突撃しよう、そうしましょう
高等学園に入寮してから、未だにキサはポポと会えていません。
正直今までも、毎日ポポが姿を現していたわけではなかったし、会わない間もポポについて、ふと思い出す事はありましたが、何かあったのか? という心配はしていませんでした。
けれど今キサはポポと会えない事が、かなり気に掛っています。
それでもただの勘ですが、キサはポポが1号と共にある気がしていました。
1号に縛られ、自由に動けないようにされているのでしょうか?
どうにもこうにも、気になって仕方なくなったキサは、ポポを探し始める事にしました。
どんな状況であれ、ポポの現状さえ確認する事が出来れば、気持ちが落ち着くはずだとキサは思ったのです。
キサが今分かっている手掛かりは、1号だけです。
ポポという名前を知っている1号は、少なくともポポと何かしら、関係があるに違いありません。
でも問題が一つあります。
ポポと関係があるに違いない1号について、キサに分かっている事が少ない事です。
唯一確実に分かっているのは、治安部隊に所属しているという事だけでした。
演習の時を除くと、治安部隊の普段の職場が、魔法使いの塔なのは分かりますから、思い立った日が吉日と、今すぐに向かう事にしました。
「姫ちゃん、ちょっとお待ちなさいっ。1人でどこへ行くおつもりっ?」
「魔法使いの塔へ」
アリナに小走りで駆け寄られ、足を止めたキサは答えます。
基本、キサは攻撃的な性質です。
それが動作にも、そのまま表れているのか、歩くのも普通女子より早いです。
「塔へ? それにしても随分と、険しい顔をしているじゃない。まさか、お仕事じゃないわよね、姫ちゃんだもの?」
「私用だ」
「私も付いて行くわ」
魔法使いの塔が、1号の仕事先らしい。
突撃すれば、ポポに会えるかも知れない。
という事を、キサは1号の事を始めからアリナに説明しました。
「だからアリナにはつまらないと思うのだが……」
「まぁ、そうでしょうね。でもウーノ家の姫の夫候補となれば、充分私の実家への報告対象者になるのだし。私も行くわよっ」
そんなアリナの勢いに背を押されつつ、再びキサはアリナに合わせ、速度を抑えつつ歩き出します。
領線に乗って、塔近くの停留所まで行く事にしました。
魔動車に揺られながら、キサはアリナに尋ねます。
「報告対象者なんてものがあるのか、アリナ?」
「手当たり次第に種馬を集めて、ハーレムを作り、その種馬の後ろにいる家や組織を、完全に支配下に置く。それに失敗したら、殲滅。そういう事をし兼ねない気性だと、思われているのよ姫ちゃんは」
「……そんな風か、私は」
自分って一体何者だろう、とキサは唖然としてしまいます。
「そうだわっ。そんな姫ちゃんを監視しなくてはならないから、急いで孕んで帰るのは尚早だという名目で、実家からの矢の催促を拒否したっていいわよね」
何やら、アリナは真剣に検討している様子です。
ここまで学園に残る事を検討するという事は、故郷に帰ると勉強できなくなるのかもしれません。
実はアリナは、その言動に似合わず学ぶ事が好きです。
日頃から予習復習を欠かさず、更に深くと、アリナが日々勉強を続けている姿勢を、キサは見ていましたから、出来れば協力したいです。
自分に対する噂や、随分過激な人物像が、役に立つなら……まぁいいか? とキサは思い直す事にしました。
「報告目的で、決して心配だからではないの。ささ、さぁっ! 降りるわよっ」
きっと知らない間に、キサ自身とキサの周辺について、実家に報告しているのは、アリナだけではないのでしょう。
こうして報告している事を明かしてくれたアリナはきっと、キサに対して良心的です。




