9巻表紙・挿絵について
今回はイラスト制作の際の、やり取りやフィードバックをご紹介します。
『魔術師の杖⑨ネリアと夜の精霊』
ダークな雰囲気にした狙いは、「これまで〝魔術師の杖〟を素通りしていた読者さんにアピールしたい」というものです。
【表紙】
差し色の紫が綺麗ですね!
光源の置き方や色のバランスなど、さすがだなぁ……と感動します。黒・白・こげ茶の地味な色味なのですが、紫が入るだけで華やかさと同時に妖しさも倍増です。
肌やローブ、手袋への映り込み、眼鏡まわりの描きこみなどは、ぜひ拡大して見て頂きたいです。
光る左目と眼鏡の奥に見える、彼の感情……寂しさや怒り、複雑な内面をよく表現していただきました。
よろづ先生にはラフを拝見した段階で、表情が綺麗に見えるよう、読者さんの視線がまず彼の顔に行くようにとお願いしました。
タイトルロゴの色やバランスもデザイナーさんが微妙な調整をして下さってます。美麗なイラストを邪魔せず、それでいてパッと目に飛びこむタイトル。細やかな気づかいと職人芸を感じさせますね。
表紙はオドゥ単体にしようと、何ヵ月も前から考えていました。
書籍化の話が来た時、なろう版との違いとして「オドゥをダークヒーロー、影の主役にしよう」と決めました。
彼が最初に出てきた時は、ただグレンを崇拝&妄信する、気味が悪い錬金術師だったのですが、どうしてそうなったか……生い立ちから考えて1巻・2巻のSSに書いていきました。
9巻表紙の場面は、オドゥと奈々がやり取りするシーンから。
読者さんは奈々目線でオドゥを見る感じです。
最初の指示はこんな内容。
『ブラックオドゥ(単体)。覚醒したオドゥ。悪そうな激しい感じでお願いします。
錬金術師のローブ、黒縁眼鏡、こげ茶の髪。瞳だけ右目が深緑、左目が金色のオッドアイです』
イラストレーターのよろづ先生からラフ絵とともに、こんなコメントを頂きました。
『今回はいち場面というよりもイメージ的な画面にしてみました。
黒の蔓薔薇がオドゥに絡みついています。
黒薔薇の花言葉は「永遠の愛」「貴方はあくまで私のもの」「決して滅びることのない愛」「永遠」「恨み」「永遠の死」「あなたを呪う」
オドゥの表情は笑っているようにも怒っているようにも悲しんでいるようにも見えたらと思いました』
黒薔薇はよろづ先生のアイディアです。花言葉がオドゥにぴったり!
ラフ絵の段階でも既に完成度が高く、迫力のある画でした。
私が編集部とよろづ先生に返したフィードバックです。
『全体的に黒と茶色で色味がおとなしいため、はっきりとした差し色がほしいです。たとえば、オドゥの目(右目が深緑、左目が金)の明度と彩度を上げるなど。
パッと全体を見た時に、差しだされている手に視線が集まるため、顔に視線が行くように、ライティングを変えるなどの工夫をしてほしいです。
もしくはコントラストをあげて、明るいところをより際立たせるとか。
(できれば顔は目立ってほしいです)
顔が大きく映っている構図なので、メガネや表情などは拡大してもきれいに見えるぐらい、しっかり描きこんでいただけるとうれしいです。
オドゥの表情からでる不安定さや雰囲気を生かしたいため、バラの大きさは一定にせず、遠近感をつけたり大小を変えることで画面に動きをだしてください』
すぐに対応して頂き、よろづ先生からは白か紫を使う、2案が提示されました。どちらも捨てがたかったですが、紫でお願いしました。
完成版は文句なし。欲しかった画がそこにありました。絵が美しいからこそ不気味さや恐ろしさが際立つ、迫力のある表紙絵に仕上がったと思います。
「パーフェクトです!」
そう返しました。 ……〆(^^*)
【挿絵①】
なろう版465話『竜騎士団の演舞』から。
ミストレイとミスリル鎧姿のライアス。
ドラゴンも鎧姿のライアスも、いちどしっかり描いて頂きたかったのです。
横浜旗士道という、よさこいのフラッグパフォーマンス集団を目にする機会がありまして。大きな旗を振り回すのが、まぁ凄い迫力なんです。
竜騎士団のエピソードとして、竜騎士たちの群舞に取り入れたいと思い、よろづ先生に共有しました。
ミストレイの立ち姿をバックに旗を持つ、ライアスの勇ましい表情がカッコいいイラストとなりました。
実は編集部からはこちらも表紙に推されました。既に文章の組み立てをオドゥの表紙で考えていたのと、ここは彼の画が欲しかったので『何卒!』と押し切りましたが……どちらが表紙になっても見応えと迫力のあるものになったでしょう。
(画像はないです。実際の絵は書籍でご覧ください)
【挿絵②】
なろう版475話『船上結婚式』から。
ヌーメリアとヴェリガンの船上結婚式。
ヴェリガンのキャラデザインだけ、新たにお願いしました。
細身でひょろっとしていて気弱そうな…でも結婚式なので、前髪はあげてキチッとした格好です。
ヴェリガンの髪が紺なので、濃い青に染めたドレスです。
「上品なマーメイドラインか、フェミニンなプリンセスラインか⁉」
冬の間、ワクワクと盛り上がってました。
よろづ先生が自由にデザインして下さいましたが、ヴェリガンにちなんで植物があしらわれ、レースを使って上品で可愛らしさもあるドレスになりました。完成した挿絵も本当に素敵な仕上がりです。
実はなろう版と書籍版は、細部が違いまして。
レオポルドと奈々が対面する場面は書き下ろしです。
そのシーンも挿絵でもの凄く見たくてですね……もしも3枚目があれば、お願いしていました(涙
9巻は初めて人物紹介にキャラクターの絵が、バストアップですがつきました。
一歩ずつ……という感じですね。
お読みいただきありがとうございました!









