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第24話 眠り姫の傍らで、会議は進む(1)


あけましておめでとうございます!

沢山の方々に楽しんでいただけるように、これからも頑張ります!

取り敢えず、スローペース更新なのは変わらないけど、更新頻度を上げれるように頑張ります!(絶対とは言えないけれど!)

まぁ、そんな感じで!

今年もよろしくお願いします〜(*´∇`*)


それでは、ルイ君目線(アリエスが起きる前の話)で……どうぞっ☆


 







 夜が明けたばかりの時間帯ーー。



 さっきと打って変わって……穏やかにベッドで眠るアリエスの頭を撫でながら、ボクは安堵の溜息を零した。






 ボクの部屋で一緒に寝ていたら、急にアリエスがうなされ始めた。

 何事かと思って、邪神の力を使って探ってみれば……固有能力(魔道具)による〝悪夢の呪い〟がかけられていたんだ。



 この呪いは《邪神兵団》……多分、あの傀儡師がかけたんだと思う。

 精神抵抗が低下すればするだけ、アリエスを操りやすくなるし……。

 精神が不安定になることで、疑心暗鬼が生じて……アリエスがこの場から逃げ出そうしたかもしれない。

 向こうの目的は明確ではないけれど……とにかく、この子を精神的に追い込むためにかけたんだろう。

 …………まぁ、邪神の力で普通に解呪したけどね。

 でも、改めて《邪神兵団》という奴らが禄でもないって実感させられたな。

 他の世界(邪神)の記憶はあったけど……直接に見るのとでは実感度が違う。



 ーー自分達の目的のためにここまでするなんて。



「…………世界を怨むのは勝手だけど……アリエスを巻き込まないで欲しいよ」


 ボクは溜息を零しながら、アリエスの頭を優しく撫で続ける。

 ……。

 …………。

 …………どれぐらい、撫で続けていただろう?

 ひたすら無心で撫でていたボクは、控えめにノックされた扉の音に意識を現実に戻す。

 入室の許可を出すと……「失礼するよ」と言いながら、兄様が部屋に入って来た。


「どうしたの? 朝にボクの部屋まで来るなんて珍しい」

「まぁね。朝は時間が許す限りシエラとイチャイチャしていたかったんだけど……昨日、伝え忘れたことがあったから」

「伝え忘れたこと?」

「そう。今日、王宮で会議があるから二人にも参加してもらいたくて」

「……会議?」

「《邪神兵団》の件について、ね」


 それにボクは納得する。

 《邪神兵団》は世界を滅ぼそうとしている奴らだ。

 そんな危険人物達が王都に現れたんなら……国の重鎮達が対応しなきゃいけないのは当然のこと。

 そのための対策会議、といったところかな?

 関係者(というか、当事者)であるアリエスもそれに出席して欲しいと言われるのは必然。

 多分、ボクは保護者枠だね。

 ボクはアリエスに視線を向けながら……それに答える。


「別に良いけど……多分、アリエスは暫く起きないと思うよ?」

「…………なんで?」

「さっきまで傀儡師が残していったらしい呪いの所為で、魘されていたから」

「!?」


 兄様はギョッとしながら、アリエスを見つめる。


「もう解いたけど……やっとゆっくり寝れるようになったんだ。アリエスが自然に起きるまでは寝かせたままでいさせたい」

「……それは仕方ないね。いいよ、寝てるままでいいから、アリエスを連れて来てくれるかな?」


 行かない、って言う選択肢はないんだね。

 ボクが無言で頷くと、兄様は「それじゃあまた後で」と言って部屋を出て行った。







 ………そんな感じで、ボクらは眠るアリエスを連れて王宮に行くことになった。

 王宮入り口に着くと、そこで待っていたらしいまだ二十代後半くらいの男性が一緒に来ていた兄様に挨拶をする。


「お待ちしておりました、エクリュ特務。案内を勤めさせて頂きます、宰相補佐のバーナードと申します。本日はよろしくお願い致します」

「あぁ、よろしくね」

「…………ところで。そちらの二名は?」


 宰相補佐はボクを見て嫌そうな顔をする。

 ………なんか、禄でもないこと思ってそうだね。

 兄様も同じことを思ったのか……面倒そうな雰囲気を隠しもせずに、告げた。


「この二人も関係者だ。ルイ」

「はっ。()()()は、ルイ・エクリュ二等兵になります。こちらはアリエス嬢です」

「………エクリュ……!?」

「この二人の身分は俺が保証する。一緒に連れて行ってもらうよ」

「…………畏まりました」


 ………うわぁ。この人、宰相補佐なのに顔芸ができないタイプだね。

 お偉いさんなら表情から読み取られちゃいけないだろうに。

 まぁ、ボクには関係ないからどうでもいいけど。

 無言のまま歩いたボクらは……そのまま会議室に入る。

 先に集まっていたのは、五人。

 まず、この国の王様であるクラーダ陛下(上座に座ってた男の人)と宰相のバラガン様(ダンディな初老のオジ様)。

 近衛騎士団の団長であるタヴァサ様(四十代くらいの気の良い兄ちゃん風)と精霊術師団の団長サリュ君(ボクの甥の友達らしい)。

 そして……軍部の総帥であるガンマ様(厳つい顔のオジさん)と、軍部の特務アドバイザーである兄様。

 兄様は「遅れてごめんね」と言いながら末席に座ると……兄様の背後に控えたボクに、総帥が鋭い視線を向けてきた。


「…………何故、この場に一兵卒と子供がいる?」

「………まぁ、確かに。ルイの身分は一兵卒だけど……二人とも、関係者だからに決まっているだろう?」


 兄様はにっこりと笑って、総帥を威圧する。

 ボクは敢えて何も言わずにアリエスの頭を撫で続けた。

 ピリピリとした空気が流れる中、国王陛下は大きな溜息を吐いて空気を変えるように手を叩いて鳴らす。

 そして……全員の注目を集めてから、本題に入った。


「これで全員が揃った。早速、会議を始めよう。今回集まってもらったのは他でもない。この国に危機が迫っているからだ。詳しい話はエクリュ特務にお願いする」

「あぁ」


 ……兄様は現時点で分かっていることを話し始める。


 《邪神兵団》と呼ばれる者達がいること。

 彼らの目的や固有能力のこと。

 昨日、奴らが王都に現れたこと。


 …………その理由が、アリエスを狙っているからだということ。


 だけど、職務を放り出したボクと後を追った兄様が《邪神兵団》の傀儡師を追い払ったこと。

 アリエスのこと、ボクとの関係。

 国王達は話を聞いて、事態がとても深刻であることを理解したのか……兄様とサリュ君以外の全員が顔面蒼白だった。

 陛下は頭を抱えながら、呻くように呟く。


「……まさか……このような危機の瀬戸際になっていたなんて……エクリュ特務の話が本当ならば……その娘が敵の手に渡れば、この世界が滅びるということか?」


 国王陛下の言葉に兄様は頷いた。

 すると、テーブルをガンッッッ! と叩きつけた総帥が、兄様を指差しながら叫んだ。


「ですが、エクリュ特務の話が真実とは限りませぬ! この王都には精霊術師団による結界が張ってーー」

「失礼ですが、ガンマ総帥。ルイン様のお話をお聞きしておりませんでしたか? 確かに、王都には我々による結界が展開されておりますが……それは()()()()()のモノ。固有能力持ちには、無意味です」

「だがっ……!」

「精霊術を扱うことに長けている集団であることは自負しておりますが、我々は完璧ではありません。固有能力持ちには効かないのです。それに……貴方はただ、ルイン様のお話を認めたくないだけでは?」

「っ……!」


 サリュ君の鋭い指摘に、総帥は息を飲んだ。

 へぇ……図星、なんだ?

 兄様の話を認めたくない……それは、兄様が軍部全体に意見ができる〝特務アドバイザー〟だから、なのかな?

 総帥である自分より上の奴は認めたくない、なんて……お子様だね。


「まぁ……信じなくても信じてもどちらでもいいよ。君らに任せるから。それに……どちらかと言えば、関係あるのは俺じゃなくて、ルイとアリエスだからね」


 兄様は睨み合う二人を見て溜息を零してから、チラリとこちらに視線を向ける。

 ボクと同じ真紅の瞳はーー()()()()()()()()()と雄弁に物語っていて。

 あぁ……兄様は()()()()()んだって、思った。



 ーーーーやろうと思えば、ボクが()()()()()()()ってこと。



 ボクはにっこりと笑う。その笑顔を見た兄様は、呆れたような溜息を零した。


「もしも、エクリュ特務の話が本当だとしてーー重要になるのは、アリエス嬢が敵の手に渡らないことだ。ならば、その子の安全を最優先としなければならない」


 国王陛下の言葉で、ボクらの視線は上座に移る。

 陛下の右側に座っていた宰相は、その言葉に同意した。


「そうですね……現状でできる策は、アリエス嬢を一番安全な王宮で引き取ることでーーーー」

「却下」

『!?』


 バラガン様の言葉を遮ることはこの上ない不敬だったけれど、それでもボクは言わずにいられなかった。

 だって……今、こいつはなんて言った?

 アリエスを王宮で引き取る?

 そんなの、ボクが許せるはずないだろう?

 ボクは精霊術を使って、宰相の心の内を探る。

 そして……彼の本音を知って、更に殺意を抱いた。


「アリエスの身の安全? さっきの話を聞いていたお前が、王宮が一番安全なんて言えないって……よく分かってるだろう?」

「エクリュ二等兵! バラガン様に向かって不敬だぞっ!」

「黙れ。今はお前と話していない」


 ギロリッ……!

 殺意を込めた視線でしゃしゃり出たバーナードを威圧すれば、彼は顔面蒼白でその場に尻餅をついた。


「お前は、単にアリエスを利用したいだけでしょう? アリエスの力が欲しいだけでしょう? アリエスの能力があれば……この国は、この世界で一番の国になれるから」


 アリエスの召喚術ーー。

 世界を滅ぼせるほどの力がある、ということは……他国への牽制にもなる。

 だって、この国に何かをすれば……その力によって報復を受ける、ってことなんだから。

 だから、宰相はアリエスを引き取って囲い込みたいんだ。

 たとえ、本当でなかったとしても……エクリュ侯爵家の下にいるアリエスならば、王宮に滞在させるのも問題ない。

 それに……アリエスを人質にすれば、エクリュ侯爵家を利用できるかもしれないなんて……どれだけ貪欲なんだか。

 宰相としては色んなものを利用して国のために、国王のために頑張るのが当然なんだろうけれど……相手が悪かったね。


「なんの、ことですかな?」

「ボクにそんな嘘が通じる訳ないだろう? 更に怒りを買うだけだって分かれば?」

「…………」

「アリエスを利用するというなら、ボクは容赦なく抵抗させてもらう。どうやら、兄様はボクに()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいだからさ」



 ーーーーボクがそう言って微笑んだ瞬間ーー。




 兄様以外の顔から表情が抜け落ちるくらいに、蒼白になった……。







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