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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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結婚は人生の墓場とか言ってみたい(独身)

「ヴィルヘルミナ! おまえとの婚約を破棄する!」


 昼食が終わり皆さんが眠くなっている午後の昼下がり、最近お約束となってきた宣言が見目麗しい金髪の貴公子から発せられました。


 ……日本の国会のど真ん中で。


「……って、ここは何処だ!?」

「ようこそ日本へ。私は内閣総理大臣を務めております安達と申します」


 困惑する貴公子。しかし対する安達くんは安定の対応です。決して説明するのが面倒くさいからおざなりになっているわけではありません。

 因みに「おざなり」と「なおざり」は似ているようで微妙に違うそうです。何がどう違うのかは面倒くさいから各自辞書をひいてください。


「じつはかくかくしかじか」

「……な、なるほど。私はミィナの故郷に召喚返しされたのだな。私はフィッツガルド帝国のデンケン候の子で名はローマンという」


 安達くんの説明に納得する貴公子ことローマンさん。どうやら今回召喚された日本人は、異世界で逆ハーを築いちゃっていたようです。リアルに逆ハーを作ったりして後ろから刺されないか安否が気遣われます。


「しかし婚約破棄とは穏やかではありませんね。高貴なお出のようですし、そう簡単に婚約破棄などできないのでは?」


 所謂政略結婚ですが、実は中世レベルの社会だと平民の方が婚姻相手の自由が少なかったりします。

 そもそも近所に歳の近い異性が一人しか居ねえよ!? みたいな事が普通に起こるので、最初から選択肢がなかったりするそうです。

 幼馴染は結婚にまで至る可能性が高いと言われていますが、それ以前に幼馴染しか結婚できる相手が居ないというまさかの事態です。社会制度によっては気軽に引っ越しもできないので逃げ場無し。正に人生の墓場というか生まれた所が墓場です。


「い、いや。確かにそうだが、ヴィルヘルミナがミィナに嫌味を言ってだな」

「婚約者が他の女性に秋波を送っていたら当然なのでは?」

「……」


 微かに動揺しながら言い訳をするローマンさんでしたが、続く安達くんのつっこみに完全に言葉を絶たれます。


「ほ、他にも様々な嫌がらせを」

「貴方が撒いた種ですね。そもそも確たる証拠を得てヴィルヘルミナさんが犯人だと?」

「み、みんなヴィルヘルミナがやったと言って……」

「その『みんな』は貴方やミィナさんに近しい人だけではありませんよね?」

「……」


 言い訳をするたびに放たれる安達くんのつっこみに、ローマンさんが完全に沈黙します。

 どうやら証拠もなしに勢いで突っ走っていたようです。恋は盲目とはよく言ったものです。


「だ、黙れ黙れ黙れ! 平民風情が私に意見するな!?」


 逆ギレです。もういっそ見事なほどの逆ギレです。

 逆ギレついでに勢いで安達くんに掴みかかるローマンさんですが、相手は屈強な騎士たちすら単騎で叩きのめす自衛隊最高指揮官です。

 このままではむしろローマンさんの危険がピンチです。


「ほう? 仮にも一国の宰相を捕まえて平民風情とな? いやはや、偉くなったものだなデンケンの子倅よ」

「何だ貴様は!? ……ってグライオス陛下!?」


 突如二人の間に割って入ったのは、最近三国志にはまって「趙雲みたいな部下が欲しかった」と呟いているグライオスさんです。

 因みに多くの読者は忘れているかもしれませんが、フィッツガルドという国の皇帝だった人です。

 つまりはローマンさんの故郷の皇帝だった人だったりします。


「何よりそこに居るアダチは我が朋友。それに剣を向けるは我に剣を向けるも同然と知っての狼藉か?」

「へ? あ、いや。決して私はグライオス様に楯突こうなど考えては……」

「そうか。それは良かった。しかし折角の同朋の来訪だ。どれ、わしが少し稽古をつけてやろう」

「へぅあ!? ちょ、陛下!? 私はどちらかというと文官志望で剣術はーーーー!?」


 体から威圧感に満ちたオーラを放っているグライオスさんと、じたばたしながら引っ張られていくローマンさん。


「……では、前回質問にあった施設の予算についてですが」


 そして何事もなかったように審議を続行する安達くん。

 今日も日本は平和です。


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