空の木の夢
ここ最近の周囲の状況や、更には暴露話を聞いて、少し疲れたキサは深くベットに沈み込みました。
口から漏れた、吐息と共に。
「御母様」
「いかがした、吾子?」
あたかも呼び掛ける前から存在していたかの様な、御母様からの自然な応えに、キサは心が温かくなります。
「うむ~。少々会わなかっただけでは、やはり小さきままじゃのぅ」
もう何年も経っているのに、御母様にとっては少々なのだなと、実感する言葉です。
でも、研究所のみんなと同様に、御母様にとっても自分はいつまでも小さいままなのだろうと、キサは可笑しくなりました。
「御母様。私はこれ以上、ほとんど背は伸びない」
「おや」
「もし私がドラゴンだったなら、御母様と一緒に大暴れしたのに」
「……妾は暴れてなど、おらぬぞ?」
もしドラゴンの子として生まれていたならば。
子でなくても、兄弟か親戚、とにかく御母様と近しい存在であったなら。
そうキサは思います。
「どこまでもどこまでも一緒に、連れて行ってもらえた?」
「むろんじゃ」
至極当然と頷かれてキサは安堵し、いつかの様に撫でられながら眠りにつきました。
御母様と、それからいつの間にかたくさん集まっていた、ソレらとも一緒に空を飛び回り、辿り着いた空の上で、キサは雲の種を植えました。
どんな芽が出るのだろうか?
どれほど枝葉は広がるのか?
きっと花が咲いて、実だって実るはず。
冷たい風、熱い風、涼しい風、暖かい風が集まって、雷雲も竜巻さえも飾りに見える程の大きな、とっても大きな木。
空飛ぶ全てのものが、翼を休める場となればいい。
「この空の木の、お世話役になりたい」
そう言ったキサに。
「リュウになりたいんじゃ、なかったのか?」
「ン~、いいんじゃな~い」
「どこでどう生まれようと、変わりナシ」
「じょうろ、持って来たよ~っ」
なんて風に返される、という夢を見ました。




