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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
発展期編

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155 冬越えの準備

 バリュードさえいなければミクニール氏族の者たちはあっさりて食べるものを見つけてしまった。


 まあ、フジョーからも離れたのでバリュードの臭いが濃くなってきたが、オレの臭いを嗅ぎ取ったようで逃げていった感じだ。


「意外と食べれるものがあるんだな」


「バリュードが住み着くまではここが我らの狩り場でした」


 ミクニール氏族は芋虫(小さいヤツな)が主食、とまではいかなくてもよく食べるようだ。


「豊かなんだな、ここは」


 他にも枇杷のようなものやゴノも生えていて、腹一杯食べてみていた。


 食料を集めながら移動し、十日過ぎた頃、アルプスのような山が見えてきた。


 ……この大陸にも山脈があったんだな……。


「この洞窟の奥に逃げたミクニールの者が住んでおります」


 ゼルム族が辛うじて通れるくらいの洞窟で、その奥には地底湖があるそいだ。


 他にも地底湖に続く洞窟はあるようだが、そちらにはバリュードがいるそうで使えないそうだ。


「話が纏められたら明日の朝にこい。その間、オレはエサを狩ってくる」


 ミクニール氏族の他に少数の氏族も集まっているかで、かなりの数が隠れて暮らしているようだ。


「はい。わかりました」


 洞窟の奥へ消えていくのを見送ってからエサを探しに向か──う前にゴルオの群れに遭遇してしまった。


「お前ら多いな」


 バリュードがいなくなったからか、あちらこちらにゴルオの群れがいる。探す手間がなくていいが、さすがに別のものが食いたくなるぜ。


 まあ、贅沢は言ってられないとゴルオを狩って腹を満たした。


「てか、この角、研いだら剣になるかな?」


 角は食えないので残ったが、ゼルム族が剣として持つにはいい長さをしていた。


「時間もあるし、作ってみるか」


 ナイフは装備してきてるので、謎触手を使ってゴルオの角を削っていった。


「なんかいい感じになったな」


 武骨な形だが、強度や切れ味はなかなか。剣として申し分ないだろう。


「ゴルオの鱗でもなにか作れるかもしれんな」


 新たにゴルオを狩ってきて、ナイフで鱗を剥いていき、舐めて肉を削ぎ落とした。


 爪で鱗を削って形を揃え、紐を通せる穴を開ける。


「獣の体でもやろうと思えば結構細かいことまでやれるもんだな」


 オレの体、摩訶不思議。


 熱中してたら辺りはすっかり暗くなり、明日のためにも眠るとする。


 大陽が昇るとともに目覚め、皮を剥いたゴルオを食い、久しぶりに自分で毛繕いしてると、洞窟からゼルム族の臭いがした。


「レオガルド様。ミクニールの長です」


「ゼオと申します。仲間を救っていただきありがとうございます」


 見た目は四十半ばくらいで、ゼルと同じ戦士タイプだった。


「構わない。逃げてきたミクニール氏族はレオノール国の民となった。なら、同胞を救うことも守護聖獣としての役目だからな」


「あなた様に従います。どうか同胞をお救いくださいませ」


 前脚を折ってオレに乞うゼオ。大きな氏族は礼儀も知っているもんなんだな。


「レオノール国の民となるなら守護の対象だ。嫌だと言ってもオレは民を守るだろう」


 出てきた者らが前脚を折って従順を示した。


「では、食料を集めろ。周囲にバリュードはいない。いてもオレが狩る。腹を空かしているお前らの子のために動け」


「はい。皆よ、食料を集めるぞ!」


 ゼオの号令一下、ミクニールの者たちが食料を集めに走り出した。


「ゼオ。これをお前にやる。武器なしでは心ともないだろう」


 最初に作ったゴルオの剣を渡した。


「……ゴルオの角、ですか……?」


「ああ。剣にちょうどよさそうだったんで作ってみた。もう一本あるからお前が認めた者に渡せ。そこの鱗は盾として使え」


 さすがに紐を通すことまではできない。あとはお前たちでやってくれ。


「なにからなにまでありがとうございます」


「もう礼はいい。とにかく冬を乗り越えるための食料を集めろ。冬はもうそこまでやってきてるぞ」


 まだ秋の収穫時期だが、冬を越えるための食料となれば今からやっても充分に揃うかわからない。それに、薪も必要だろう。


 食料はミクニールの者たちに任せ、オレは洞窟近くの木を切り倒し、風の刃で細かくしていった。


 急いでいるのに時間は無情に過ぎていく。


 やることは多いが、食料集めや薪割りにすべての時間を費やすことはできない。フジョーはまだバリュードが支配していた領域に止まっている。


 おそらくフジョーも冬を越すために栄養を溜め込んでいるのだろう。ゴルオを狩るようになった。


 まあ、バリュードもフジョーに獲物を取られ、どこかへと移動してしまった。


「バリュードは冬になるとバジューラの向こうにいってしまいます」


 夜、ゼオとバリュードのことを話し合ってたらそんなことを言った。


 バジューラとはそこに聳える山脈のことで、山脈の向こうは雪が少なくて竜などが多く生息しているそうだ。


 ……この大陸、ほんと生態系がメチャクチャだぜ……。 


「そろそろ雪が降るかもしれません」


 ゼオがそう言った三日後、雪が降ってきた。


「オレは一度レオノール国に戻って塩を運んでくる。遠回りするから、戻ってこれるのは雪が深くなってるだろう。それまで堪えろよ」


「はい。堪えてみせます」


 ゼオたちに見送られ、草原があるほうへと駆け出した。

ダメ女神からゴブリンを駆除しろと命令されて異世界に転移させられたアラサーなオレ、がんばって生きていく! も、よろしく。

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