表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】双剣のルード ~剣聖と大賢者の孫は俊傑な優男だが世間知らずのいなかもの~  作者: 普門院 ひかる
第16章 帝位奪還へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

247/259

第131話 黒の森の女王(2)

 アベルは、黒の森の奥深くにある魔王らしき者の居城の門前にたどり着いた。そこは深い霧に閉ざされており、これまで執拗(しつよう)に捜索されたものの誰も発見できなかった場所だ。アベルは門番に話しかける。左右にいる門番は人間の姿をしているが、狼に変身できる人狼だ。


「私は神聖ルマリア帝国皇帝補佐官のアベル・フラウエンロープだ。女王陛下にお目通り願いたい」


 事前予告のない使者の来訪を門番は不審に思ったが、ここで邪険に扱って帝国皇帝との関係が悪化したら、自分たちの責任を問われかねない。門番は、アベル来訪の旨を取り次いだところ、さほど時間がかからずして入城が了承された。


(確かに相手は一人にすぎないが、そんな不用心なことでいいのか?)……門番は懸念したが、案内の者がやってきてアベルを城内へと誘っていく。アベルは、何のチェックもなく女王の間へと通された。真正面の玉座に妖しく燦爛(けんらん)な光を秘めた美貌の貴婦人が玉座に鎮座している。古風で異国情緒あふれる豪華な衣装を着崩して胸をはだけており、その豊満な乳房が今にもこぼれんばかりだ。


(不用心なのか……俺の実力を見切られているのか……たぶん後者だな)と察すると、アベルは自分がどう扱われるか憂色が濃くなっていった。女王の前には幹部級の臣下らしきものが十名程度整列しているが、その誰もが圧倒的な存在感を放っており、その覇気や魔力の強さから、それぞれが魔王級の実力があるのではないかと推量できた。


「皇帝補佐官とやら。陛下に何用があって参った? 発言を許す。申してみよ」と女王の最も間近にいる筆頭臣下がアベルを促す。


「実は、大公軍に地獄の(あるじ)ルシファーの転生体である怪傑な人物がおりまして……ぜひ陛下の幕下に加えられたらよろしいかと存じます」

「ならば調略でもして貴軍に内通させればよいではないか。なぜ、そうしない?」と筆頭臣下は問いただす。


「かの者は大公に忠誠が厚く、我らの手には余りますので……」

「おおかた我らにシュワーベン大公軍と代理戦争でもやらせる腹積もりなのであろう? あり得ないな」と筆頭臣下は切って捨てる。


 ところが……「待て! ルシファーの転生体ということが真実であれば、(ちん)は捨て置けぬぞ」とそこに女王が割って入った。


「しかし、陛下!」と筆頭臣下が諫めるが……。

「興味はあるが、もちろん何の見返りもなしに動くつもりはない。帝国は何の見返りを用意できる?」


 それを受けて、アベルは知恵を巡らせる……「では、二国間で相互不可侵条約を締結しましょう。そのうえで、やつを大公軍から引き抜いていただいた(あかつき)には、相応の報酬を支払うということではいかがでしょうか?」


「足りぬな……うぬの(あるじ)が朕に従い、帝国は我が国の従属国となれ! それが条件だ」

「それは……いくらなんでも……」と絞り出すように言いながらアベルは苦渋の表情をにじませる。


(そのような空手形……いくらでも切ってやるさ……)


「とにかく、陛下のご意向は理解いたしました。私の力が及ぶ限り、皇帝陛下を説得してみます」とさも意を決したように答えた。


 が、女王は……「誰が皇帝などと言った! うぬの(あるじ)は万古の戦神ヘベヨユルであろう。そのようなこと、先刻承知のうえだ。皇帝など、うぬに操られた傀儡(くぐつ)に過ぎぬではないか」


「くっ」……アベルは真実を言い当てられて挙措(きょそ)を失い、脂汗をにじませた。


(これはタイミングの問題だ……相手が誰であれ先にカードを切らせさえすれば、こちらはカードをホールドして空手形にすればいいだけだ……)


「陛下の慧眼には感服いたしました。私の力の及ぶ限り、ヘベヨユル様を説得してみせます」


 その場は、そういうことで話は収まった。


 万古の戦神ヘベヨユルは、ブラハント公国のとある深い森に亜空間を創り出し、そこに居城を設けて配下の魔族とともに暮らしていた。彼もまた十八年前にルシファーと同時にタルタロスから脱出した一人である。彼は狡猾であり、ブラハント公を傀儡(かいらい)として、配下の魔族の被害を最小限にとどめつつ、帝国を手に入れることをもくろんでいた。アベルは、その幹部級の配下で本性はキツネ型をした魔族である。彼が黒の森(シュバルツバルト)の女王との交渉結果を報告をすると、ヘベヨユルはすぐさま承諾した。


「確かに。そのような空手形であれば、いくらでも切ってやるわ」


 ところが、黒の森(シュバルツバルト)の女王の方が一枚上手であった。彼女は筆頭幹部の家臣にすぐさま命ずると、ヘベヨユルの愛娘を黒の森(シュバルツバルト)の居城に拉致(らち)してしまったのだ。空手形を切って漁夫の利を得ようとほくそ笑み、油断しきっていたヘベヨユルは一転して激怒したが、覆水盆に返らずである。これにより、ヘベヨユルは簡単には空手形を切れなくなった。


 ブラハント公の孫娘はマリア・クリスティーナほどの大きさはないものの竜の紋章持ちであった。十八年前にヘベヨユルが彼女に懸想(けそう)し、これを(はら)ませてできたのが愛娘のローズマリーである。彼女は父親の舐犢(しとく)の愛の中で艶冶(えんや)たる美少女に育っていたのである。


 ヘベヨユルは一刻も早く娘を取り戻したい気持ちから、黒の森(シュバルツバルト)の女王との戦争も辞さない構えを見せたが、最後は必死な臣下たちに(いさ)められた。


「とにかく……娘を取り戻すのはやつの始末が終わってからだ。すべては、そこから始まる……」となんとか思いとどまった。

お読みいただきありがとうございます。


気に入っていただけましたら、ブックマークと評価・感想をお願いします!

皆様からの応援が執筆の励みになります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ