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ぱらぱらと夢物語  作者: きいまき
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家族達と、もう1人

 キクスお兄様に会いに行くと、決めたキサは不安でいっぱいです。

 それでも皆の前で、宣言してしまった以上、キクスお兄様に会いに行くっきゃないのです。


 日中、キクスお兄様には仕事、キサには学校があります。

 キサは、キクスお兄様のご負担にはなりたくないので、お兄様に夜の公イベントがない日の夕食前後が希望です。


 そこで毎朝キクスお兄様と、顔を合わせているマサウに、会う日程を詰めてもらいました。


 マサウが決めてきたのは、週末の夜。

 次の日は休みなので一泊して、屋敷でソレらとゆっくり過ごしてやってほしいと、キクスお兄様からの伝言付きです。


 そのキクスお兄様との約束の日が、今日なのです!



 同じウーノの学園都市内といえど、寮から屋敷まで、そこそこの距離があります。

 けれど、あえてキサは馬車を使いませんでした。

 何となく歩きたい気分だったからです。


 それでも急ぐ時は、イライラして歩いてなどいられないぞ、この距離……。

 やはり緑地帯内にも、領線がほしいとキサは思います。


「キサ」


 当然、緑地帯にもソレらの手が入っています。

 そうでなければ、もっと鬱蒼としていたに違いありません。


 ウーノ屋敷は緑地帯の外れにあるのですが、領線が走る前から、広場は人々の憩いの場として開放されていましたから、四方へと伸びる筋以外にも、広場を一周出来る環状道を始め、あちらこちらへと遊歩道まであります。


「……おい、キサ」


 これら1つ1つが、ウーノ家の祖先がソレらに願った結果なのでしょうか?

 けれど緑の帯や小塔の発光は、領線を人の手で作り上げて、その後で起こった事なので、まず人の手による作業があって、それからソレらの順になる可能性が高いです。


「キサっ! 夕闇デートだと人をぬか喜びさせといて、散々人を空気扱いするなっ! そろそろ止めないと……襲うぞ」


 まだ明るいうちに寮を出て、屋敷に付いていれば問題ないと、キサは思っていたのですが、何故か1人で歩くのは危ないだろうからと、キサのお供に1号もといヒタカが、呼ばれてしまっていたのです。



 しばらくこの広場の道を歩くので、キクスお兄様と会う前に、ヒタカと対話するのもいいかと、キサは口を開きます。


「襲ってもいいが、そちらから私がもらうのは種だけで。私からそちらに渡せるのは、私自身の体だけだ」

「どこがどうなって、そうなった? キサはまだ俺どころか種馬の存在自体、いらなさそうだと思っていたんだが?」


 キクスお兄様に、このまま当主でいてほしいと言うのは、これからなのだが、この件に関しては受け入れられるだろうと、キサはヒタカに答えます。


「ほんの少し、伝えたいと思う気分が早まっただけで、基本部分は変わらない。お兄様にはこのままウーノ家当主に居続けて頂く。種付けに成功して私の夫になろうが、次期当主の父になろうが、そちらにはウーノ家の権限を与えない」


「ハッキリ言うなぁ」

 ヒタカは肩を竦めるだけで、キサの言葉に不満を表す事はありません。


「しかしまぁ俺を信頼してもらえたと、良い方にも解釈するべきか、これは」


 キサは歩く速さを緩めず、そのままただ頷きました。

 その瞬間、ヒタカの足だけが止まります。


 少し遅れて追い付いたヒタカが、キサの横に並んで来ました。


「そうあっさり、頷かれると、どう反応すればいいか分からないもんだ」

「普通に喜べばいい」

「そんなものか?」


 どうやらヒタカは、キサが肯定するとは思わなかった様です。

 悪い奴認定され続けるよりは良いはずだが、何が問題なのやらとキサは呆れます。


 少々、面倒臭い性質なのかも知れない、特に言葉の遣い方が……。

 先程キサが頷いた時、ヒタカの表情に喜びが混ざっていた事を、キサは見逃していなかったのです。





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