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第68話 君は未来の《ハイエナ》


三日連続だと!?

書いてる本人が一番驚いてます。


またもやルイ目線です!

よろしくねっヽ(・∀・)

 






「お帰りなさい、ルイくーー……まぁ! 初日からお友達を連れて来るなんて、また人間味が増したわね!」

「あぶー!」


 玄関に入るなりーールルアを抱っこしたシエラ義姉様がニコニコしながら、中々に失礼な台詞を放ってくる。

 いつもはお迎えなんてしないのに、どうやら学校初日だから心配してくれていたらしい。

 だけど、予想に反してガット君を連れて来たからニッコニコって感じかな?

 ボクは苦笑しながら、帰宅の挨拶をした。


「ただいま、義姉様。ルルア。お茶の準備をお願いしていい?」

「えぇ、直ぐに準備させるわ。ようこそ、エクリュ侯爵家へ。わたくしはシエラ・エクリュ。先代の侯爵夫人よ。この子は夫であるルインとルイ君の妹のルルア。どうぞよろしくね。貴方のお名前を聞いても?」

「ガ、ガット……です……」


 隣に立ったガット君は、頬を痙攣させながらなんとか名前を絞り出す。

 …………貴族街に入った時点でだいぶ動揺してたけど、屋敷を見て更に困惑。最後の締めの義姉様(先代侯爵夫人もとい、この国では知らぬ人がいないとされる神妃)登場で現実逃避したくなってるって感じかな。

 だがしかし、これは現実だ。諦めて受け入れてもらうしかない。


「じゃあボクら、応接室に行くね。直感がこの子を巻き込めって言ってるから、話すつもり」

「まぁ、そうなのね。分かったわ。わたくしもいた方がいいかしら?」

「大丈夫。ルルアのこと、お願いします」

「あぶー!」


 ルルアは自分のことだと分かったのか、拳を上に突き上げる。

 元気な妹の姿に思わず笑ってしまうと……義姉様は優しい表情で「勿論よ」と頷いて、ガット君にも優しく微笑みかけた。


「それじゃあわたくしはここで失礼するわ。どうぞゆっくりしていって頂戴ね」

「は、はい……」


 美人に微笑みかけられて、彼の頬が赤くなる。

 ……………これ、ヤンデレな兄様に見られたら命が危うかったかもだよ。シエラ義姉様に惚れる奴は絶対許さないヒトだからね。命拾いして良かったね、ガット君。

 まぁ、そんなこんなで。ボクらは応接室に入って、ローテーブルを挟んで向かい合うようにソファに腰掛ける。

 ガット君は「た、高そー……」と恐る恐るソファに座り……それはもう大っっっきな溜息を吐いて、頭を抱えていた。


「いや……ちょっと待って。貴族と繋がりがあるって分かってけどよ……分かってたけどよぉ!? 流石にこれは予想してねぇぞ、おいっ!!」


 隣に座らせたアリエスの身体が倒れないように自身の方に凭れかけさせていたボクは、ガット君の叫びに顔を向ける。

 流石の彼も受け入れきれなかったみたいだね。ボクはケラケラと笑って、答えた。


「あははっ、良い反応」

「笑い事じゃねぇぇぇ!! あのさー!? おれ、まだガキなの! 超子供なの! もうこの時点で荷が重過ぎる気がすんだよなぁー!?」

「大人顔負けの理解力してる奴が嘘言わないでよ。優秀過ぎた自分を恨むんだね」

「聡さが理由で自分を恨むことになるなんて思わなかったわ……!」


 アリエスに教わったよ。こういう時は手を合わせるんだよね。なむなむ、なむさん。

 まぁ、ここから更に爆弾落とすから、更に頭を抱えることになるんだろうけど。

 ボクは微妙に……(いや、かなり?)楽しい気分になりながら、口を開いた。


「じゃあ、更に困らせるね」

「宣言するのかよ!?」

「心の準備が必要かと思って。まぁ、もう言うけど」

「準備の時間すらねぇ!!」


 そうしてボクは自分のこと、アリエスのこと、エクリュ侯爵家のこと、全てを打ち明ける。

 まだ出会ったばかりだ。はっきり言って、全てを打ち明けるなんてかなり危険なことをしてると思う。

 でも、これでいい。これが最善だと、本能が……()()()()()が笑う。


 ……………あ。


 その瞬間ーーボクは()()()()()

 異なる世界線のボク。邪神と化し、今の世界のボクと融合した彼の記憶。

 彼が邪神となる前ーー邪神を倒すために参加した戦いで、仲間の一人として共に戦った兵士がいた。その兵士は平民出身の……〝二代目〟《ハイエナ》の渾名を襲名した、それはもう頭のキレる男で。


 ……………あぁ〜……ガット君が二代目《ハイエナ》なのか……。


 …………うん。将来的に兵士になる(可能性が高い)ってんなら、元々巻き込まれる定めってことだ。なら、巻き込んで大丈夫だね。安心した。

 安心に任せて、その勢いのまま全てを打ち明けると……ガット君は死んだ魚のような目をして遠くを見つめていた。

 あははははっ、辛そう。


「…………やべぇよぉ……平民の、それも子供に話すような内容じゃねぇよぉ……」

「先に関わってきたのはそっちだよね」

「だとしても、ぶっちゃけるヤバさが違うんだよっ!」

「仕方ない。君を巻き込んでしまえと直感が告げるんだもん。諦めなよ」

「畜生!」


 ガット君は大声で叫ぶと、舌打ちを零して頭を掻き毟る。

 だけど、そこは《ハイエナ》(仮)なガット君。彼は直ぐに頭を切り替えたようで……据わった目でこちらを睨んできた。


「もういいよ、分かりました。分かりましたぁ! どうせ先に利用しようとしたのはこっちだしぃ! 大人しく巻き込まれてやらぁ!」

「あはは、十歳児とは思えない大人な発言」

「うるせぇ! 今更餓鬼らしくしたところで、逃げらんねぇかんなぁ! 隠す必要もねぇわ! ってか、笑い事じゃねぇー!」


 普段は冷静なのにキレると雑になるこの感じ。あぁ……()()()()

 こちらのボクらはこんな会話は初めてだけど、異なる世界のボクらはいつもこんな風に話してたなぁ。

 でも、()はあの戦争で死んでしまったから……またこうして言葉を交わせるなんて、思いもしなかった。

 そんな風に懐かしんでいると、扉のノック音が響く。入室の許可を出せば、ティーセットを乗せたワゴンを押したアリエスの侍女セリナが現れた。

 彼女は優雅な動作でスススッと側に来ると、サッと貴族顔負けのカーテシーを披露してみせた。


「失礼致しますぅ〜。お茶をお持ちしましたぁ〜」

「あぁ、うん。そこ置いといて」

「畏まりましたぁ〜」


 サササッと手早くお菓子を並べ、紅茶を入れるセリナ。

 恙無く準備を終えた彼女は、そのまま退室するかと思われた。だけど、どうにも出て行こうとしない。

 ボクは首を傾げながら、口を開いた。


「どうかした?」

「アリエス様がお眠りしていらっしゃるようですので〜、よろしければお部屋にお連れ致しますが〜……如何なさいますかぁ〜?」

「あぁ……大丈夫。起きて隣にボクがいなかったら、アリエスが寂しがるでしょう?」


 ボクの発言にガット君は〝お前ら、どこでもイチャついてんな……〟と言わんばかりに呆れ顔をするけれど、否定しない辺り、ボクらのこと分かってきてるみたいだね。

 セリナも「そうですね〜、出過ぎた真似を致しました〜」と謝罪してから頭を下げて、退室していく。

 残されたボクらはひとまず大人しくお茶を飲む。

 で……。


「それで? まだなんかあんの?」


 聡いガット君はその聡さを発揮して、察してくれる。

 ボクはスッと表情を消して、頷いた。


「あの話しかけてきた……」

「…………話しかけてきた?」

「女の、子……だっけ……?」

「…………」


 ちょっとどんな子か思い出せなくてそう言うと、ガット君が唖然とする。


「…………うっそだろぉ、おい。その反応、まさか覚えてねぇの……?」

「………どうでもいいことって覚えてられないよね……ガット君くらい濃かったらイけるんだけど」

「明らかにおれより濃かったけどなぁ……?」


 今のところ、学校で認識してるのメノウ校長とガット君ぐらいだからなぁ……。

 …………あっ。こういうところが、人間らしく(エルフらしく?)ないのか……少し反省。


「まぁ、とにもかくにも。その子が話しかけてきた時、アリエスの様子がおかしかっただろう? 一体、どうしたのかを聞こうと思って」

「じゃあ、起こすのか?」

「うん、()()()()()()()()()

「……………ん?」


 ボクの言葉に違和感を覚えたのか、彼は不思議そうに首を傾げる。

 その違和感は正解。

 今からするのはアリエスを起こすのではなく……他人格に出てきてもらうのだから。


「という訳で……内側そこから話は聞いてるだろう? 事情説明、よろしくね」


 ボクの言葉に合わせて、光を増すアリエスの髪。ゆっくりと開いていく瞳。




 そこにいる〝彼女〟は、いつかのように……涼やかな雰囲気を纏っていた。







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