第72話 新宅の庭(2)
「そんだば、行くけぇ」
「はいっ」
と元気に返事をすると、リーゼロッテは、ルードヴィヒの左手にすがりついた。
(あっ! またやっちゃった。なんだか、だんだん習慣づけられてきたような……なんて、相・思・相・愛……みたいな?(*˘︶˘*).:*♡)
ルードヴィヒは、それを気にするでもなく、なすがままにして歩き出した。
少し歩いたところに、ちょっとした小川が流れている。
二人の影を見つけて、小動物がカサコソという音をたてて逃げていった。
「あれっ! いま何か小さい動物がいましたよ」
「おぅ。あらぁシマリスだのぅ。おおかた小川の水を飲みにきとったがぁろぅ」
「へえー。ここに棲んでいるんですか?」
「おぅ。ずっと放置されてたすけ、他にも鳥だの、ウサギだの棲んどるのぅ。さすがに狸は逃げていっちまったども」
「シマリス君、近くで見たかったなあ」
「奴は普段は木の高ぇとこにいるし、警戒心が強ぇすけ、ちっとばかし難しいのぅ」
「ええーっ。それは残念」
「ウサギなら、まちっと傍で見られると思うども」
「えっ! 本当ですか?」
「おぅ。見に行ってみるけぇ」
「はいっ。ぜひお願いします」
小川に沿って、少し歩く。小川には、清流にしか繁殖しない水草が生えており、それが水質の良さを示している。
「庭に小川が流れているなんて素敵ですね。それに川の水がとっても綺麗です」
「この庭にはちょっとした泉が湧いとって、そこから小川が流れているがぁよ。さっきの紅茶も泉の水で入れたがぁだすけ」
「なるほど。それも美味しさの秘密だったんですね」
「まあのぅ」
リーゼロッテは、熱心に小川を観察している。
「いいなあ……あっ。今、小さなお魚さんがいましたよ」
「ああ。ここは水がきれいだすけ。ヤマメやアブラハヤなんかが自然に繁殖してるがぁよ。石の下には沢蟹もいるしのぅ」
「なんだか、どこかの山奥みたいですね」
「確かにそうだのぅ。おらもここがアウクトブルグと思えねぇときがあるっちゃ」
「カワニナも棲んどるみてぇだすけ、夏になったら蛍が見れるかもしれんのう」
「きゃぁ、素敵です。もし見れたら、ぜひ私も呼んでくださいね」
「そらぁ、もちろんだとも」
そして、少し開けている草地に来た。
ルードヴィヒは、木の陰に隠れると、ある場所を指差して小声で言った。
「あの辺りにウサギの巣があるがぁよ。静かにしとれば、そんうち出てくるすけ」
「はい。わかりました」とリーゼロッテもその気になって小声で返事をした。
程なくして、巣穴から、真っ白なウサギが姿を現わした、続いて白黒ブチのウサギがもう一体……。
周辺を警戒して、キョロキョロしている。
(きゃぁぁぁっ。可愛いぃ!)
リーゼロッテは、感動の声が上げたいが、我慢しているため、その場でジタバタしていた。
その様子が妙に可愛くて、ルードヴィヒ思わず微笑んだ。
だが、二人の気配を察したのか、二匹は直ぐに巣穴に逃げ込んでしまった。
「ああ。残念……」とリーゼロッテは、実感のこもった声で言った。
「奴らは野生化しとるからのぅ。ペットのウサギみてぇにぁいかねぇすけ」
「抱っこしてみたいんですけど、無理でしょうか?」
「なかなか人には慣れねぇろぅのぅ」
「巣穴を掘っちゃったりしてますけど、追い出したりはしないんですよね?」
「まあ、奴らがいると適度に雑草を食ってくれるすけ、当分の間は、放置すっかのぅ」
「そうですよ。追い出したら可哀そうです」
「そんだば、そうするけぇ」
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