第67話 十年目の他人格表在化問題
今回は短め!
二日連続更新だ! 珍しく!?
ルイ目線でお送りします。
それでは〜よろしくどうぞ〜! ٩( 'ω' )و
五年前ーーアリエスの前世の人格達が、表在化し始めた。
それはつまり、今あるアリエスの人格が消え始めたということで。
とは言っても、ボクの重過ぎるほどの愛情と婚姻という名の契約が、アリエスを繋ぎ止める楔の役目を果たすと分かったため、他人格表在化問題は一端の落ち着きをみせたーーのだが…………。
それでも、一度入ったヒビは直せないように。
アリエスの他人格表在化は、彼女の成長に合わせるように変化を遂げ、今では少し変わった状態になっている。
要するに……。
アリエス自身が、前世の記憶に接触を取れるようになったんだ。
彼女の前世の記憶ーー人格達は、真っ暗な潜在意識の世界(?)にいるらしい。
そこにいる人格の中で真っ当な人格であるモノに限り、アリエスの人格に支障を及ばさないという前提の下、知識や力などを提供してもらう代わりに、感覚を共有して外の世界を見てもいいという契約を結んだんだとか。身体を貸すまでしてしまうと、アリエスの人格に影響が出ちゃうから、感覚共有が譲歩の限界だったんだって。
それでも、それを受け入れずに。その契約を破り、アリエスの身体を乗っ取ろうとした人格は、人格達のまとめ役をしている元熾天使(ネロ事件参照)の人格がシバき倒してくれることになっている。
まぁ、本人はもう会わないことを祈っていると言った手前、こんな再会の仕方をするなんて思いもしなかったみたいだけど……それでも、今のアリエスにとって、前世の記憶達はアリエスを構成する部品の一つと言っても過言ではないんだとか。他人格が反抗的であれば、今のアリエスの人格やら体調に影響を出しかねない。それほどまでにアリエスと他人格達は、切っても切り離せない関係になっている。
だから、出来ることなら他人格達と友好関係を結び、内側から協力してもらった方が、ただでさえ沢山の前世の記憶を持っていることでかかっているアリエスの負担が少なくなるだろう……ってのが、元熾天使の言い分だった。
まぁ、そんなこんなで。
今の今までいい感じで主人格と他人格のバランスが取れていたんだけど……。
…………一体、何が原因で〝彼〟が表に出てきたんだろう?
会話を交わしたことがない人格っぽそうだから、正確には把握し切れてないけど……貴族と因縁がありそうな雰囲気だったよね。
考えてみれば、あそこまで傲慢な貴族らしい貴族(?)と会ったの、アリエスは何気に初めてだったかもしれないし。
それがトラウマを刺激しちゃって、思わず出てきちゃったって感じかな?
…………まぁ、今のアリエスは無理やり主導権を奪われかけた負担で寝ちゃってるし。
今の内に元熾天使から話を聞いといた方が良さそうだ。
という訳で……。
眠りについたアリエスの背中を一度撫でてから、ボクは視線を周りに向ける。
ガットを始めとした教室に残っていたクラスメイト達は勿論、なんか言ってた子供も顔を引き攣らせていた。異様な空気ってまさにこういうことを言うんだろうな。
まぁ、アリエスの……前世の人の圧に負けたんだろうね。ちょっと言ってることが物騒だったし、目に見えて危うい雰囲気を出してたし……仕方ないかな? ここにいるのは全員子供だし。
…………まさか、いきなり前世の人格が出てくるとは思わなかったけど。
生憎とアリエス優先なボクは、この子達をどうこうするつもりはない。というか、フォローのしようがないし。
だから、ボクは敢えて周りを無視して教室を後にする。
すると……廊下を途中まで進んだあたりで、真っ先に我に返ったらしいガット君が慌てて後を追ってきた。
「ルイさん!」
「ん? あぁ、ガット君。何?」
「えっと……大丈夫、なのか? アリエスさんは……」
心配そうに腕の中を覗き込んでくる。一瞬だけ何が目的かなって考えてしまったけれど……どうやら本心から心配しているらしい。少しだけ反省。
ボクはそんな本音を覆い隠すように、にっこりと笑って答えた。
「大丈夫だよ」
「でも……なんか、変だったし……」
「…………」
ぶっちゃけ、アリエスのことを話すかどうかを悩んだ。
別に隠してることではないけれど、話してしまえばボクらの問題に彼を巻き込む(?)ことになる。
でも……。
「…………ボクの直感が、ガット君を巻き込んでしまえって言ってるんだよねぇ」
「………………はい?」
ボクの不安(笑)な呟きが聞こえたのか、ガット君の頬が引き攣る。
うん、こういう時は直感を信じるに限るよね。
ボクはニヤリと笑って、ガット君に話しかけた。
「という訳で……ボクの家においでよ、ガット君。色々と、教えてあげる」
「…………あっ、おれ……自分で自分の首絞めたな……?」
どうやらボクの後を追ってきたことを後悔してるみたい。うん、多分正解だと思うよ。
ボクはケラケラと笑いながら、彼を連れて帰宅した。
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