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ぱらぱらと夢物語  作者: きいまき
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閉じた世界

 キクスお兄様達を追ってきたキサの目の前に、とても栄えている様には見えませんが、ソレらの類ではなく、人が暮らしている集落が出現しました。

 集落内では1番大きな建物の、装飾は皆無ですが客間だろう一室にいた、お兄様とマサウが座っている場所まで、キサは辿り着きます。


 キクスお兄様は全く暴れておらず、そうする気もないのが伝わっているのか、2人は縛られるどころか、抑えつけられたりもしていません。

 お兄様の無事な姿を見て、キサは呼吸を落ちつけ、冷静さを取り戻そうとしました。


 キクスお兄様の目の前には、1人の人物と、その隣に引き摺り込んだ張本人(?)のソレが随っています。

 長であるという人物の話の内容に、キサは耳を澄ませました。



 もう何代も前の集落の娘が、ソレに恋を捧げられました。

 ところが同じ集落の若者に、淡い恋心を抱いていた娘は、それを受け入れられずに拒否し、以来、この地域一帯はソレらに、狙われるようになってしまったそうです。


 けれども捨てる神あれば、拾う神あり。

 長の隣に従うソレが、一帯を世界から隔離しました。


 しかし一帯とはいえ、閉じた世界です。

 いつしか近親婚が繰り返されるようになり、血は濃くなる一方。


 子供も産まれづらくなっている様に、人々が感じ始めた時、一帯を守っているソレは、外から人や家畜等を連れ去って来る様になり……。

 その一環でキクスお兄様達も、この集落に攫われてしまったのです。


「あなた達が住んでいた世界は離れてしまったから、もう連れてきたソレにも帰す事は出来ない。出来る限り、そちらの意に添うようにするので、協力して貰えないだろうか」


 そうした内容が、長からキクスお兄様達に話されます。



 長の言葉はほぼ通じるので、きっとウーノ領が成り立つ前、元々はウーノと地続きの、近隣で起きた内容なのでしょう。

 それに悪意ではなく、助けを求めて(?)いたから、結界が反応しなかったのです。


 ウーノ一族は、種馬にはかなり不向きな一族なのですが、言わなければ分かるはずもありません。

 少なくとも話を聞く限り、すぐにキクスお兄様がどうこうされる事はなさそうです。


 突然、兄妹(とマサウ)がいなくなったと、今頃ウーノを守るソレらが騒ぎを起こしているはずです。

 現状を知らせる為、キサは1度ウーノへ帰る事にしました。




 キクスお兄様がいる限り、この世界がどれだけ遠ざかろうと、キサには戻って来られる自信があります。


 もし、お兄様が攫われたのが、もっと早かったなら、もしかするとキサは世界の狭間で、迷子になっていたかも知れません。

 そこまではいかなくても、ウーノへ帰るのに少し手間取っていた事でしょう。


 キサがソレらに仲間入りせず、人であり続けようとする第一の理由が、キクスお兄様である事。

 そしてキサの帰る場所が、ウーノではなく、お兄様のいる場所だったからです。


 だからキクスお兄様のいる場所に、どうしてもキサは引っ張られてしまうので、自分の体のある方向と、お兄様の居場所の2つで混乱した結果、迷子になっていただろうと思うのです。


 けれど今、キサは迷子になる心配を全くしていません。


 ウーノには、新しい家族が待っています。

 彼らの傍に帰りたいという思いがキサにある限り、体へと引っ張られる力が強くなるからです。


 そして更に、予想外のお迎えまでが現れました。


「……ポポっ!」

 ウーノへ戻る為の灯りがポポならば、何も言う事はないとキサが思っていられたのは、ほんの短い間でした。


 ポポがいつも以上に、希薄な存在と成り果ててしまっていたからです。

 そんな姿を見たキサは、居ても立ってもいられず、一目散にウーノへと帰ったのでした。





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