第41話 爆弾(発言)投下
大変〜大変長らくお待たせしました〜!
微妙にスランプ脱出の島田です!
まだ微妙がつくので、毎日の投稿は無理ですが!
徐々に復活していく予定です!!
本作品をお待ちして頂いた読者の皆様。大変ご迷惑をおかけしました。
今後もアリエスとルイの物語を楽しんで頂けたら、幸いです!
P.S.シリーズ名、変えました。
それでは〜いつものご挨拶。
よろしくどうぞっ!
ルイ→アリエス視点
『現在ーーネロは、固有能力によって身体が侵されてる状態だ。そのため、サイラスにアリエスの能力のことを話した。数分後には執務室にサイラスが着く。俺は、今回の件を総帥に報告しに行く。流石に侯爵令嬢が軍部で固有能力で吐血したーーなんてなれば、隠していた方が責任問題を問われかねないから。サイラスのことは任せるよ』
唐突に頭に響いた兄様の声に、ボクは溜息を零したくなった。
あぁ、面倒なことになっちゃったな……っていうのが本音。更に本音を言っちゃうと、なんでアリエスを巻き込むかなぁ……って気分なんだけど、多分、兄様はシナリオから逸らすためにそんなことをしたっぽいから文句も言いづらい。
いや、でも。やっぱりアリエスを巻き込んで欲しくなかった。うん。
『りょーかい。上手くやっとくよ』
『………頼んだよ』
『はーい』
ボクは膝の上に座った顔色の悪いアリエスの頭(※ひよこを避けながら)を撫でながら考え込む。
父様から語られた乙女ゲームーー《精霊と乙女と愛のワルツ4》。
それにサイラスは攻略対象として出てくる。病気で婚約者を失くしてしまい、心に傷を負った状態の彼が。
前提として、アリエスは敵である《邪神兵団》に拾われることはなかった。そうなる前にボクが出会ったから。この時点でそのゲームのシナリオとやらとはかなり乖離した状態になっているだろう。
でも、だからってその後もその状態で維持出来るとは限らなかった。
限定的にゲームのシナリオと同じような展開になることもあるかもしれないし、丸っ切り同じことが起きる可能性もあったし、何も起きない……なんて可能性も捨て切れなかった。
今回は……ゲームのシナリオに繋がるであろう事件が、起きてしまった状況だ。
この件を解決するに当たって、一番最良なのはネロを救うこと。だって、そうすればゲームのシナリオとは更に乖離が起きる。アリエスを生贄にする可能性がより遠退く。
でも、それに当たってはアリエスの協力が不可欠だ。
ボクの邪神由来の能力はアリエスのためにしか使えない。間接的にアリエスのためになると思えばギリギリ、なんとか力が発動する……かもだけど。
…………ネロのことをなんとも思っていないボクでは、多分九十九・五パーセントぐらいの確率で発動しないと思う。
そうなると、やっぱりこの状況を解決出来るのはアリエスのみになってしまう。
だって、固有能力には精霊術が効かないし。アリエスならば、全てを解決出来るような存在を召喚することが出来るんだから。
でも……もしも、そんな存在を召喚しなくちゃいけないようなことになれば。
今日が、今のアリエスとの最後の一日になる可能性が浮上しちゃうーーかな。
「……………」
例え、今のアリエスがアリエスでなくなろうとも、どんなこの子であろうと愛せる自信があるから別に構わないけれど……。
それでも、アリエスがアリエスでいられるのならそれに越したことはない。だから、アリエスのことを思いっきり溺愛してるんだし。
だから、ボクは考える。
ーーーー今の状況で選べる、最良の一手を。
*****
医務室にネロさんが運ばれ、ルイン様が付き添いに行って……流石の事態に具合を悪くしたメル先生をアダムスが屋敷に送りに行った後ーー。
特殊部隊の執務室に帰って来たのはルイン様ーーではなく。
ーーーー急な吐血シーンを見て具合が悪くなった私に負けず劣らずの顔色の悪さをしたサイラス様だった。
彼は緊張した面持ちで私を見つめてくる。その様子に首を傾げていたら……。
彼はルイ君の膝の上に座った私の前で、唐突に土下座をしたのだった……。
「お願いです、アリエス様っ……! どうかネロ様を救って下さいっ……!」
「………え?」
さっきの光景で具合を悪くしていた私は、その言葉に驚かずにはいられなかった。
………ネロさんを、救う?
………えっと……。
「どういう、ことですか?」
そう聞かれたサイラス様は、ぽつりぽつりとネロさんの状態を語り出した。
現在のネロさんは、時間経過で変異する病気に侵されている状態らしい。ドラマとかで出てくるような変異する病原体による感染症みたいな感じなのかな?
今のところ、軍部に備蓄している薬のおかげで小康状態ではあるけれど……それがいつまで続くかは分からない状態らしい。
何故ならーーネロさんの病気は、固有能力で引き起こされたモノだから。
固有能力には精霊術が効かない。だから、ネロさんの病気を治すことが出来なくて……。
でも、私の固有能力ならネロさんの病気を治せる存在を召喚出来るかもしれないってルイン様に教えてもらったから……冒頭の展開になったんだって。
ちなみに、ルイン様は今回の件の報告のために総帥さんのところに行ったらしい。なんでも、軍部内で起きたことだから……逆に隠したりしちゃうと怒られてしまうんだとか。
閑話休題。
「お願いします! ネロ様を救えるならば、わたしはどうなっても構いません! 事は一刻を争うのですっ……! どうかっ……どうかっ……! ネロ様を助けて下さい!」
「「…………」」
地面に額を擦り付けながら懇願するサイラス様。その姿は鬼気迫るモノがある。
それほどまでに……彼はネロさんが大切なんだろうね。
そんな彼の姿を見て、私は覚悟を決めた。
だって、この状況を解決出来る力が……私にはあるんだもの。使える力は有効活用しなくちゃ、意味がない。
それに……ネロさんはかなりドSで時々ドン引きすることもあるけど、私には優しくしてくれるから。他人じゃないから。
覚悟を決めた私はゆっくりと口を開いてーー。
「もちろーーむぐっ!?」
「ちょっと返事は待ってね、アリエス」
「んむぅ!?」
なのに、ルイ君が後ろから口を塞いでくるもんだから、答えることが出来なくなってしまった。
「何するのー!?」
私は拳を突き上げて訴える。
いや、なんで止めるかな!? サイラス様が言った通り、時間が惜しい状況だと思うんだけど!?
でも、そう訴えてもルイ君は困った顔をしたまま。彼は呆れたように溜息を零した。
「……まぁ、ね。アリエスが助けるって決めたなら、それはそれでいいと思ってるよ?」
「じゃあ……なんで止め……」
「ネロの状態的に慌てるの分かるけど……それでも、二人とも慌て過ぎだよ。冷静じゃないし、危機管理が足りないって」
ひやりと冷たい瞳が私とサイラス様を見る。
まるで頭から冷水をぶっかけられたような感覚。
……まさか、私にまでそんな目を向けるとは思ってなかったから……私はとんでもなく動揺してしまって。
……………口から手が離されても、何も言えなかった。
「ネロを脅かしてる固有能力ってかな〜りタチが悪いと思うんだよね。だって、そうでしょう? 時間経過で変異して、精霊術で治せない……なんて、ほぼ完治不可能な呪いみたいなモノをかけてるんだよ? そうとう性格悪くなきゃしないでしょ?」
「「……………」」
……確かに、そうだね。
この能力をかけた人は、ネロさんを助ける気がない。
「……アリエスの召喚術ならネロの病気を治せる存在を喚ぶことが出来る。それはアリエスの能力の検証を手伝ったボクとしても、不可能ではないと思う。でも、その固有能力の性格の悪さを考えると……最初に言ったように、二人とも危機感が足りないと思うんだよねぇ。色々と想定しなきゃいけないのにソコが抜けてるって言うか……。治そうとした相手にもその病気が感染するようにしているかもしれない、とか。治そうとしたら更に症状が悪化するようにしているかもしれない、とか。あり得ない話じゃないと思うんだけどな?」
「「!!」」
ルイ君の懸念はまさに目から鱗。
言ってる内容はどこまでも正論で、反論出来ないぐらいで。
……どれだけ考えなしで行動しようとしてたかを、理解させられるには充分だった。
「……つまり、何が言いたいかっていうと。全てを丸く解決するためには、それなりに高位の存在を喚ばなきゃいけない事態になる可能性が高い訳」
「…………高位の、存在……ですか?」
「そう」
ルイ君はさっきと打って変わって、静かな瞳を私に向けてくる。
……仄暗い光を宿した、凪いだ真紅の瞳。
どこか悲しそうなその顔に、私は無意識に息を飲んでいた。
「アリエス。アリエスはネロを救いたいと思ってるんだよね?」
「……うん」
「そっか」
ルイ君は考え込むように黙り込む。
痛いほどの沈黙が満ちてどれくらいの時間が経ったのか……。数分にも数十分にも、数時間にも思えるような時間の果てーールイ君は心底困った顔をしながら、溜息を零した。
「…………仕方ない、ね。アリエス。ネロを救うための条件……っていうか。最低でもこれだけはした方が良いっていう準備があるよ」
「…………なぁに?」
緊迫した空気が流れ、ごくりっと喉を鳴らす音が嫌に響く。
そっと頬に添えられたルイ君の手。手袋越しに伝わるその熱にちょっと気が緩みかけたその瞬間ーー。
「ーーーーボクと結婚の誓いをして欲しい」
…………。
………………。
…………………………。
「へ?」
ルイ君は、とんでもない爆弾(発言)を落としたのでした。
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