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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
発展期編

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164/225

164 レイギヌスのナイフ

 気がついたら雪の中にいた。


「……腹減った……」


 空腹に腹が鳴った。


 霞む意識とぐるぐる鳴る腹で気持ち悪い。こんなの初めてだ。いったいなにがあったんだ?


 濃い血の臭いに段々と記憶がハッキリとしていき、意識を失う前、ホワイトなキングコングを貪り食ったことを思い出した。


「……いったいなにかま起きたんだ……?」


 周囲を見回すと、ホワイトなキングコングの血が飛び散り、かなり悲惨なことになっている。


 ギュルギュルと腹が鳴る。


 不可思議現象は一旦置いとくとして、まずはこの空腹を静めるとしよう。


 オレとティラノサンダーの戦いやホワイトなキングコングの狩りに弱いモンスターや獣がいなくなっており、半日近く空腹と戦いながらやっと赤茶色の大猪を発見。サクッと狩って腹を満たした。


 サイズ的にオレと同じなのにまるで食った気がしない。この熱い体温に持っていかれる感じだ。


「……もしかして、体が変化してるのか……?」


 どこぞのポケットなモンスターのように進化してるのか? Sランクのティラノサンダーを食ったことで?


 いや、前回ティラノサンダーを食ったときはそんなことなかったぞ? いや、ちょっと待て。ティラノサンダーを食ってから雷を使えるようになってなかったか? え? あれって進化してたってことか?


「……他のを食ってもこうならなかったってことは、同系等種を食うと進化する、ってこ、なのか……?」


 真実はわからないが、進化か変化をしてるのは間違いない。この空腹は細胞変化のためにエネルギーを要しているってことだろう。それなら食わないと不味いことになりそうだ。


 赤茶色の大猪は群れを率いていたのですべて平らげるが、それでも腹が満ちることはない。エネルギーかかりすぎだろう。


 満ちることのない腹を鳴らせながら獲物を探し回り、見つけては食らい、探し出しては食らい、逃げるのを追いかけて食らった。


 二日ほど駆け回ってやっと腹が満ちた。満ちたはいいが無駄に時を過ごした。ティラノサンダーを食ってから何日過ぎた? 三日? いや、四日は無駄にした感じだ。


 橇を探し出すのに半日くらいかかってやっと発見。急いで装着して駆け出した。


 橇が装着できたってことは体のサイズに変化はないってことだ。ってことは中身、性能がアップしたってことだろうか? 


「人化とかできたらいいのにな」


 ファンタジーっぽい世界ならそんな能力が欲しいところだが、そう都合はよくないだろう。駆けるスピードはアップして、空を駆けちゃったりしてますよ!?


 ハァ? いやいやいや空を飛ぶ? なにがどうなれば空を飛べるように進化する? 翼なんて生えちゃいないし、武空術をマスターした覚えもないぞ!


「か、風か? 風を出す力がアップしているの、か?」


 いや、霊力がアップしてるのか。風の呪霊が今まで以上に簡単に出せている。


「十トン近くある体を浮かせるだけの風を出せるとか、進化ってよりレベルアップだったか?」


 まだ空を飛ぶ──いや、空を駆けるのに慣れてないからか、今はまだ数キロがやっとだが、障害物がないとことで二日でコルモアへと到着できた。


 ……プラマイゼロって感じだな……。


「レオガルド様!?」


 突然オレが現れたことに驚くコルモアの連中を静め、セオルを呼んでもらった。


「レオガルド様、ミクニール氏族とやらの地にいってたのでは?」


「いってたよ。食料を運びに戻ってきた。すまないが急いで塩とイモ、豆とかを橇に載せれるくらい用意してくれ」


「わかりました。すぐに集めさせます」


 部下に集めさせている間にミクニール氏族の地でのことやティラノサンダーのことをセオルたちに語った。


「……レオガルド様がきてくれなければティラノサンダーに襲われていたのかもしれないのですね……」


 確かにSランクのティラノサンダーにすればあそこからコルモアの距離など苦ではあるまい。エサを求めて移動していたのならコルモアにきていても不思議ではないな。


「レブたちはきてないのか?」


「ミディア様は冬になる前にきました。レブ様たちはマイノカにいると思います」


 冬だからと言ってモンスターの移動がないと思い込んでいたオレの失敗だな。フジョーを片付けられたら海外線も見回らないとダメだな。


「レオガルド様、霊力が上がりましたか?」


 呪法管理人のレミア(久しぶりだね)がオレのなにかを見て声をかけてきた。


「わかるか?」


「はい。以前見たときより数倍膨れ上がってます。レオガルド様でなければ失神しているところです」


 そんなにか。まあ、あれだけ食えば納得はいくけどな。


「ああ。ティラノライザーを食ったら体が熱くなって恐ろしいまでの飢餓状態になった。抑えるのにモンスターを二、三十匹は食ったよ」


 あそこら辺の凶悪なモンスターは食い尽くしただろうな。獣もだけど。


「だ、大丈夫なのですか?」


「今は落ち着いたから大丈夫だ。まあ、力が増したことで加減に戸惑っているがな」


「そう言えばレイギヌスのナイフはどうなった?」


「一本はできました。二本目は来年になると思います」


 手間がかかるとは言ってたが、そんなにかかるもんなんだな。


「その一本、持っていきたいんだが可能か?」


 フジョーに通じるか確めておきたいからな。


「はい。すぐに用意します」


 謎触手に利き手(利き触手か?)はないが、右のほうを多く使っている感じがする。右のナイフと交換するか。


 運ばれてきたレイギヌスのナイフは嫌な気配はするが、以前ほど嫌ではない。モヤ~っとしたていどだ。我慢できないほどではない。


「大丈夫なんでしょうか? ミディア様は気持ち悪いと近づきもしませんでしたが……」


「おそらく霊力の違いだろう。ミディアが嫌がるならAランクモンスターはよってこなくなるな」


 モンスターには効くだろうが、この気配に勘づかれて逃げ出してしまう。狩りのときは外さないとダメだろうな~。


 食料が集まり、橇に積み込まれる。


「早くても次にくるのは夏になるだろう。それまで頼むぞ」


「はい。レオガルド様がきたことはマイノカに伝えておきます」


「頼む。ギギには早く会いたいと伝えてくれ」


「わかりました。お気をつけて」


 頷き一つして、ミクニールの地へと向かった。

 

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