第36話 五年後、初っ端から飛ばしてます。
※前話、割り込みました。
ネロ目線→アリエス目線→サイラス目線→アリエス目線。
……忙しいな?
タイトルの通りです。いきなりぶっ飛んでます。
書いててなんでこうなった? って思ったよね。
ルイ君空気化しかけてるしw
まぁ、少しでも笑ってもらえたら幸いです!
今後とも〜よろしくどうぞ!!
「貴女は貴族令嬢なのだから……軍部なんて辞めて頂戴」
お母様はいつもそれしか言わないわ。別にお母様本人に迷惑をかけていないのだから、良いじゃない。何故、貴族令嬢だからと選択肢を狭めなくてはいけないの?
「女が軍人だなんて……」
「生意気だぞ」
二人の兄達も煩くて仕方ない。自分達が特殊部隊に入れなかったからって僻まないで欲しいモノだわ。そんなのだから、いつまで経っても昇進できないのよ。
「傷物になった女など嫁げやしないぞ」
お父様は子は政略結婚の道具としない思ってないんだものね。道具の価値が下がったら困るから、そう言うのでしょう?
わたくしはわたくしの家族が大っ嫌いだわ。
貴族としての務めが大事なのかぐらい分かってる。
でも、貴族令息の中には軍人になる方だっているんだもの。
法衣貴族として、軍部で働くことを主体としている貴族だっている。それはつまり、軍部で働くことも貴族の務めとして許されると言うこと。
なら、貴族令嬢であるわたくしだって……軍人になってもおかしくないでしょう?
だから、わたくしはーー軍人であり続けるわ。
だって。それがわたくし……ネロ・ロータルが選んだ道だもの。
誰にだって邪魔をさせない。
けれど……もしも、わたくしが選んだ道を尊重してくださる方が現れたら。
少しぐらいは、興味を抱くかもしれないわね。
*****
「好きですっ! 結婚してください!」
「ふごっ!?」
「アリエス様、紅茶を噴き出すのは駄目ですわ」
「あ、ごめんなさい。メル先生……」
はい、思わず紅茶を噴き出したアリエス(五歳)です。
たらぁーっと口の端から溢れた紅茶を、私の座椅子化したルイ君がハンカチで拭ってくれる。
「ありがとう、ルイ君」
「どう致しまして」
ルイ君からのおでこチューを受けてから、私は状況把握に努める。
場所は軍部の中庭。只今、私とメル先生。ネロさん、ルイ君の四人でピクニックをしていた最中。
まぁ、正確には? お茶友達になったサリュ様(精霊術師団の団長さん。同じ転生仲間でもあるため、時々、昔話に花を咲かせてる)を待ってたんだけどね。
…………そしたら、初めて会った中性的な金髪碧眼のエルフさんがネロさんに跪いて、いきなりプロポーズかましたよ……。
いや、何これ?
というか、なんでルイ君達は冷静なの?
あっ……ちょっと離れたところで白目剥いてるサリュ様がいた……。
「…………貴方は確か……」
「王宮精霊術師団の副団長を務めております。サイラス・トゥーザです。ネロ・ロータル侯爵令嬢。わたしは貴女のドSっぷりに惚れました。どうか結婚してください」
「「ふごっ!」」(←私&サリュ様)
「アリエス様。驚いたからってそんな変な声を出してはいけませんわ」
「ごめんなさい」
優雅に紅茶を飲むメル先生は、サラッと注意をしてくる。
……えぇぇ……一時期は常識人枠だったのに、慣れが生じてんじゃん……。めっちゃ冷静だよぅ……。
遠い目をし出す私を置き去りに、ネロさん達の会話は続く。
「わたくしのドSっぷりに惚れたと言いましたけれど、具体的には?」
「あれは、用事があって軍部に訪れた時のことでした……」
えっ……? 現実逃避しかけたら、なんか始まっーー。
◇◇◇
その日ーー。
軍部の訓練場では模擬戦を行なっているようでした。
訓練場の側を通り過ぎたわたしは、言葉を失いました。
そこにいたのはレイピアを片手に男性二人を足蹴にしながら、毒舌を振るう貴女の姿……。
その勇ましくも愉悦が隠し切れない笑みを浮かべた貴女を見て、わたしの胸は高鳴ったのです。
正確に言うと、わたしも貴女に罵倒されたい。
あの日からずっと貴女のことを想ってきました。
流石に用事もないのに軍部を訪れるのはアレですし、勝手に身辺調査を行うのもアレですし。
どうやって貴女に会おうかと思っていましたが……父上が時々、軍部にお茶会をしに行っていたのを思い出しまして。
〝あ、そうだ。父上について行けば軍部に行く理由になるのでは?〟と、考えました。
そうして、来て早々ーー貴女とお会いすることができたという訳です。
◇◇◇
なんか勝手に回想が始まって、終わった!?!?
いや、それ以前に色々とツッコミどころ多いね!?!?
初っ端から飛ばし過ぎじゃないかなぁっ!?!?
軍部に来る理由がないと来ちゃいけないとか……真面目なんだろうけど!!
ネロさんに惚れた理由がドSっぷりって何!? 罵倒されたいって隠しようのないドMだよね!?
というかっ……話を聞いてたサリュ様がその場に崩れ落ちたんだけどっ!?
「っ……! 息子の特殊性癖なんてっ……親として知りたくなかったっ……!!」
…………かける言葉が見つからない。
「大丈夫だよ、サリュ君。ウチの父親なんて、ヤンデレ好き過ぎて自分の息子にヤンデレ属性付与するぐらいだから。生まれた時からヤンデレなボクがいるんだから、まだドMなくらいマシだって」
ルイ君が慰め(?)でか、そんなことを言うけど……ちょっと待って?
「いや、それはどっちもどっちでは?」
「慰めになってませんからねっ……!?」
思わず真顔になる私と、顔を覆って泣き出すサリュ様がいたよね。
あぁ……うん。サリュ様、ハイパー常識人だもんね……。
いきなり息子の秘密知ったら、そうなるよね……。
「まぁ、わたくし達がどうこう言おうが決めるのは結局ネロ様とサイラス様ですもの。見守るのが一番ですわ」
クッキーを優雅に食べるメル先生が、慈愛に満ちた笑みを浮かべてそう告げる。
…………なんか。子供産まれてから余裕溢れてますね……。
まぁ、でも……先生の言う通り。私達がどうこう騒ごうが決めるのは当人。
やっと大人しく(?)なった私達は今だに話を続けているネロさん達に視線を向けた。
「貴方、わたくしに罵倒されたいの?」
「はい! あっ、でも……叩いてくださっても嬉しいです!」
「なら、椅子になって頂戴と言ったら?」
「喜んでっっ!!」
「まぁ、なら早速」
サイラスさんは素早い動きでその場に四つん這いになり、頬をほんのり赤くしたネロさんがなんの躊躇いもなく座る。
………。
……………。
…………………うん。
…………会話と行動が、特殊すぎる。
ネロさんは彼の頭を優しく撫でながら、語りかける。
「ねぇ。わたくし、軍部を辞めたくないの」
「勿論っ、ネロ様のお好きなようになさってください!」
「その言葉は本当? 嘘ではない?」
「嘘などつきません。だって、貴女は貴女らしくあるのが一番美しい。わたしは貴女のその美しさを翳らせたくない」
……言葉だけ聞けばね?
なんか凄〜〜い素敵なこと言ってんだけどね?
……………姿が全てを台無しにしてるんだよぉ……。
「はい、アリエス。クッキーだよ。あーん」
「…………(もぐもぐ)」
私はルイ君に後ろから差し出されたクッキーを咀嚼しながら、会話を聞き続ける。
「そんなこと言ってくださるヒト、初めてだわ。わたくしの周りにいる人はいつも、令嬢らしくあれって煩い人ばかりだもの。あ、勿論……特殊部隊の方々は違うけれどね?」
「…………ネロ様……」
「良いわ、サイラス。わたくしをわたくしらしくいさせてくれると言うのならば、貴方と結婚してあげる」
「っ……! ありがとうっ……ございます、ネロ様っ!!」
キラキラとした笑顔で微笑み合うネロさんとサイラスさん。
その隣で真顔な私と……どうでも良さそうなルイ君、「おめでとうございますわ」と拍手を送るメル先生。その更に横では「……喜ばしいことなのに素直に喜べない」と半泣きなサリュ様。
うん……いきなり、ぶっ飛んだカップルが誕生したね……。
NEW・登場人物まとめに新情報が追加
○ネロ・ロータル
ドS
○サイラス・トゥーザ
ドM




