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第70話 お前、どこ行ってもやらかしてんのな(笑)


お久しぶりです。不定期更新で申し訳ありません!

今後も気長にお待ちいただけたら、幸いです。


今回は! 珍しきゲイル(※20.5話参照)目線!

ではでは〜よろしくどうぞっ!(・∀・)ノ

 





 ーー『ジャクリーン平民学校における三部門合同演習披露(デモンストレーション)に関して』




 急に王宮の会議室に呼び出されたオレ(忘れてる人もいるかもしれないが、オレはゲイル。ルイの同期だ)は、手渡された書類に目を通して驚いた。

 ジャクリーン平民学校ーーそこは、オレも卒業した学校だ。というか、軍部の奴らは平民学校出身が多い。近衛騎士団は貴族の子息が多いし、精霊術師団は精霊術に長けた奴しか入れないから必然と言えば必然なんだけど。

 まぁ、それは今は置いといて。


 …………これとオレが呼び出された理由に、なんの関係あるのか……?

 てか、会議室にいる一面がレベル高過ぎじゃないか……??


 会議室の中央に置かれたテーブル。その一番下座に座ったオレは、不躾にならない程度に参加者達を見回す。

 近衛騎士団の制服を着ているのは、二人。なんか無駄に色気を振り撒いてる紫色の髪の男性と、小動物みたいにぷるぷる震えている金髪の青年。あっ、あの男の子も〝なんでここに僕がいるんですか??〟って感じっぽそうだ。どうやらオレと同じ境遇らしい。

 精霊術師団からも二人。金髪碧眼の、めっちゃエルフ。というか、この二人、ヤバい。下っ端のオレでも知ってる。

 なんで精霊術師団のサイラス・トゥーザ副団長と筆頭精霊術師である《華姫》ルジア・マックス卿も参加してんのかな? 雲の上みたいな存在なんだけど?

 そして最後は……勿論、軍部。

 参加者は、我らが《ドラゴンスレイヤー》ルイン・エクリュ特務と軍部特殊部隊所属のアダムス・ノートン中尉。

 そして、オレ。

 もう一度言おう。



 オ・レ!!



 なんでこんなとこいんのかな、オレ……。超分からん。

 と、まぁグッダグダと考えていたら、「お待たせしました」と言いながら、会議室に入ってくるヒトがいた。

 あっ、精霊術師団のサリュ・トゥーザ団長だ。うわぁ、精霊術師団のトップスリー揃い踏みかよ。マジでオレがここにいる意味がマジで分からん。

 サリュ団長は上座に座ると、オレらを一瞥する。

 そして、にっこりと笑いながら頭を下げた。


「本日はお集まりいただき、ありがとうございます。ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、わたしはサリュ・トゥーザ。精霊術師団の団長をしております。そちらにいる副団長と同じ姓で紛らわしいので、気軽にサリュとお呼びいただけたらと思います」


 うわぁ。ウチの軍部の総帥とはめっちゃ違う。

 すっごい物腰が穏やか。めっちゃ丁寧な敬語。


「では、早速本題に参りましょう。本会議の議題は配布した書類通り、ジャクリーン平民学校における三部門の演習披露に関してです」


 詳しい内容は書類にも書いてあったが、団長は改めて口頭で説明した。


『ジャクリーン平民学校における三部門合同演習披露(デモンストレーション)に関して』

 今月の末、ジャクリーン平民学校では体育祭が行われる。これは、左軍と右軍に分かれた子供達が様々な競技で競い合う行事だ。

 競技には競走や玉入れ、騎馬戦にダンス披露なんかがあったはず。

 その内の一つの枠をもらい、近衛騎士団・精霊術師団・軍部の仕事紹介という名の演習披露(模擬戦)を行う予定なんだとか。


「ここにお呼びした方々には、その演習披露に参加していただきたいと思っております。平民学校の四年生で行われる実習先に近衛騎士団、精霊術師団、軍部は入っていません。まぁ、我々の拠点が王宮内になるので、安全面を考慮すると仕方のないことなのですが。ですが、昨今では三部門に所属する平民の方々が増えてきましたし……こういう機会にどのような仕事を我々がしているのかを先んじて知ってもらう良い機会になるのではと思いまして。こうして、皆様には集まっていただきました」


 …………うん、成る程。

 確かに、演習披露をする理由は納得した。

 でもさ……。


「よろしいでしょうか、サリュ団長」


 紫色の色気ムンムン騎士が挙手をする。団長は「どうぞ」と彼に視線を向けた。


「近衛騎士団所属、メルヴィン・フェルーです。サリュ団長にお聞きします。これ、もう既にこのメンバーで演習披露を行うことが決定してるんですね?」


 あっ、やっぱり?

 なんか思ったんだよ。

 議題だらなんだら言ってたけど、これ……もう決定してるからよろしくねって感じの会議ーーというか、打ち合わせだよな?

 フェルー卿の隣にいた小動物系騎士は〝ギョッ〟とした顔をしているけど、他の人はシレッとした顔。どうやら動じてないらしい。

 えっ、他の皆さんはご存知だった感じ??

 驚いたまま固まるオレに気づかずに、サリュ団長はにっこりと頷いた。


「はい、決定してますよ。勿論、既に上の承認は受けています。元々、この話を持ってこられたのはルインさーーエクリュ特務なので」

「あっ、納得です」


 うわぁ。エクリュ特務ってだけで納得しちまうんですか、フェルー卿。

 特殊部隊と接点なんかねぇから、オレはエクリュ特務のことは噂程度しか聞いたことがない。

 だから、こんなにも簡単に上やら人を動かせちまうエクリュ特務にーー見た目は若いのに、本当はオレなんかよりも遥かに年上だという事実を目の当たりにさせられて、驚く。


「はいはーい。このメンバーを選んだ理由は?」


 今度はノートン中尉が挙手をしながら、質問した。

 あっ、それはオレも気になってた。接点が分からないんだよな、このメンバー。どんな人選?

 すると、サリュ団長はエクリュ特務の方を見る。

 そして、エクリュ特務が話を引き継ぐように、代わりに口を開いた。


「このメンバーを選んだ理由は……基本的に、ルイとアリエスの関係者だ」


 えっ?? ルイ??

 ルイって……いや、あのルイしかいねぇわな。うん。


「俺はルイの実兄、サリュはルイが小さい頃からの付き合いで……ルジア叔母さんは俺らの母さんの妹だ」


 !?!?


「あっ、そう言えばそうでしたね。ルジアさんはロイゼルの奥さんってイメージが強くて忘れてましたけど……エクリュ特務の叔母上でしたね」

「そう。姪っ子、今度、会いに行くね」

「あぁ、分かった。シエラに伝えておく」


 のほほ〜んっと会話するエクリュ特務、サリュ団長、マックス卿を見て、オレらは絶句する。

 いや、だって……知らんかったぞ?? 《華姫》と《ドラゴンスレイヤー》が血縁関係とか……聞いたことなかったぞ!?

 うわぁ、マジか……結構衝撃だ……。


「で、メルヴィンはウチの次女が嫁入りしてて。サイラスは婚約者共々、アリエスに忠誠を誓ってる。で……ゲイル少尉」

「えっ、あ、はい」

「君はルイが第一部隊にいた頃、同僚の中で一番ルイのことを気にかけてくれていた子だ。兄である俺が言うのもなんだが、弟は浮世離れしてて大変だったろう? 面倒をかけてすまないね、ありがとう」


 そう言いながら、フェルー卿、サイラス副団長、オレの順で顔を見てくるエクリュ特務。

 …………マジか。特務、オレのこと、知ってたのか。

 というか……触れたら危険(アンタッチャブル)な特務にお礼言われるとか……。


 ……オレ、今日死ぬのかな。


「えっ、ちょ、待ってください! 僕は!? 僕はそのルイさんとアリエスさん? と、接点ありませんけど!?」


 特務にお礼言われるとかいうヤバい現実から目を逸らそうしていたら、フェルー卿の隣にいた小動物系騎士が叫んだ。

 え? 関係者じゃないの?

 驚きながら見つめていると、エクリュ特務がサリュ団長に意味あり気な視線を送る。それに頷いた団長に話が戻って、サリュ団長はにっこりと彼に笑いかけた。


「アンバー・パッセン卿」

「は、はい!」

「さっきほど言いましたが……基本的に、であって全員ではありません。君は……」

「僕は……」

「数いる人材の中で、一番子供に威圧感を与えなさそうかつ、協調性に長けており、他者同士の調整が得意な人ーーとして、本演習に参加してもらってます」

『……………』


 皆の視線が小動物系騎士ことアンバー・パッセン卿に集まる。

 えっと……つまり……。


「はっきり言って、このメンバーって癖が強いんですよ。ルジアさんはマイペースだし、ウチの息子は変態だし。メルヴィン君は本人にその気がなくて無駄な色気振り撒くし、ノートン中尉は子供が産まれて多少は真面目になったと思えど、やっぱりそれなりな愉快犯ですし」

「失礼な! わたしが変態になるのはネロ様に関してのみです!」


 待ってそこ!?

 変態って部分じゃなくて、誰に関してに反論すんの!?

 だけど、サリュ団長は〝ビシィ!〟と指を向けながら、言い返した。


「嘘をつくな、サイラス! お前、最近はアリエスさんにもウズウズしてるだろう!?」

「ネロ様とアリエス様では方向性が違います! アリエス様には忠誠ゆえの服従を抑え切れぬだけで、ネロ様には……愛の鞭をいただき、踏みつけていただきたいだけです!」

「お前……とうとう、隠さなくなったな!!」


 おっとぉ〜……?

 本当にサイラス副団長、癖が強いぞ〜??

 いや、他の人達も中々だけど。フェルー卿は〝仕方ないなぁ〜〟って感じで苦笑してるし、ノートン中尉はテーブルをバンバン叩きながらゲラゲラ大笑い。マックス卿に至っては、本当にマイペース過ぎて若干うたた寝し始めてるし。

 …………うん。こりゃ確かにまとめ役が必要だわ。


「まぁ、こんな感じで……誰も彼も癖が強いんだ。だから、君が選ばれたんだよ、パッセン卿。ちなみに、ゲイル少尉はパッセン卿の助手な。彼も常識人枠だから」


 喧嘩してるトゥーザ親子を無視して、エクリュ特務がパッセン卿とオレを見る。

 …………多分、オレの頬は引きってると思う。

 なんてことだ……責任重大じゃねぇか……パッセンきょーー。


「……………えっと……まず、人選のやり直しから始めませんか……?」

「ぶはっ!!」


 思わずオレは噴き出した。

 だって、凄い! エクリュ特務に反論するとか、自ら地雷にぶっ込んでいくようなもんなのに! やっばい! 歯に絹、着せねぇのな! 見た目に反して良い性格してるわ、コイツ!

 でも、そんな反応を特務は気にした様子はない。それどころか、ヤレヤレと肩を竦めてみせた。


「いや、このメンバーが最適だ。なんせ、今じゃちゃんとした公的業務としての演習披露になってるが……元は私用が原因だからな。巻き込むなら、知り合いが適している」


 待って??

 今、巻き込むならって言いました??


「今、ルイとアリエスは平民学校に通ってるんだ。で……ことの起こりはアレだ。横恋慕してきた奴らに身の程を弁えさせるために、演習披露をして……手を出したらヤバいぞって危険人物認定させようとしてるヤツだ」

「アッ」


 …………エクリュ特務の台詞に、フェルー卿が〝それか!〟って顔をしてる。あっ、前も似たようなことがあったんですね?

 ってか……演習披露デモンストレーションを行う理由が……横恋慕????

 ……………やばい……横恋慕に対する対策の規模がデカ過ぎて、驚きなんだが……今日、何度目の驚きだ??


「元々は、有象無象を黙らせるためにルイが学校内で模擬戦をやりたいと言い出したのが始まりでね。良い機会だからと各部門の職業紹介こと演習披露というカタチを整えたのが平民学校の校長だ。で、その提案を受けて人選をしたのが俺とサリュ。何気にルイは規格外だから……なるべく知り合いの方が対応出来るだろうし、物理的にも精神的にも被害が少ない。というか、戦闘能力とか対応力とか色々と吟味して、こういう人選になった訳だ」

「…………えぇぇぇ……だ、だからって……僕には荷が重いですよ……」

「大丈夫。俺も保護者席にいるから、ルイが暴走したら止めるのを手伝うよ」

「えっ!? 待ってくださいっ、エクリュ特務は本演習の参加者ではないのですか?」

「あぁ、参加者ではない。ただ立案側だからこの場にいるだけさ。本演習の責任者はサリュだ。だから、失敗すればサリュの責任になるってことだね」


 それを聞いたパッセン卿はとうとう頭を抱え込んでしまった。

 いや、分かる。その肩にこのメンバーを負わされるって……キツイよな。


「まぁ、なんとかなるって。多分」

「その多分って、一番信用しちゃいけないヤツですよね」

「あはは! 諦めろ、パッセン卿。という訳で……サリュ、サイラス。とっとと話を詰めるから、喧嘩止めろ」

「「はい、ルイン様」」


 エクリュ特務の一言で大人しくなったトゥーザ親子は、素直に打ち合わせに参加した。

 その後はとってもスムーズ。どう言おうが拒否することが出来ないと諦めたとも言う。


 そうして、オレらの打ち合わせは終わり……時々、演習披露デモンストレーションのリハーサルをしたりして、オレらは当日を迎えた。




 という訳で、最後にオレの一言。



 ルイ……お前、どこ行ってもやらかしてんのな(笑)







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