表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぱらぱらと夢物語  作者: きいまき
20/34

暴露②

 今一つ釈然としないキサを横目に、アリナが口を挟んで来ます。


「私ね、適当に男を見繕って孕んで来いって、学校はここしか許してもらえなかったわ。そのまま入寮して、中等部でもタイーとマサウと同じ班でね。私、ウーノ一族と同じ班になるように、親がねじ込んだと思っていたの。

 だからやっぱり納得いかなくて、部屋にずっと籠っていたわ。ご飯はタイーが運んでくれたし。終いには私、寮内蒸し風呂にしちゃった。

 マサウだって、今じゃここにいるのが当然な顔してるけど、結界張って内外接触不可な状態にしたのよ」


 その話は本当の事らしく、タイーが横で頷いています。

 中等部の入寮時がそんな状態だったなら、確かに口だけで済んで、誰も問題行動を起こさなかった今回の入寮時は、タイーにすれば、高等バンザイな気分になるというものです。


 アリナにばらされたせいでしょう、マサウが当時を思い返します。


「キクス様に魔力はないはずだから、俺が勝手に気圧されて、寮に張ってた結界を解いたんだろうが、食い破る勢いで入って来て、ウーノのシステム壊す気かって爆発されてさ……マジ震えた」


 震えたと言いつつ、結果的にキクスお兄様が駆け付けてもらえたからか、マサウは嬉しそうにキサには見えました。


「あら、そうなの? 私には、せっかく実家から離れているのだから、適当に報告を入れつつ好きにしてみればいいよって、諭して下さったのに」


 きっと、それだけで話を終わらせておけば、美談にも聞こえたのでしょうが、残念ながらアリナの話は続きます。


「よくよく考えたら、女は妊娠すればそれで良し。で、あとは帰って産めば、両方の血を引いた子供の出来上がりだけど。男は妊娠した女ごと、お持ち帰りしないといけないものね。

 だからこんな寮だけど、いきなり強姦されるって事はほぼないから、姫ちゃんも安心して大丈夫よ。もちろん、お持ち帰りした~いって思う様な、男が出来るのが一番なのだけどっ」


「「……」」

 一気に告げられた内容に、ヨズミはいつも通り真っ赤になって口をぱくぱくとさせ、キサも目を瞬かせました。


「……アリナ、ぶっちゃけ過ぎだ」

「あら? そうだったかしら?」


「……俺もついでに言っていいか?」


 今度はどんな話が飛び出すのやらと思いつつも、キサは頷いてマサウに先を促しました。


「中等の時もそうだったが、同じ班内の奴とは滅多に恋愛関係にならない」

「そうなのか?」


「理由は分かる様な気もするが……。お前もお前なりに実体験してりゃ、何かしら思う事が出て来るんじゃないか?

 とにかくお偉方の思惑はどーであれ、キクス様が俺とお前の、その手の関係を期待してるわけじゃない。というかさぁ、お前、ヒタカさんはどうすんだ?」


「降りるんじゃないか? もう時間の問題だろう」

「そうとは聞いてないぞ?」


「……」

 そういえばキクスお兄様を間に挟まずに、マサウと苛立たずに話すのは始めてだと、キサは思いました。


「マサウ。私はウーノの当主になるつもりは全くないが、学園都市がなくなってもいいとは思っていない」

「どういう事です?」


 呟くように言ったキサに、タイーが問い掛けて来ました。

 なのでキサはタイーに対しても、今度はしっかりと答えます。


「タイー、私もウーノを離れては生きていけないんだ。けれど私は全く当主になる気はないし、当主に向いてないとも思っている」

「だが、ウーノがウーノである為に、お前は絶対必要だ」


 ちゃんとキクスお兄様を敬っているらしいマサウまでが、こんな風に思っているなんて……とキサは不思議で仕方ありません。


「今までウーノはウーノだっただろうが。キクスお兄様が当主で何故いけない? 私はキクスお兄様が当主を辞めさせられて、ウーノから出て行かれるなら、一緒について行くからな」

「姫っ!」


 タイーが声を上げますが、キサの根本は決して揺らぐ事がないのです。


「私は、キクスお兄様が側に居て下さるならそれでいいんだ。もしお兄様が当主であり続けて下さるのなら、自分に出来る事は何だってするだろう」

「……何でもするって?」


「だから、種馬1号も認めている。ちゃんとウーノが存続する為に、子は作ろうと思っているんだよ自分は」

「本当に割り切ってるわよね~、姫ちゃんは」


 アリナはそう言ってくれますが、残念ながらそんなに、感心されるような事ではありませんでした。


「ここまで割り切ったのは、そう前じゃない。中等部に入学しなかったのは、キクスお兄様から離れたくなかったからだからな。無理やり入寮させられていたら、きっと中等部など潰していただろう」

「寮じゃないの?」


「中等部がなくなれば、通わずに済むから、寮になど入ってなくてもいいじゃないか」

「キサちゃん頭いい~」


 こんなキサの考えを褒めてくれるのは、きっとヨズミくらいでしょう。


「ホントは高等部にも来たくなかったんだぞ。キクスお兄様が言うから仕方なく、だ。それに、アリナに会ってみたかった」

「私?」


「中等部でウーノの街を、あわや機能不全にさせそうになるほど、魔力を暴走させた女の子なら仲良くなれるかも、と……」

「……言いがかりは止めてもらえない?」


 いえ、事実です。

 それに、2人が寮を魔力吸収限界状態にしてくれたお陰で、魔動車の動力源は進化できたのですから。


 感謝する、とキサは心の中で付け加えました。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ