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ぱらぱらと夢物語  作者: きいまき
24/34

事件は突然

 ごぼり。


「ここは一体? 周りは水か……っ?」

 水だと分かった途端、キサを息苦しさが襲います。


 何とかしようとキサが焦ると、ソファーの上で目を覚ました自分を自覚しました。



「……夢か」

 前触れも何もなく突然、キサは水中に沈められた白中夢を見たようです。


 直後、寮内に非常ベルが鳴り響きます。


「何だ?!」

 非常ベルが鳴るなど、キサが知る限り、寮が魔力吸収限界状態に陥った時ぐらいです。


 それも3年前の事件があってから、魔力の制御に不安定な子供達が通う学園は、優先的にシステム改新が行われ、寮も同様なため、同じく改新したばかりです。

 それなのに非常ベルが鳴るなど、よっぽどシステムに負荷が掛かっているのでしょう。


「どこだ?」


 ゆっくりキサは周りを見渡します。

 窓の外からは、寮内から逃げ出したらしい、寮生達の声が聞こえてきますが、そちらではありません。



 気になる方に歩いていくと、入寮からこれまでの疲れを放出するがごとく、熱を出して寝ているはずの、ヨズミの部屋に自然、キサの足は向かいます。

 部屋の前には全身びしょ濡れで、水を滴らせながらも、扉を叩き、開けようとするタイーの姿があります。


「くそっ」

 しかし、堅く閉ざされたままの扉に、タイーが悪態を吐きました。


「何があった、タイー?」

「……姫。分かりません。急に水が溢れて、部屋から追い出されたと思ったら、このザマです」


 更にタイーは扉に体当たりを咬ましましたが、全く開く気配はありません。

 と、なれば。


「こういう場合は壊してもいいのだな?」

「う~。まぁ、……そうです」


 魔力をぶつけるぐらいしかありません。

 一旦は条件反射で、扉の破壊を躊躇ったタイーでしたが、すぐに遠慮なくやっちゃって下さい、な方向に固まった様です。


「中にナニかが入り込んでいるな」

「やはりそうですか」


 今回の非常ベルは部屋の中でヨズミが暴走したせいで、起きた事ではありません。

 部屋の中にはもう1つの気配があります。


 しかも人間ではない。

 ソレらの類、しかも大物級。

 その存在だけで、寮のシステムが非常ベルを鳴らしたほど。


 御母様とは全く違う存在感を放っていますが、御母様みたいに大きな存在だとキサは思います。


 ウーノ屋敷ほど強固ではないにせよ、学園都市内もそれなりに守られているはず。

 なのに、スルリと結界内に入って来るところも同じです。


 いや。

 悪いモノではないからこそ、関係無いタイーを部屋から出した可能性もあります。



 キサと同じく異常を感じたらしい、マサウとアリナも扉前に集まってきました。


「手伝いはいるか?」

「1人で大丈夫だ。それよりマサウ、私の力が周囲に及ばないようにしておけ」

「はいはい。仰せのままに、キサ姫」


 その返事にカチンとしますが、自分の力による被害はマサウが請け負ってくれたので、最小限に収まるだろうとキサは思いました。

 不本意ながら、長年マサウにキサの力が防がれて来たからこそ、持ちえた感情です。


「扉を壊しても、水は溢れない……とは思うのだが」

「もう、仕方ないわねっ。溢れた場合には、働いてあげるわ。感謝しなさい」


 嫌々ながらも、アリナの瞳はその口調を裏切って好戦的。

 実に頼もしいです。

 安心して力を振るえます。


「ありがとう。では行く」

「姫。ヨズミをこちら側に留めて下さい。姫も、引き摺り込まれない様に……!」


 タイーのそれは、魔力の籠った言葉ではありませんでしたが。


「了解した。心する」

 なぜかキサはそうした方がいい気がして、タイーの言葉にしっかりと応じ、水の中へと特攻しました。





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