8巻表紙・挿絵について
8巻制作にあたり、実際に編集部に送った表紙・挿絵箇所の指定です。
見やすく直していますが、ほぼ原文です。
ページ指定は見る環境により異なるため省きました。
なろうにはないシーンもあり、初稿のため文章が発売された書籍とは異なる部分もあります。
8巻は読者さんの意見も取り入れて、ネリアがタクラ港に着くまでがメインの、ほぼ書き下ろしとなっています。
表紙は一部変更、挿絵ともなろうにはないシーンです。
(ニーナのシーンは改稿により、なろうにも追加しました)
【表紙】
第三章始まってすぐ。
タクラ港、市場で買いものする眼鏡を外したオドゥと黒縁眼鏡をかけたユーリ(オドゥと同じこげ茶の髪、深緑の瞳です)
ユーリもオドゥも『港にいる若者』といったカジュアルな普段着です。
アイリやミーナもいますが、いつも表紙は2人までと決められているので、食器店に行ってもらってます。
市場は商店街のようなものではなく、露店のマーケットです。
港町の異国情緒も感じられる、明るくハッキリとした色彩でお願いします。
表紙部分はもう少し加筆する予定です。
『きょうは買った食材でオドゥが料理をする。といっても調理設備などない工房だから、魚か肉の切り身を買い火の魔法陣を敷いて焼くつもりだ。錬金釜を鍋のかわりに使うこともできるが、それこそホントの闇鍋になる。
酔った勢いで工房にある素材もほうりこんだら、なぜか翌日全身紫色になった。とくに体に害はなかったものの、色を落とす薬を調合するのが大変だった。
「この時期だと脂がのってうまいのはブーブリだな。味つけは塩だけでもいいけど、せっかくだしスパイスも買うか。あっちに量り売りの店がある。値段の交渉が必要だけど」
「そんなに量はいらないものね。タクラは地元だし、値段の交渉は私がやるわ」
「よろしく」
「ついでに食器も買っていいかしら。乳鉢にスープをいれて、スパーテルで食事をするのはちょっとね」
「あ、気にいらなかった?」
「物は増やしたくないのはわかるけどね。そのかわり素材庫の整理を手伝うわ」
「あ、私……俺もマグがほしいし、いっしょに行きます、だぜ」
「手ぶらで行ったら、帰りが重いじゃないですか」
「食器店ならさすがに、荒っぽいのはいないと思うけど……」
「なんか僕、めんどうを見なきゃいけない子が、増えただけのような気がする……」
三人を順にながめて、黄緑の髪をお団子にしたミーナは肩をすくめた』
【挿絵①】
第一章最終話『留守番する副団長』から
『インク瓶をひとつひとつ手に取り、カディアンは目を輝かせる。絵心がある彼にとっては心惹かれ、どれも使ってみたくなる色ばかりだ。
「オドゥさん……すごい。こんなインクは見たことがない。紙にのせてみたいな」
「ガラスペンもお持ちしますから、試し書きなさいますか。インクが乾くとまた風合いが変わります」
「いいのか?」
興奮を抑えきれない第二王子の求めに応じて、ダインが個室をでて紙を取りに行き、人数分のコーヒーも運ばれると、遮音障壁は維持しているものの、カディアンの注意はすっかりインクの試し書きに向けられた。
「わ、同じような緑でも違うんだな」
「ええ、鮮やかな発色のもの、色が分離する遊色が見られるもの、ガラス粒子に銀を蒸着させたラメ入りなども人気です。自分専用のインクがほしいと、淑女からのご注文もあるぐらいです」
「あやつめ、こんな稼ぎかたをしておったのか」
コーヒーをグビリと飲んで、副団長はカディアンが書いた試し書きを、食いいるように見つめた。
「ええ、前回いらしたときは、鉱石の生成ができるようになったとかで、岩絵の具も開発したいと言われました。輸入に頼るしかない顔料などは非常に高額ですし、画家ならば私どもも何人かご紹介できますからね」
「それだ!」
カーター副団長が力強く叫び、コーヒーのカップを、ドンと音を立てて机に置いた。
「はい?」
「私もやる。あやつは私の一番弟子だ。オドゥにできて私にできぬはずがない」
たぶんオドゥはゴーレム作りをしたときに、絵の具作りを思いついたのだろう。たとえばラピスラズリを粉にした顔料は、美しい青で退色もない。産地が外国で遠くから船で運ばれるから、絵の具ひとつが非常に高額なのだ。
そしてオドゥはユーリと出かけてまだ戻らない。ならば研究棟にいて開発に携われるのは……クオードは試し書きに夢中になっている、カディアンに猫なで声で話しかけた。
「当然カディアンもやるであろう?」
「やりたいですっ、こんなきれいなインクを自分で作れたら……それでメレッタにメッセージを贈りたい!」
「ちょっとカディアン!」
メレッタが赤くなる横で、カディアンは次々に試し書きをしながら、うれしそうに答えた。錬金術師団に入団を決めたときは思いもしなかった、自分の大好きなきれいなもの、かわいいものが好きなだけ追求できる』
【オドゥが作った新しいインクで試し書きをするカディアンと、それを見守るメレッタ】
場面はミネルバ書店で本棚に囲まれた机。
小物:紙とインク壺(複数)、コーヒーカップ。インクをつけるのは、ガラスペンを想定しています。
ふたりとも学園生の紺色のローブ。
メレッタはボブの茶髪・紫の瞳。カチューシャにネリモラのような五弁の花がひとつついている。
カディアンの髪は長く、ライオンっぽい感じ。(兄ユーリは短髪なので対照的に)
【挿絵②】
第二章 最終話『ニーナとの打ち合わせ』から
『ライガに乗るのはなぜか夜中が多い。星空の海をどこまでも飛ばしていけば、自分が世界に溶けてしまいそう。ニーナのペンとデザイン帳を収納鞄にしまい、わたしはクローゼットにかかっていたラベンダーメルのポンチョを羽織る。それから深呼吸すると、ニーナの腕をとって転移魔法陣を描いた。
次の瞬間には虚空にふたりそろって放りだされ、ニーナは絶叫した。
「きゃああぁ、何てとこに転移すんのよ!」
ニーナの腕を必死につかみながら、わたしは説明する。
「転移した先に鳥とか飛んでたらイヤじゃないですか。それに地面に近かったらすぐ激突しちゃいます!」
左腕からライガを展開し、すとんと腰をおろすと、ニーナはわたしにしがみつくようにして、後部座席にまたがった。ぜぇぜぇと息を切らしながら、真っ青な顔でガタガタ震えている。
「も、もうちょっと平和な脱出はなかったの……?」
「だからちょっと危険だって言ったのに」
「ちょっとどころじゃないわよ。死ぬかと思ったわ!」
「スカイダイビングしただけですよ」
「すきゃーだびって何よ、すきゃーだびって!」
わたしが説明することをあきらめた瞬間、すぐそばでカラスが羽ばたいた。
「ルルゥ!」
「え……闇夜にカラス?」
ニーナが目を丸くする前で、わたしは左腕を伸ばして、ルルゥを腕にとまらせる。
「オドゥのところに案内してくれる?」
カァとひと声鳴いて、ルルゥはわたしの肩に移動した。
「タクラまでは休んでいくつもりね。まぁ、いいけど。振り落とされないようにしてよね」
わたしはライガの駆動系に、思いっきり魔素を叩きこんだ。術式が輝き発光する機体が、流星のように夜空を滑りだしたとたん、ニーナの腕が回された、わたしのお腹がギュッと締めつけられる。
「ちょっとネリィ、スピード上げるなら先に言いなさいよ!」
「ごめん、ニーナさん!」
ニーナの悲鳴混じりの絶叫に謝りながら、わたしは港湾都市タクラを目指した』
【ライガとニーナとネリアとカラス】
背景は星空。月はあってもなくてもいいですが、あるとしたら2つです。
ニーナは黄緑の髪、若草色の瞳。まとめ髪で左耳の脇だけひと房髪をたらしている。デザイナーをしており、都会的なスタイルのスラッとした体格。男物のシャツを着てズボンにブーツを合わせて、その上にコート。コートは港町に合わせてトレンチコートのようなものでお願いします。
ネリアは7巻表紙と同じ、ラベンダーメルのポンチョ姿。肩掛けの収納鞄。
カラスのルルゥは、見た目本当にただのカラスです。
スカイダイビングからのふたり乗りです。ライガにはまたがらなくていいので、動きのある自由なポーズでお願いします。
よろづ先生はしっかり小説を読みこまれてから絵を描かれるため、絵の雰囲気やキャラクターの心情、描いたほしい表情などを説明して、わりと自由に描いていただいています。
(ちょっと違うな……と感じたら、ラフの段階で直してもらっています)
絵がゴチャゴチャしないよう、ひとつの画面にキャラクターはふたりまでと決めていて、表紙にミーナたちは出てきませんが、活気のある雰囲気の表紙となっています。









