居眠り姫と法規の司・8
すっごいやらなきゃいけないことたくさんあって書けねぇや、とか思ってたんですが、
あれ、そもそもこれわたし現実逃避で書いてたんじゃなかったっけ?てことは今書き時じゃね?
と思ったので書きました、こんばんは
母はいつもこちらに背を向けていた。
ヴィンツェンツは母の顔をよく憶えていない。
彼女が自分を見ることはなかったから。
それでも衣食住は問題なく整えられた。
それだけでは人間の心は死んでしまうのだと知った。
おぼろげに記憶にあるのは青い瞳。
ヴィンツェンツの右目と同じ色。
父の瞳も同じ色。
青くて底の見えない空の色。
ヴィンツェンツの左目は茶色だった。
父と母が普通に会話をしているのを見たことがない。
きっとそれはヴィンツェンツが産まれた時から。
諍い会う姿は度々見かけた。
内容はいつもヴィンツェンツのこと。
それなのにヴィンツェンツが姿を見せると、二人は貝のように押し黙った。
時折気まぐれに母がヴィンツェンツの手を引く。
嬉しくてそれについていく。
大抵は馬車にのって遠くへ行く。
母の目はこちらを見ない。
そうして置き去りにされてゆく。
ヴィンツェンツは家を目指して歩く。
衣食住が安全に提供される場所。
戻ったヴィンツェンツを見て母は、「そう」と言った。
父はどこかへ行ってしまった。
母はどこにも行けずに黙る。
かける言葉はなにもないと、ヴィンツェンツの手をまた引き歩く。
もう何度帰っても、「そう」とすら言わなくなった。
いつの間にか母も消えてしまった。
そしていつか父が現れた。
目を見ず告げられた言葉に頷く。
意味も理解せずに頷く。
整えられた衣食住は、変わらずに提供された。
手を引かれる恐怖すら、ヴィンツェンツにはなにかの希望だったのに。
夢も見ずに眠る夜がきて、毎日はヴィンツェンツを置き去りにして明けていく。
なにかを手掛かりに歩こうと思う。
きっと目指す場所は母のいた場所ではない。
会ってみようと思ったのは、話の続きを知りたかったから。
最後に、自分自身を見てもらえた『いねむりひめ』は、その後なにを目指して歩いた?
そんなことが、しりたかった。
****
「よんだよ」
客間に通される途中でヴィンツェンツが呟いた。
ルドヴィカがきょとんとその顔を見上げた。
「読んだ、『いねむりひめ』」
「…きゃああああああああああ!!!」
言葉の意味を理解したルドヴィカはメリッサをぎゅうぎゅうに抱きしめながら逃げた。
関係者以外の読者第一号。
むり、恥ずかしいを凌駕した恥ずかしい。
むり。
残された者は皆呆気にとられた。
次の瞬間ザシャは爆笑した。
****
「…えーっと、わたしはそろそろ往診に行かなくてはならなくて…」
とりあえずのその場しのぎにエルヴィンは逃げに入った。
リーゼロッテはにっこり笑った。
「お仕事のお邪魔をしましてごめんなさい。
お返事をいただけましたら帰りますわ」
「…」
周囲からの恨みや怨念のこもった視線よりも、なぜかエルヴィンはその笑顔の方が怖かった。
「ええと、わたしは貴女をよく知らないので…」
「釣書に書かれている通りです。
それに見合いなどというものは何も知らないところから始まるものでしょう」
「あの、わたしは、そもそも結婚をする気がないのです」
「あらそうですか。
わたしたちきっと気が合いますわ。
わたしも結婚に特になにも期待していませんの。
ほどほどの距離を保ってうまくやっていけるのではないかしら」
「…」
どうしたらいいのこれ。
「それにとてもいいご両親ですのね?どうかよろしくお願いしますと本当に丁寧なご挨拶のお手紙をいただきましたわ。
わたしとっても感激しました、上手くやっていけそうです」
親ー!!!なにしてる親ー!!!
「えっと…と、とりあえず、日を改めて…」
「あら、デートに誘ってくださいますの?」
…え?
「嬉しいわ、いつにしましょう。
そうね、近い内がいいわ。
こちらの研究所は週末はお休みですのね?」
最後の質問を突然振られて空気になっていた先輩医師は「えっうわおい、あ、はい!」と混乱気味の返事をした。
「では今週末にしましょう。
朝の10時に、わたしがこちらまで伺いますわ」
宣言すると、リーゼロッテは立ち上がって風のように去った。
「楽しみにしていますわね?」
残された言葉にエルヴィンは茫然とした。
野次馬たちにまたもみくちゃにされた。
ちょっと最近ユニークPVみてて思ったんですよ
なんか時々ご新規の方が読みに来てくださってるみたいなんですが、
半分くらいの方は5話くらい読んだら脱落していかれるんですね
そりゃ最初の10話くらいはほんとしんどくて現実逃避の極みでスマホぽちぽちで適当に上げてたんだから「おもんね」と思われるの当然だよなぁと(わかってんなら改稿しろよ)
それでも5話もお付き合いくださってほんと感謝しかないですわ
ですのでここまでたどり着いて今ここを読まれているあなたに言いたいですね
おめでとう、あなたは選ばれし勇者だ!!!




