172 平和な時間
ギギとの甘い日が続いている。
とは言っても、エサを狩りにいかないとならないし、ギギにも仕事がある。なのでそう長く一緒にはいられないが、見守ることはできる。この体でついていけるところはついていった。
今日も今日とてギギの一日は早く、太陽が昇ると同時に目を覚まし、巫女たちと神殿を掃除し始めた。
巫女たちも神殿暮らしが慣れたようで、手順や持ち回りやができており、オレの毛繕い担当も決まっていた。
なにやらオレの毛繕い担当はギギが選んだようで、上級巫女としての地位になってるようだ。
巫女に上も下もないのだが、人があつまれば嫌でも上下はできるもの。皆仲良くなってことはできない。なら、最初から作っておいたほうが面倒もないだろう。
巫女たちにレーキで毛繕いしてもらい、ギギを見守っていると、レブとチェルシーが帰ってきた。
「レオ様!」
「ガウ!」
せっかく毛繕いしたのにワシャワシャにされてしまった。
「お帰り。レブ。チェルシー」
こちらもレブとチェルシーを謎触手でワシャワシャ返し。オレは舌で愛情表現しないからな。
存分にワシャワシャニケーションを済ませ、これまでのことをレブに聞かせてもらい、チェルシーの舐め回わされる。べちゃべちゃになるから止めて。
午後からギギも混ざり、レブの話を聞き、夜の狩りへと出かけた。
二日くらいレブとチェルシーに引っつかれていると、今度はミディアとライザーが帰ってきた。
「ふふ。モテモテですね」
チェルシーとミディアからの舐め回し攻撃。びちゃびちゃを通り越してべちゃべちゃである。
好かれるのは嬉しいが、愛情表現が激しすぎる。オレはもっと大人しい愛情表現が好みです。
二匹からの愛情表現が冷めたら湖に向かい、水浴びをしてサッパリさせた。
浜辺に上がり、風で水を飛ばしたらギギと巫女たちにレーキで毛繕いをしてもらった。
「……平和だな……」
時間がゆったりと流れていくこの感じ、心を穏やかにしてくれるぜ。
ギギにレーキで引いてもらいながらウトウト。春から夏に切り替わる太陽がなんとも心地よい。
「師匠。だらけすぎじゃないか?」
と、ヤトア家族がやってきた。
「守護聖獣にも休息は必要なんだよ。お前はちゃんと嫁と子の相手をしてやれ。老いてから捨てられても知らんからな」
「変な未来を言わないでくれ。言われなくともしばらくは嫁と子といるよ」
「そうしろ。オレも秋までは動かないから」
同盟航路のことやミクニール氏族の子ととかあるが、ギギとの甘い生活ね前ではどうでも……よくはないが、先送りする。国創りも今までの苦労もギギのためにやっていることなんだからな。本末転倒なことはしないわ。
とは言え、ゼルとの交流もしないと周りからの評判が悪くなる。たまにゼルの城へと赴いてゼルとゼルの家族と親交を深めたり、ジュニアを連れて湖水浴をしたりする。
「レオ様。皆でピクニックにいこうよ。湖の反対側までさ。熊が住み着いてたよ」
「熊か。そりゃいいな」
「いや、ピクニックって距離じゃないだろう。一日がかりの移動だぞ」
ゼルが珍しく突っ込んでくる。お前のキャラ、どんなだったか忘れたわ。
「オレらがいたら一日の距離など問題ない。皆で、は無理だから二回に分けるか」
まずは神殿チームが向かい、泊まるところの整備をして三日ほどキャンプ。二回目は王族チームってことに決めた。
準備に二日かけ、湖沿いを歩いて反対側へと向かった。
銃士隊によって細い道は築かれているが、大人数の移動には適してないので木々を倒し、道を広げていった。
休み休みながら暗くなる前には反対側に到着。その日は火を焚いて休み、次の日からピクニック──余暇を楽しむための準備を開始する。
と言ってもコテージなどを建てるわけでもない。今日は毛皮を敷いて満点の星空の下でキャンプファイアーをするくらい。
なにが楽しいの? とかマジで尋ねられたら答えに窮するが、皆で集まって雰囲気を楽しむものなんだよ。
肉が食える者は肉を食い、食えたないものは芋を食い、ブブルの酒(葡萄酒)を飲む。オレら獣組はミディアが狩ってきた猪を食う。
一人の巫女が歌い出す。
オレの鼻歌を聞いたギギに移り、それが巫女に移って歌になったらしい。
どこにでも才能がある者はいるもので、ギターのような楽器を作り出し、それを使いこなせる巫女も出てくる。そしてなぜか巫女の嗜みとなって、オレに捧げる聖歌となっちゃったりする。
まあ、それも文化であり人の心を養う糧でもある。堅苦しくならないていどに発展していけばいいさ。綺麗な歌声を聴くのも悪くはない。
腹一杯になり、巫女たちに毛繕いをされながら巫女の歌声に癒される。来年もこんな時間がくるようレオノール国を発展させていこう。ここはオレとギギの故郷でありオレたちの居場所なんだからな。
そう胸に誓い、この幸せなときを過ごした。




