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【完結】双剣のルード ~剣聖と大賢者の孫は俊傑な優男だが世間知らずのいなかもの~  作者: 普門院 ひかる
第13章 隠然たる庇護者

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第96話 お茶会(1)

 薔薇を付けた後、案内係の誘導でお茶会の会場へと入っていく。


 ルードヴィヒにエスコートしてもらうべく、リーゼロッテはその左腕に(すが)った。もう何度もやっているので、なかなか様になっている。


 リーゼロッテが小声で(ささや)いた。


「ルード様。方言は厳禁ですからね。我慢してください」

「わかってるてぇ」


 言っている先から方言で答えられたので、リーゼロッテは少しばかり不安に思い、表情をくもらせた。


 会場に入ると、二人に注目が集まった。

 その途端に、二人を称賛する声と、酷評(こくひょう)する声が入り混じり、会場が(ざわ)めいた。


「まあ、なんて素敵なカップルなんでしょう。ナチュラルシックな雰囲気がとても似合っているわ」

「そうよねえ。私なんかが真似しても、とても似合わないだろうなあ」


「いやだぁ。ローゼンクランツ卿は、もうツェルター嬢と結婚されるおつもりなの?」

「正式に婚約した訳じゃないから、まだチャンスはあるわよ。私は(あきら)めないわ」


「けっ。ちょっとばかしハンサムで、可愛い子を連れていると思っていい気になりやがって」

「まったくだよ。それに、あの薔薇はやり過ぎだろう。そこまでして目立ちたいのかよ」


「きゃーっ! 何なのローゼンクランツ卿のあの足の長さは。カッコよすぎる……」

「ツェルター嬢のスタイルの良さも負けていないわよ。なんて(うらや)ましい……」


 だが、これは二人の間で確立しつつあるスタイルであり、世間の評判など気にしないとばかりに、たじろぐことはなかった。


 実のところ、多くのご令嬢方は、このリーゼロッテのファッションに感銘(かんめい)を受けたらしく、この後、真似する者が続出するのだった。


 二人が案内されたのは、大公女コンスタンツェと同じテーブルであった。6人掛けの大きめなものだ。


(こらぁラッキーだったのぅ。さすがに、ツェルター家は優遇せざるを得ないってか……これで監視がしやすくなった……)


 ルードヴィヒは、密かに何よりと思った。


 最後にコンスタンツェが入場してきてお茶会が始まる。

 まず、主催者のコンスタンツェが開会の挨拶をしているが、これを聞き流しながら、ルードヴィヒは、透視(クレヤボヤンス)の魔法で、茶葉や茶器に毒物が仕込まれていないか探っていく。


 ハラリエルが予知した状況からみて、一番怪しいのはティーポットであるが……


 ティーポットを透視(クレヤボヤンス)で見ると、(ふた)の裏にタブレット状の物体が張り付けてあるのを発見した。


(なるほど……蓋の裏までは、給仕をする侍女も確認しねぇからのぅ……お茶を入れたら、その蒸気で溶けて下に落ちるっちぅ寸法ってとこけぇ……)


 ルードヴィヒは、物体引き寄せ(アポート)の魔法でタブレットを引き寄せると、ストレージに収納した。


 他にも仕込まれていないか確認したが、見つからなかった。


 挨拶が終わり、いよいよ紅茶が給仕された。


「それでは皆様。いただきましょう」


 コンスタンツェが、そう言い、皆がティーカップに手を伸ばそうとしたところで、ルードヴィヒが発言した。


「少しお待ちください。まずは、私が毒見をしますので」


 するとコンスタンツェがあきれ顔で言った。


「大公家のお茶に毒が入っているとでも言うの。そんなことあり得ないわ」

「万が一ということもありますし、実は、私、こういうことを一度やってみたかったものですから……」


 ルードヴィヒの世話役気取りのコンスタンツェは、不機嫌そうな顔をしながらも、これを許した。


「もう、しょうがないわね。皆さんお待ちだから、やるならさっさとおやりなさい」

「ありがとうございます」


 ルードヴィヒは、おもむろにティーカップを手に持つと、紅茶を一口に含んだ。


「うっ……これは……………………美味しいです」


 一瞬、顔色を変えたコンスタンツェだったが、再びあきれ顔で言った。


「もう……紛らわしい言い方をしないでよ。びっくりしちゃったじゃない」


 そこへリーゼロッテが微妙なフォローを入れる。


「ルード様ったら、冗談が下手すぎです。それじゃあお金はとれませんよ」

「はっはっはっ。これは面目(めんぼく)ない。でも、道化師になるつもりはありませんから……」


 テーブルに同席していた者たちは、これを聞いてクスリと笑った。


 しかし、観察眼の鋭いコンスタンツェは、一人で疑念を抱いていた。


(今日に限ってローゼンクランツ卿が悪ふざけするなんて、ちょっとおかしいわ……何なのかしら……)


 そんなやり取りの(かたわ)らで、ルードヴィヒは、周囲の観察を(おこた)っていなかった。


 ルードヴィヒが毒見をしている瞬間を、少し離れた建物の柱の影から半身だけ乗り出して注視している男がいた。調理人の恰好をしているので、調理スタッフのようだ。

 男は、ルードヴィヒに見つかったことに気づくと、そそくさと去っていった。


 ルードヴィヒが、少し離れた場所で待機しているルディに目配せをすると、ルディは、その男の後を付けていった。


     ◆


 ドロテーア・フォン・バラックは、シュワーベン大公国で内務担当宮中伯(プファルツグラフ)を務める有力貴族のパラック侯爵の末娘である。


 彼女は、少し派手めな化粧をしており、かなりの美人である。体型はぽっちゃり形で、今人気のグラマーな体型をしている。

 大公子のハインリッヒとは愛人関係にあるが、家柄や自分の容姿・体型への自負から、婚約者候補の最右翼であると自認していた。


 末娘として甘やかされて育てられ、かつ、自信家でもある彼女は、ハインリッヒと結ばれて大公夫人となることを夢見ていたが、周囲から(おだ)てられるうちに、そのことが、いつしか夢から確信へと変わっていった。


 そんな彼女は、ハインリッヒの評判が下降の一途をたどっていることを、とても不満に思っていた。

 そして、その()さ晴らしをする矛先(ほこさき)は、ここ最近、評価を上げてきているコンスタンツェへと向かって行った。


 ドロテーアは、今日のお茶会では、コンスタンツェの隣のテーブルに座っていた。彼女の身分であれば、同じテーブルでもおかしくはないのだが、それだとコンスタンツェの風下に立つようで、ドロテーアはこれを嫌ったのだ。


 そして、いよいよ紅茶が給仕されたとき、ドロテーアは、周囲に気取られないように気をつけながら、コンスタンツェのテーブルに注目していた。


 すると、同席していたローゼンクランツ卿がなんと毒見をしたいと言い出した。


(ちっ。大公家が用意したお茶の毒見など、なんて余計なことを……これでは計画が失敗してしまう……)


 そう思ったドロテーアは、眉をひそめた。

お読みいただきありがとうございます。


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