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コブラツイスト、別名アバラ折り

「お前ら、名前は?」


「新条楓です。」


「明神直矢。」


「新条エディです!」


「天神澄也でーす。」


「ほーう。ほうほう。新条、ってことは校長の親族か?」


「はい、まあ。」


「今の生徒会長は確か校長の姪だったよな。お前らも?」


「そうですね、はい。二人とも姪です。と言っても、私たちは従姉妹同士なんですけど。」


エディも新条性の従姉妹ってことは冬士さんの姪にあたるだろう。


「ほほう。じゃあ何だ、どっちかは生徒会長の妹、ってトコか?」


「はい、私が妹です。」


「なるほどなー。それなら立候補も納得だ。アイツは優秀だからなー、憧れるのも無理ないわな。ま、頑張りな。」


史田が担任ってのは大変だろうけどなー、と言い残して自分の席へと去っていく神田先生。


「なんか姉貴に憧れてることにされちゃった。」


「まあ、いいんじゃないか? 立候補の動機を勝手に推測してもらえて。」


と直矢。


「それもそっか。」


何でか分からんと思われるよりはよっぽどいいか。


「お前ら待たせたな。ほい、これ。お前ら、頑張ってくれよー。そして当選した暁には俺の給料を倍にするか俺の仕事を半分にするかもしくはその両方をやってくれ。」


「無理です。」


無理です。


「無理かー。ま、何でもいいや。帰り道悪いことすんなよー。さーて、休憩すっかなー。」


伸びをした後、胸ポケットに手を突っ込んであ、タバコがもう無い、と呟く史田。


「仕事しろ。」


「んがっ」


神田先生が史田にペンを投げつける。それは見事に命中し、史田は額を押さえる。


「お前、こいつらが来る前もタバコ吸いに行ってたろ。」


「いやー、俺、パソコンいじるとニコチン摂取しないといけない病気で―――ギブギブギブ! コブラツイストは痛いんですって!」


またしても適当なことを言い始めた史田に、立ったまま何やら固め技をきめる神田先生。


薄々感じてたけど、とんでもなさで言えば神田先生も大概だよな……


「よーく知ってるじゃねえか。このままアバラ折られるのと仕事するのどっちがいい?」


「仕事! 仕事するから放して!」


パンパンパンと神田先生の腕をタップする史田。


「それならよし。あら? お前ら、まだいたのか。気をつけて帰れよー。」


「あ、はい……」


ペコリ、と二人に礼をして、職員室を離れる。


「物騒な教師だな。」


十分に離れてから直矢がボソッと呟く。


「直矢から見て、どんな感じ? 勝てる?」


と澄也。


「当たり前だ。この前のように俺の体が女でも負けん。……が、少々苦戦しそうではある。」


体がこのままなら全く負ける気はしないがな、と付け足す直矢。


「おお、直矢がそんな評価をするなんて珍しい。あの先生には逆らわないでおこうっと。」


痛いのはイヤだからねー、と澄也。


「それが賢明だ。生徒にまであんなことをするかは分からんが、もしそうなら史田とかいうのの二の舞だからな。というか、あの教師に限定せず、教師全員に逆らうな。俺たちは生徒の模範を目指すんだからな。」


と直矢。


「直矢って意外と生徒会にノリノリ?」


生徒の模範とか生徒の代表とかことあるごとに言ってるけど。


「む、そう見えるか? ……まあ、やりがいのある役職だろうとは思っている。」


「直矢はそういうお堅いことが好きだもんなー。その点に関しては僕とは正反対なんだけども。」


ゆるゆるっと生きていたいのさー、と澄也。


「俺が堅いのはある程度認めるが、お前はユルすぎだ。もう少し真面目に生きろ。」


「いやー、こういう性分なもんで、中々ねー。ま、やることはやるから安心してくれたまえよ。」


ホッホッホ、と謎の笑い方をする澄也。


すると、


ボニャン


俺の携帯が鳴った。


「いっけね、マナーにし忘れてた。」


「式中鳴らなくて良かったな。」


「うん。で、ニャインの内容は、と……」


携帯を見ると、母さんからメッセージが届いていた。


“いつ出てくるの? 校門で記念撮影したいから待ってるんだけど。”


とのこと。


「あー、母さんが写真撮りたいらしい。校門出たらちょっと写真撮るわ。いい?」


「勿論。思い出を残すってのは大事なことだからな。存分に撮ってくるといい。」


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


「悪いね、お待たせ。ちょっと色々あって遅くなっちゃった。って、なんで兄貴と幸も?」


校門へ着くとそこには何組かの新入生とその家族がおり、その中には母さんと兄貴、そして幸の姿が。


「おう! 大切な妹の入学式、見ない手はないだろ!」


「暇だから来た!」


「こういって着いてくるって聞かなくてねー。まあ、実際父兄とかに当たるわけだし問題ないかと思って連れてきたわ。さ、写真写真! みんな入って!」


母さんが直矢たちにも声をかける。


「え、俺らもですか?」


と直矢。


「勿論! お友達も含めての学校生活よ? その始まりだもの、一緒に写真に入るのだって何の問題もないでしょう?」


「まあ、お母様がそう仰るなら。」


渋々、といった様子で俺の隣に立つ直矢。


「あ、後で写真データもらってもいいですか? 美少女に囲まれた写真なんて素晴らしいもの、もらわないわけにいかないんで!」


と相変わらずの澄也。


「写真、ですかぁ……何だか照れちゃいますね。」


えへへ、と澄也の隣に並ぶエディ。


「なあ母ちゃん! 俺は!? 俺は入っていいのか!?」


と兄貴。


「入ってもいいけど、とりあえず楓たちだけでね。その後私も含めて一緒に撮りましょう。」


「おう分かった!」


「じゃ、撮るわよー。はいチーズ!」


カシャリ、とシャッター音が鳴る。


「楓の顔が固いわね……もっと自然に笑って笑って!」


「えー……アレでも精一杯笑ったんだけど……」


写真は苦手なんだ……


「そんな時はー……こうです!」


エディが俺の脇に手を伸ばし、くすぐり始めた。


「ちょ、くすぐったいって、あははっ!」


「あーらいい笑顔。そのままそのまま、はいチーズ!」


カシャリ、


「どうです? いい写真撮れましたか?」


エディが俺を解放し、母さんの方へ行く。


「うーん、楓の笑顔はいいんだけど、直矢君が仏頂面なのよねー。」


「あー、コイツは普段も笑わないし、写真撮るときはもっと笑わないんで仕方ないっすよ。」


と澄也。


「そういう性分なもんで、すいません。」


「くすぐりますか?」


とエディ。


「勘弁してくれ……」


「うーん、まあいいわ。そしたら家族で写真を撮りたいから誰か―――直矢君、お願いできる?」


「え!? いや、俺はそのー、機械が苦手なもんで……」


明らかに動揺する直矢。


デジカメくらい使えるようになれ。


「僕がやりますよ。」


任してください、と母さんからデジカメを受け取る澄也。


ドドドドドドッ


と、何だかすごい勢いの足音が聞こえてくる。


「ちょっと、待ちなさい! ゼェ、ハァ、何とか間に合ったようね……」


姉貴が猛ダッシュしてきた。そして肩で息をしながら話し始める。


「私も、家族だもの、写真に入れてもらわなきゃ寂しいわ。」


「あらお姉ちゃん、仕事だったんじゃ?」


と母さん。


「母さんからのニャインを受けて爆速で終わらせてきたわ。間に合ってよかったわ……」


「良かった良かった。じゃあ、改めて写真、撮りましょうか。」


「はーい、撮りますよー。」


カシャリ、


後ろから俺を抱きしめる姉貴、幸を肩車する兄貴、そしてその横に立つ母さん、といった形で写真を撮った。


「うんうん、楓ちゃんも自然に笑えてるし、いい写真じゃないかな。どうです?」


母さんに写真を見せる澄也。


「あらいいわねー。まあ、これだけだと少し寂しいし、他にも何枚か撮っておきましょうか。」


「え、まだ撮るの?」


写真撮られるのって何故だかエネルギー使うしもうやりたくないんだけど。


「まあまあそう言わずに。思い出は多ければ多いほどいいのよ?」


と姉貴。


「……それは分かったから尻を撫でるのをやめろ。」


姉貴のであろう手を振り払う。


「イヤンッ!」


「イヤンじゃないんだよ。」


どっちかっていうと言うのはこっちだ。

お久しぶりです。体調不良が先月丸々続いたせいで今月の更新はかなり少ないです。申し訳ない。あ、それとこの小説のタイトルを少し変えました。以上です。

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