第32話 第5王女(1)
マルグレット・ランデルは、ノルエン王国の第5王女として生まれた。
母は3人いる側室の中で序列第3位の最下位だった。
王女といえども、こうなってくると扱いが粗略だった。
7歳になり、これから王族としての教育を受けるという時期になると、早速公務に駆り出された。
辺境の町の祝賀行事の来賓として出席するというもので、とにかく王族の誰かが出席してアリバイだけ作れればいいという性質のものだった。
そろそろ町へ到着しようかというとき、事件は起こった。
深い森の中で30人規模の盗賊に見つかり、襲われたのだ。
彼らは、通りすがりの隊商などを襲う盗賊団で、マルグレットたちを待ち伏せしていた訳ではなかった。
護衛も5名ほど付いていたのだが、多勢に無勢であっという間に撃退され、結果として男たちは全員が殺された。
マルグレットも馬車に隠れていたところを発見され、捕らえられた。
「離しなさい! 私はノルエン王国第5王女のマルグレットです。乱暴を働いたら、王国が許しませんよ!」
しかし、目立たないために、あえて地味に偽装していた馬車に乗っていたことが災いした。
「ガハハハハハッ…」
盗賊たちは、一斉に笑いこけた。
「嬢ちゃんよう。王族ってのは、もっと煌びやかな馬車に乗ってるもんだ。そんなことも知らねえのか?」
マルグレットは、返す言葉が出なかった。
そして…
盗賊たちは、まだ児童といってよい年齢のマルグレットに性的奉仕を強要し、一通り満足すると奴隷商に売り飛ばした。
以後、マルグレットは、性奴隷として転売されることを繰り返された。これは、奴隷とされた美しい容姿のエルフがたどる必然の道ともいえた。
転売先の主人は、様々な性的嗜好を持っていた。異常と思える行為を強要され、最初は抵抗していたマルグレットも徐々に従順にこれを受け入れるようになっていく。
これは自分の心が崩壊しないための、防衛本能が働いた結果であり、そもそも彼女は是非を問えるような境遇ではなかった。
結局、転売先の主人たちは、高値で転売するため、マルグレットの処女を奪うことは誰もしなかった。
やがて8年が経過し、王族としての人生よりも性奴隷としての人生の方が長くなった。
マルグレットを連れてきた日の夜。
ルードヴィヒは寝床に着いたものの、クーニグンデの毒が残っていて頭がズキズキと痛み、なかなか寝付けなかった。
ようやく痛みが引いて、ルードヴィヒが眠りについたとき、彼らの部屋の扉が静かに開かれた。
ありがちなことではあるが、4人部屋の誰かが鍵を閉めるだろうとお見合いになった結果、鍵が開きっぱなしになっていた。
誰かが部屋に侵入し、ルードヴィヒのベッドに近づいていく。
普段であれば接近に気がつかないはずはないルードヴィヒであるが、毒の影響なのか、まだ気づかずに寝入っている。
ニグルは、これに気づいていたが、侵入者に害意がないことを察すると、興味を失い、再び寝入ってしまった。
ライヒアルトも気づいており、同様に害意がないことを察してはいたが、あることが想像され、ニグルとは逆に、興味津々で侵入者が立てる音に聞き耳を立てていた。
ハラリエルは、熟睡したまま寝息を立てている。
侵入者からサラサラと微かな衣擦れの音が聞こえる。服を脱いでいるようだ。
ライヒアルトは気づかれないように目を凝らしたが、薄暗がりの部屋の中では、輪郭がぼんやりと見えるだけだった。
侵入者は、ルードヴィヒのベッドに潜り込むと、添い寝をした。
そしてルードヴィヒの上衣を開けさせると、その胸に顔を埋める。
その体温を堪能した後、侵入者はルードヴィヒの胸にチュッとキスをした。
さすがに、その刺激でルードヴィヒは目を覚ました。
いくら薄暗がりとはいえ、これだけ密着しているとルードヴィヒには見えた。
マルグレットが下着だけの姿で馬乗りになっている。
彼女の白くて柔らかそうな素肌が目に入り、ルードヴィヒは、ゴクリと唾を飲み込んだ。
(いやいや……こんまんま流されたらダメだろ……)
「マルグレットさん……いってぇ何を……」
……と他の3人に気づかれないように小声で囁く。
「ご主人様ぁ♡。夜のご奉仕に参りました……」
……とマルグレットは色っぽい声で言った。
「しーっ。誰かに気づかれたらどうすんでぇ」
「別に……私は構いませんが……」
(はあ? いってぇどういう躾をうけてきたっちぅんでぇ……)
「おめぇを奴隷にはしねぇと言ったろ」
「でも……ご奉仕は……」
「それも必要ねぇ」
「……………………」
ルードヴィヒの胸に暖かな液体が垂れ、これを濡らした。
「泣いて……いるのけぇ?」
それには答えず、マルグレットは悲愴な声で言った。
「ご主人様は、私のことがお嫌いなのですね……私に魅力がないから……」
これまで長年にわたり性的虐待を受け続けていたマルグレットは、自分の容姿にだけは少しだけプライドを持っていた。
(魅力のない女に男が欲情したりしないだろう)と必死に思い込んだ末の結果だった。
唯一残された心の牙城であるこのプライドを否定することは、自分を全否定するも同然と彼女は感じていた。
さすがのルードヴィヒも、マルグレットの涙には動揺した。
「んにゃ。すっけんこたぁねぇ。おめぇほど魅力のある女など滅多にいるもんじゃねぇ」
「では……どうして……?」
マルグレットは、まるで理解できないという顔をしている。
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