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【完結】双剣のルード ~剣聖と大賢者の孫は俊傑な優男だが世間知らずのいなかもの~  作者: 普門院 ひかる
第9章 狂乱の銀狼

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第44話 狂乱の銀狼(2)

 しかし、その途中……。


 向かい側から、筋骨隆々で強面(こわもて)の大男を先頭に、駐屯軍の傭兵たちと思われる集団が歩いてきた。


 知らない顔だと見て、ルードヴィヒに眼を付けてくるが、ルードヴィヒは平然としている。これをふてぶてしく感じた大男はミヒャエルを詰問(きつもん)した。


「おいおいミヒャエルさんよう。そこの小生意気(こなまいき)な奴は、何処(どこの)のどいつでえ?」

「こいつは、ローゼンクランツ翁の孫だ。失礼を働くと親父(おやじ)が黙っちゃいないぞ!」


「けっ。(じじい)の七光りの陰に隠れた腑抜(ふぬ)け野郎か。興味が()せたぜ」


 これには、ルードヴィヒも(しゃく)(さわ)ったった


「いってぇ、おらのどこが腑抜(ふぬ)けでぇ!」

「だったら、腕で示して見せろや。背中に背負った双剣が飾り物じゃないならな」


「おぅ。望むところだっちゃ!」


(くぅぅっ……なんてことだ。完璧だったはずの、俺の計画がぁ……)


 ミヒャエルは、頭を抱えたくなった。

 こうなってしまっては、傭兵たちを止めるのは無理だ。


(それにしても、ルードヴィヒの奴。普段はおっとりしているくせに、意外にバトルジャンキーだな……まあ、ローゼンクランツ翁の孫なら、それも仕方ないか……)


 それから、駐屯地の武闘場に場を移し、両者は対峙(たいじ)した。


 ルードヴィヒは相手を値踏みする。

 レベル32で、オーラは第2チャクラ(丹田(たんでん))が開いていることを示す橙だ。両手には、バトルアックスを装備している。


(まあ。中堅どころのパワーファイターといったとこけぇ。クイック系のおらにとっちゃぁカモだのぅ)


 実際、戦ってみるとルードヴィヒの剣撃が一撃で相手の脇腹に決まった。彼が使う片手剣(ブロードソード)は片刃なので、もちろん峰打ちであるが、あばらの2、3本は折れただろう。

 大男は、脇腹を押さえて(うずくま)り、痛みに(うめ)きながら脂汗をかいている。


 大男の仲間が叫んだ。


「ちくしょう! このまま終わっちゃあ鷹の爪(ファルケン・クラーレ)の名折れだ。誰かいねえか?」


「俺がやる」


 そう静かに言い放った男は短槍(ショート・スピア)を装備した槍使いである。

 槍使いの中ではクイック系だが、これもルードヴィヒの敵ではなかった。


 あっという間に(ふところ)に潜り込まれ、これも脇腹に一撃が決まった。


 そして……。

 次々と挑戦者が(あらわ)れるが、ことごとくルードヴィヒに退(しりぞ)けられている。


 騒ぎを聞きつけた傭兵たちが三々五々集まってきて、口々にやじや罵声(ばせい)が飛び交い、武闘場は騒然とした熱気に包まれた。


 その中に、ライヒアルトも含まれていた。


("もう驚くまい"とは思っていたが、いつも予想の上を行きやがる……)


 ライヒアルトは、格闘術も使うが、基本的には弓使い(ボーゲンシュッツェ)だ。このため、ルードヴィヒと立ち合うことは難しいが……。


(弓の試合なら……)


 そう考え始めたライヒアルトは、(かぶり)を振った。


 ルードヴィヒの弓の腕前を見たことはないにもかかわらず、負けてしまう光景がライヒアルトの頭を(よぎ)ったのだ。


(奴なら……あり得ないことではない……)


 事実、ルードヴィヒは、シオンの町で弓の修行もしており、その腕は師範も舌を巻くどころの騒ぎではなかった。また、弓術と風魔法や念動力(サイコキネシス)との組み合わせは、はっきり言って洒落(しゃれ)にならないしろものだ。

 その意味では、ライヒアルトの勘は、ズバリ的中していたのだった。


 そして、昼時となって一旦は中断となった。

 昼食のときも楽し気にしていたルードヴィヒを見て、ミヒャエル止めることを躊躇(ためら)った。


(俺の計画は、ふりだしに戻ったと考えよう。やむを得ない……)


     挿絵(By みてみん)


 結局、武闘場での試合は、昼食をはさんで夕刻まで続いた。

 まだ少年のルードヴィヒの体力が良く続くものだと、傭兵たちは驚嘆せざるを得なかった。


 このままエンドレスなのかと傭兵たちが思い始めたとき……。

 突然、武闘場が静まり返った。


 傭兵たちが振り返り、見つめる先には、銀髪でこの上ない美貌(びぼう)のの優男(やさおとこ)が立っていた。彼の右頬には縦に一文字の刀傷があり、それがかろうじて傭兵であることを主張している。


 彼からは凄まじい覇気が感じられ、それを隠そうともしていない。それは、触れれば切れる鋭利な剃刀(かみそり)のような危険な雰囲気を(かも)しだしている。


 銀髪の男とルードヴィヒは視線が合った。

 お互いに相手の強さを値踏みしているようだ。


 傭兵の1人が、思わず声を漏らした。


「おいおい。いよいよ真打(しんうち)の登場かよ」


 だが、銀髪の男は、傭兵たちの期待には(こた)えなかった。


「俺は、戦場以外で無駄な体力は使わない」

 ……とボソリと言うと、そのまま静かに去っていった。


 どうやら様子を見に来ただけのようだ。


 ルードヴィヒが鑑定してみたところ、銀髪の男は、レベル68で、オーラは第5チャクラ((のど))が開いていることを示す青だ。これは、そこいらの武術師範(しはん)を軽く超える強さを示している。

 この男に、ルードヴィヒは強い関心を抱いた。


 ルードヴィヒは、ミヒャエルに尋ねた。


「誰でぇ? あいつ?」

Berserke(ベルゼルケ)rartiger(ラティガー) Silberwolf(ジルバーヴォルフ)狂乱の(狂戦士じみた)銀狼)……」


「はぁっ? (なん)でぇ? そんこっ(ぱず)ずかしい名前(なめぇ)は?」

「もちろん二つ名だ。本名はダリウスというが、二つ名の方が通りはいいな」


「そっけなもんなんけぇ? 傭兵の世界は……」


 そのまま武闘場の雰囲気は納まり、お開きとなった。

 ルードヴィヒは、ダリウスと手合わせできなかったことが、少し心残りだった。


 事実を先取りすると、二人は帝国を代表する剣士の双璧として、Silberner(ジルベナー) Doppelwolf(ドッペルヴォルフ)(二匹の銀狼)の二つ名で恐れられる存在となるのだが、それはまだ先の話である。

お読みいただきありがとうございます。


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