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ぱらぱらと夢物語  作者: きいまき
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暴露①

 逃げ出した後ろ姿を呆然と見送るキサに、マサウがしみじみと言ってきます。


「……お前さ」

「何だ?」


「ヒタカさんにもそうやって、迫ったわけ?」

「ヒタカ……? あぁ」


 誰の事かと思いましたが、種馬候補1号です。


「脅迫などしてないぞ?」

「似てるのは外見だけかと思ってたが、やっぱ兄妹だな。いきなり全力で爆発しようとするとこが……」


「爆発? お兄様が?」


 まるで想像出来ず、つい尋ね返してしまいましたが、その答えはマサウの方が、キクスお兄様について詳しいと認めるみたいで、しかもキサにとっては、また疎外感を感じるだけの内容かも知れず、本当に聞きたいのか自分でも分かりません。


 そう思って悩んでいると、ヨズミが呼び掛けて来ました。


「キサちゃん、とりあえず班に帰ろ?」

 その言葉にこくりと頷き、キサはその場を後にします。



 いつもならアリナがお風呂から出て来た後は、班の共用スペースで勉強会が始まるのですが、残念ながら今日は、タイーのお小言のターンでした。


「姫、湯上がり姿を凝視する、マナー違反野郎にイラついたのは分かりますが、暴走だけはやめてください」

「すまない。なるべく魔力制御を心がける」


 暴走しようとしたのは事実だったので、キサは大人しく頭を下げたのですが、アリナとヨズミがすぐに擁護してくれます。


「姫ちゃんはマサウが来なくたって、暴走したりしなかったわよ」

「僕の助けがなくても、キサちゃんはちゃんと1人で、気持ちを静める事だって出来た」


「……」

 とても有難く、暖かい気持ちになって、左右に座る2人にそれぞれ目で感謝を伝えます。


 それを見るタイーは呆れた様子です。


「正直、アリナがそこまで姫に、ハマる様になるとは思ってなかった。同じ班になる前となった後とじゃ、全然違うな」

「はっ、はまってなんか、いないわよっ、別に。そういうタイーだって、実際の姫ちゃんは想像とは違うと思っているでしょうにっ!」


「それは否定しないけどな。……が、姫が当主の仕事をうっちゃって、マサウに押し付けてるのは事実だろ?」

「ウーノの当主はお兄様であって自分ではない。それに、マサウに仕事を押し付けてなどいないはずだが?」


「そうですね。今はそうです」

「???」

「姫、ウーノの当主の勤めは、姫が思っているより広範囲に渡っています。マサウと一度話し合って戴きたい」


 騒動を起こした事に、少し引け目を感じたキサは、珍しく自室に引っ込まず、外にも出て行かずに、班の共用スペースに残っているマサウを見ます。


「キクス様はせめて、今は少しでも長く、こいつが自分から興味を持つまでは、ウーノの仕事とは距離を持たせてあげたい、と仰ってる。どの道、後継者問題とか早くも浸からされているしな」


「だけどな、大丈夫なのか?」

「タイーが心配してる事は今のとこ、問題ない」


 2人が何を話し合っているのか、キサにはさっぱり分かりません。

 分かりませんが、何か自分が見落としている事があるというのは、2人の様子から察する事が出来ます。


 それを見出そうとキサが見つめる目の前で、2人の間で何やら合意が図られています。



「……分かった、ならその件は言わない。ですが、姫」

「あ、あぁ?」


「ついでなので言います。これはこちらの勝手ですが、オレはもう骨の髄までウーノ一族の人間です。もう外の世界へ出て行くのは無理、とまでは断言出来ませんが、したくありません。

 だからウーノには存続してもらわないと困ります。姫がどんなに癇癪持ちだろうが、寮をぶち壊そうが、どんな悪癖を持っていようが、とりあえずウーノが存続してくれればいいです」


「……」


「お気に障ったらすみません。でもこれが一族の人間の、大半の意見だと思って下さい。どうかお願いします」

「……分かった」


 自分がかなり良くないイメージを、持たれているらしいというのは悲しかったし、タイーの言葉に引っ掛かる点もありましたが、今回は自分が悪いとキサは頷きます。


 なぜならキサとて、タイーと同じだからです。

 ウーノの中にしか、居場所がないとキサも思っています。


 ソレら達がいる事が当たり前で、世話してもらう事に慣れ切っていて、きっとキサはタイー以上に、ソレらがいない外ではやっていけないでしょう。

 深く考えなくても、それくらいはキサにも分かっているのです



 ところがキサが素直に頷いたというのに、かえってタイーは不信そうでした。


「姫。姫ですよね、ホントに? ウーノの、キサ姫ですよね? 演技じゃないですよね?」

「え~っと? 多少は猫を被っていると思うが? どうした?」


 もともと、タイーにはいつも、ですます口調で話し掛けられているので、自然とそれに対するキサの受け答えも、丁重な物言いになってしまうのです。


「……。……いえ、いいです。失礼しました」


「ひとまずタイーは納得したが、お前が本気で暴走したら、学園都市が機能停止するからな。絶対魔力の制御は怠るなよ」

「学園都市が機能停止など、大袈裟な……」


 キサはマサウに反論しますが、周りは皆マサウに賛同しています。

 どうすればいいのか、キサは分からなくなってしまいました。





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