第132話 代理戦争(3)
「おお。ルードヴィヒ! 死んでしまうとは、なさけない! 仕方のないやつだな!」……という声に目覚めると、ルードヴィヒは、どこかの古びた教会の礼拝堂に横たわっていた。その声は教会の神父らしき青年のものだった。
「誰だ? おめぇ……」(もしかして……)
神父は、その問いを無視してこう言った。
「おまえに、もう一度機会を与えよう! 再びこのようなことが起こらぬことを我は祈っている!」
(何かに扮してぇがぁか……?)
その次の瞬間。ルードヴィヒは再び意識を失った。
次に目覚めたとき、ルードヴィヒは何か豪華な建物の部屋に横たわっていた。周りには屈強な戦士が多数たむろしている。そのうちの一人がルードヴィヒに声をかけた。
「おまえ。何者だ?」
「おらぁルードヴィヒだっちゃ。こかぁどこでぇ?」
「ここはヴァルハラだ」
「はあっ? おらぁ死んだんか?」
そこで、武装した見事な金髪の美女が説明してくれた。
「あなたの身柄は、かの御方から預かったのです。あなたは死んではいません」
「おめぇさんは?」
「私は、戦乙女筆頭のブリュンヒルデといいます。以後、よしなにお願いします」
「いやぁ。こちらこそ……」
そしてブリュンヒルデが言うには、『かの御方』の命によれば、ルードヴィヒは武術の再修業をするために、ここへ連れてこられたという。
「かの御方のぅ……そりだども、おらぁすっけんことしてる暇はねぇ」
「再修業をつけた後は、主神オーディンの力によりあなたが死ぬ前の時間に戻します。ただし、これは今回限りの特例です。二度とないものと心得なさい」
「そういうことけぇ……わかったっちゃ」
そして、ルードヴィヒの再修業が始まった。当初はヴァルハラの英雄たちと稽古をつけていたのだが、すぐにそれでは物足りなくなった。
自ずと訓練の相手は戦乙女たちとなっていく。彼女たちは半神の神格を持つ女戦士である、甲冑に身を包み、羽飾りの兜と剣や槍、盾などを装備して武装し、天馬を駆って空を翔ける。ブリュンヒルデはもとより、冴えのある剣技を備えたレギンレイヴやシグルドリーヴァに、槍使いのゲイルスケグル、戦斧使いのスケッギォルド、魔法を得意とするゲンドゥルらに多方面から稽古をつけてもらう。ゲンドゥルには、魔術に使うルーン文字の極意も教えてもらった。
ついに最後には、主神オーディン自ら稽古をつけてもらう。オーディンは剣も使うが、投げ槍にもなるグングニルという槍を使う。投げ槍としての使用が主となるが、穂先の鋼鉄にはルーン文字で魔法がかけられており、投げれば必ず命中し、そして自動的に手元に戻ってくる。
グングニルの破壊力は凄まじいものがあった。ルードヴィヒはもちろん正面から受けるようなことはせず、滑らせるようにして受け流していたのだが、それでも愛用のオリハルコンの双剣は悲鳴を上げていた。見るに見かねてオーディンは言った。
「そのように武器に気を使っていては訓練にならないだろう。そなたにはこれをやろう」とルードヴィヒの身長に届こうかという長さの大剣を差し出した。
「こらぁもしかして魔剣グラムでねぇけぇ? すっけん貴重なものを……」
「それは我が造ったものだ。必要ならまた造ればよいゆえ気にするでない」
「そうけぇ……そんだば、ありがたくいただくことにするっちゃ」
戦乙女にしても、オーディンにしても、ルードヴィヒが半神であるという前提で神気の使い方をあれこれ言ってくる。これはルードヴィヒには思いもよらないことであったが、実際に目の前で神気を使って見せてもらうと、その流れを感じることができた。それは闘気の使い方に共通するものがあったため、すぐにコツはつかめた。彼は着実に強さを高めていく……そして半年ほどたった。ルードヴィヒの実力は主神オーディンと伯仲するまでになり、オーディンは修業の打ち止め宣言をした。さらに加えて言った。
「そなたのような者に道半ばで死なれては面白くない。ついては、そなたに我と我が配下の加護を与えてやろう」
「守護契約を結んでくれるっちぅことけぇ? そらぁ恐れ多いこって……」
「我が気に入ったこともあるし、かの御方の関係者となればなおさらだ。遠慮するでない」
「わかったっちゃ。ありがとうごぜぇやんす」
そして……ついにそのときは来た。ルードヴィヒの目の前ではオーディンによる魔法陣が神秘的な光を放っている。
「そんだば、行ってくるすけ。これまでありがとうごぜぇやんした」とオーディンに礼を言うと、ルードヴィヒは魔法陣に身を投じた……。
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