第83話 翼竜会誕生!?(2)
やがて、ベテラン冒険者らしき男が行く手に立ちふさがった、用心棒として雇っている冒険者のようだ。
しかし、冒険者の男はクーニグンデの顔を見ると顔色を変えた。
「こいつは、Jetschwarzes Biest(漆黒の獣)の片割れじゃねえか。こんな奴が相手なんて俺は聞いてない。俺は降りるぜ。こんな奴が相手じゃ命がいくつあっても足りやしない」
冒険者の男は、そそくさと逃げていった。
それを茫然と眺めていた構成員たちも、クーニグンデが近づくと蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
そのまま無人となった廊下を進むと、頭目の部屋と思しき豪華な部屋があった。
クーニグンデが扉を蹴破ると、頭に剃り込みを入れたいかにもならず者といった鋭い目つきの中年男が座っている。いかにもといった感じで貫禄がある。
男は、動じる様子もなく、ドスのきいた声で言い放った。
「このアマ。ここがどこだかわかっててやってやがるのか?」
「黒竜会とやらの本部だろう。違うのか?」
「わかってやがるとは、この期に及んで不逞アマだ! そういう生意気なアマはたっぷりと可愛がって目に物をみせてやる。てめえらとっとと捕まえろ!」
と、横に控えていたボディーガードらしき2名の男に命じた。
男たちは一斉にクーニグンデに躍りかかるが、彼女が両手を一閃させると、泡を吹いてぶっ倒れた。
それを驚きの表情で目をむいて見ていた頭目は、態度を豹変させた。
「お嬢様。何かの間違いではないですか。ここは赤竜会の事務所ですが……」
「さきほどは”黒竜会”と言っていたではないか?」
「それは黒竜に失礼なので、たった今名前を変えました」
「我に赤竜の肩を持つ義理はないが、赤竜が聞きつけて、この町が灰燼に帰しても、我は知らぬぞ。奴らも気が短いらな」
「では、風竜会では……?」
「……………………」
「それとも、水竜会……」
「きさま。なぜ属性竜にこだわる。きさまらなど亜竜程度で十分だ」
「では、翼竜会にします」
「翼竜のことまでは我は知らぬ」
「ありがとうございます。では、それでご用件はお済みで?」
「まだある。庶民街にある三毛猫亭という店があるだろう。あそこには絶対に手を出すな。もし手を出したときは、この建物が醜く崩れた腐乱死体で埋め尽くされると知れ」
「はいっ。承知いたしました」
「では、邪魔したな」
そういうと、クーニグンデは、踵を返し。悠々と帰っていった。
その後に、結局最後まで何もできなかったジェラルドたち3人が続く。
黒竜会改め翼竜会の頭目は、それを茫然と眺めているしかなかった。
その後、翼竜会は、血の兄弟団との直接の抗争を避けるようになった。
血の兄弟団とつながりのあるJetschwarzes Biest(漆黒の獣)の片割れのクーニグンデだけであの被害を受けたのた。
仮にJetschwarzes Biest(漆黒の獣)の両方ともなると全く太刀打ちできそうもないし、さらには、その主人であるローゼンクランツ卿ルードヴィヒの実力は全く計り知れない。
これらと対立する愚は避けるようにしたのだ。
◆
クーニグンデの活躍で、血の兄弟団に恩を売った形となったルードヴィヒは、これを好機とばかりに、団長のトルステンに面会すると、ならず者業界の情報提供の約束を取り付けた。
情報収集の指揮はトルステンでは心もとないため、ヴァルターが務めることになった。ダリウスに短刀の使い方を指南したあのヴァルターである。彼は、30代も後半に入って、血の兄弟団の幹部を務めることになっていた。
連絡要員は、見知った仲であるジェラルドが務めることになったが、直接ローゼンクランツ新宅に出入りするのは憚られたので、庭師のヴィムと外部で接触を持つことになった。
密会場所は、三毛猫亭の2階を使うことが恒例となった。
こうして、また一つ、ルードヴィヒの情報網が充実することとなったのである。
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