンRPGにはまってますからね」

「あの。私学校への入学が果てしなく不安になってきたんですけど」


 そしてそんなローマンさんを生暖かく見守る日本人二人と、こんなのと一緒くたにされたくないと主張したいシーナさん。

 今日も日本は平和です。


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