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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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日本のほほん滞在記3


 授業参観。

 小学生までなら楽しみにしている生徒も多い行事でしょうが、中学生ともなると大多数の生徒にとってはとにかく恥ずかしい行事でもあります。

 反抗期で親が鬱陶しい生徒も居るでしょうし、何より思春期の子供にとっては親に自分の領分を荒らされているようで落ち着かないでしょう。

 それでもたった一日だけの行事。大抵の場合は特に問題も無く終わります。


 ……大抵の場合は。


 ――どうしてこうなった。

 見習い召喚師ことエルテさんの心境を一言で表すならそれにつきます。


 エルテさんの通う何の変哲もない中学校。異世界人であるエルテさんが通っている時点で変哲がありすぎるのですが、深く考えてはいけません。

 そんな中学校が今絶賛混乱中です。主にエルテさんのせいで。


「ねえ、あの人総理大臣だよね?」

「やっぱり実物は凄いね。何かオーラ出てない?」


 授業中にも関わらず生徒たちが小声で噂しているのは、内閣総理大臣である安達くんです。教室の後方でお母さま方に握手や記念撮影を求められ、ニコニコと微笑みながら静かに授業参観しています。


 何でSPも連れずに出没してんだとか、総理大臣そんな暇ないだろとつっこみたいところですが、安達くんだから仕方ありません。

 安達くんのことだから、授業が終わるなり校舎の屋上からヘリにダイレクトアプローチし、そのまま外遊に出かけても不思議ではありません。


「おい、あの人シーナ王女様だろ。本当に髪水色なんだな」

「しかも可愛い」

「あっちはリィンベルさんだっけ」

「オレ、エルフ初めて見た」


 そして更に事態を大きくしているのは、何故か安達くんと一緒に授業参観している元王女とダークエルフの存在です。

 シーナさんは安達くん同様ニコニコ微笑みながら周囲に対応し、リィンベルさんは何やら感心しながら授業を見ています。


 何でアンタらまで来てんねんとつっこみそうになったエルテさんでしたが、授業中なのでつっこめません。


「えー、この場合の……」


 そしてそんな中でも授業を淡々と続ける先生は先生の鑑です。目が死んでいるのはきっと気のせいです。


「おお、ここがエルテの通っておる教室か!」

「うーむ、拙者の通っていた学校とは随分と違うでござるな」


 追加で元皇帝と猫耳侍が来ました。

 もう嫌だ。エルテさんと先生が崩れ落ちるのは同時でした。



「うーむ。夜だというのに騒がしい。こちらの世界の人間は、日が沈んだ後いつ寝ているのだ」


 深夜というにはまだ早い時間帯。夜の闇に紛れて空を徘徊しているのは、鮮血の公爵(笑)ことグラウゼさんです。

 姿だけ見れば獲物を探して飛び回る吸血鬼ですが、契約(一方的)を結んでいるリィンベルさんに「人間をおそってはならない」という制約を受けているので何もできません。

 つまりただの散歩です。一度カラスに突かれて墜落しそうになったのは内緒です。


「さて、あの太陽神のせいで失った力も戻ってきたが、問題はあのエルフの契約をどうするかだ。認めがたいが純粋な魔術の腕ではあちらが上。強引に解くとなると力が足りん。……血を吸えれば話は早いのだが」


 前述のとおり、人を襲えないので血も吸えません。

 誰かに頼んで吸わせてもらうという手もありますが、誇り高い吸血鬼であるグラウゼさんにそんな乞食のような真似ができるはずもありません。


「やはりこのまま大人しく力が戻るのを待ち……」

「きゃー!?」

「……何だ?」


 人間より鋭敏な五感で女性の悲鳴を感じ取るグラウゼさん。それに従い地上を見てみれば、人気のない道で一人の女性がナイフを持った男に襲われていました。


「……何と卑劣な!」


 人間は餌程度にしか思っていないグラウゼさんですが、魔族の中でも割と人間に近い価値観を持っているので、女子供のような弱者を傷つける輩は大っ嫌いです。

 故にこれから助けに入るのは自分が気に入らないからです。

 別に人間を助けるためじゃないんだからね!


「待てい! そこの悪漢!」

「な、なんだ!?」


 突然降ってきたグラウゼさんに吃驚する男。

 そりゃいきなり目の前に中世貴族風のマントを靡かせた男が現れたら驚きます。おまえ居る時代間違えてるだろとつっこまれても仕方ありません。


「この国にはお天道様が見ている等という言葉があるらしいが……例え光の届かぬ闇の中であろうと、矮小なる者が傲慢に振る舞う事など私が許さぬ!」

「ぎゃあ!?」


 そして男をワンパンでノックアウトするグラウゼさん。本当は魔術で派手にかましたかったのですが、今は節約中(切実)なので仕方ありません。


「怪我は無いか?」

「は、はい。ありがとうございます。あ、貴方は……」

「何。名乗るほどの者では無い。ではさらばだ!」


 お礼を言う女性。しかしグラウゼさんは女性の無事を確認すると、会話もそこそこに空へ逃げるように去ります。

 実は融通のきかない契約が「人間を襲った」と判断したせいで、先ほどから体がすっごい痛いのです。もう人目が無かったらのたうち回って叫んでるレベルです。


「あの女もう少しマシな契約にできなかったのか!?」


 そして空中でゴロゴロ転がるという器用なことをしながら安達邸を目指すグラウゼさん。まるで台風で飛ばされた洗濯物のようです。

 それからしばらくして、夜の街で悪いことをすると謎の吸血鬼風貴族メンが現れ成敗されるという噂が流れますが、その正体は謎に包まれたままだったそうです。


「いや、この世界に吸血鬼なんぞ一人しか居らんじゃろう」


 リィンベルさんのつっこみ。しかしそこは様式美なのでつっこんではいけません。

 今日も日本は平和です。


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