177 国の代表
レニーラが指揮するクレンタラ号がくるまで波消し壁を作ることにした。
とは言ってもこの付近に岩山はないので、埋め立てすることにして、くの字の形にして波を消すようにすることにした。
開拓予定地の樹を切り倒して海に突き刺し、仕切り板的な感じで海へと伸ばしていった。
土を運ぶのはミドロア陸軍大将(昔、探索隊としてマイノカまでやってきたヤツね。なんかいつの間にか出世してた)に任せ、手の空いてる兵士に運ばせた。
「煉瓦やコンクリートも足りないな」
毎日のように煉瓦は作ってるらしいが、家に使ってるようで港までは回せないようだ。
毎日えっちらほっちら埋め立てし続けてると、見張りの者が船が近づいてくるのを告げた。
「狼煙を上げて注意喚起しろ」
前方障害物有り。注意せよ。って狼煙の上げ方があるそうだ。
先端に立ってクレンタラ号を迎え、謎触手を振って歓迎した。
ゆっくりと風を受けて港へと入っていき、ミドロアに無理するなと伝えてあとを任せた。
港に入ればロープを使って接岸させていき、板がかけられて船員たちが降りてきた。
「ゴゴール族も乗っていたのか」
そう多くはないが、いっぱしの船乗りの気配を纏っている。ゴゴールは他文化に慣れるのが早い種族なのかもしれんな。
「ご苦労さん。よき航海だったか?」
「ああ。マイアナの軍船と遭遇して戦い、戦利品を得られたよ」
なんてことを笑いながら言うレニーラ。おっかない女だよ。
「その割りには船に傷はないな?」
「それは練度とゴゴール族の身体能力の違いだな。人には飛び移れない距離から敵艦に飛び移って制圧したんだからな」
「なるほど。お前たち、よくやった」
飛び移っただろうゴゴール族の男たちを褒めてやると、誇らしく胸を張った。こいつらも認められることを誇りに思う種族だったな。
航海の疲れを癒してもらってから敵艦との戦いの話を聞かせてもらい、戦利品を見せてもらった。
「根こそぎ奪ったものだ。皆殺しにしたのか?」
「いや、軍人は殺して船員は生かした。敵艦はミドットリー島に停泊させて掃除をさせている」
「四番艦となりそうか?」
四番艦予定の艦はまだ完成しそうにもない。鹵獲したマイアナの艦が四番艦になりそうだな。
「ああ。オールダーと話をしてミドットリー島の護衛艦とすることにした」
「オレは乗れそうか?」
「中型だからレオガルド様は無理だな」
それは残念。オレが大陸を渡るのはまだまだ先のようだ。
「それで、次は大陸間航行ができそうか?」
「ああ、問題ない。十日くらい休んだら出航しようと思う」
「あちらに売りつける品はあるのか?」
先立つたものがなければあちらも話を聞いてくれんだろうよ。
「コミーの革製品とベッケラーの羽毛、ミーノの毛皮をメインに持っていこうと考えている」
「ミーノ? よく毛皮なんてあったな」
ミーノとは金色猿で、サイズはゴリラくらいある。オレには雑魚だが、ゴゴールでも捕まえるのは大変だろう。
「ミディア様がコルモアにくるときによく狩ってきてくださります」
とはセオル。あいつ、そんなことしてたんだ。
「ミーノは防寒着としては優秀なので、諸島連合体でも人気は出るでしょう」
諸島と言ってたから暖かいのかと思ったら冬はあるらしい。
「そうだ。レオナール国として友好の品を贈るか。まだ積める余裕はあるか?」
「物によるよ」
確かにそうだ。なので、持ってきてからもう一度話し合うか。
レブとチェルシーを連れ、以前、ティラノサンダーを狩った場所へと向かった。
「お、またいたよ」
「あれが前に言ってたティラノサンダー?」
「ああ。だが、ちょっと小さいな。精々Aランクくらいか?」
サイズもSSランクの半分くらい。五メートルもないから子供か?
「チェルシー。狩っていいぞ」
Sランクになったチェルシーには余裕だろう。
「チェルシー。いくよ!」
レブがチェルシーに跨がったままあっさりと狩り、美味そう食い出した。
「頭蓋骨は噛み砕くなよ。諸島連合体への土産にするから」
SSランクの頭蓋骨をと思ったが、土産とするならこのサイズがいいのかもしれんな。
首と爪を持ち帰り、頭な肉を剥いでもらい、海にしばらく浸けておく。三日もすれば綺麗な頭蓋骨が出てくるだろう。
「パラゲア大陸にはこんなバケモノがいるんだね」
「こんなものはまだ雑魚だ。ヤトアでも余裕で狩れる」
今なら五撃くらいで倒せるんじゃないか? チェルシーも首に噛みついてポッキリやったくらいだしな。
「そうか。レオガルド様がいなければわたしたちは生きてなかったってことか」
「まあ、そう卑下するな。人間の技術のお陰でレオナール国が発展できている。他種族同士、仲良くやっていけばさらなる発展ができるんだからな」
種族間戦争が起きたらそれも塵と化す。きっと未来は憎しみに満ちることだろう。そうならないためにも他種族が暮らす国があることを世界に知らしめる必要がある。それはきっとレオナール国のためにもなるはずなのだからな。
「レニーラ。レオナール国の代表として頼むぞ」
「ああ。その名誉、任されよう」
謎触手を伸ばし、レニーラの肩を叩いて激励した。




