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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
発展期編

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154 ミクニール氏族

 バリュードの領域に入る前に腹を満たし、充分な睡眠を取った。


 フジョーと対峙さたらまともに休んでいられるかわからない。食えるときに食い、休めるときに休んでおかないとな。


 回復したらバリュードの領域に入り、フジョーを探す。


 二日くらしいして干からびたバリュードを発見。具合からして数日は過ぎている感じだ。


「虫も食わないか」


 腐敗は始まっているが、虫がたかってはいない。どれだけ栄養を吸われてんだよって話だ。


「フジョーはバリュードを狩りの対象としてる感じだな」


 他にも干からびたバリュードを発見し、その答えに至った。


 こちらとしては願ったり叶ったりだが、狩り尽くしたあとを考えれば喜んでもいられない。狩り尽くしたらこちらに向くかもしれないんだからな。


 四日くらい探し回り、やっとフジョーの嫌な気配を感じ取れた。


「……なんなんだろうな、この嫌な気配は……?」


 レイギヌスとは違う嫌な気配。レイギヌスが肉体を腐敗するイメージならフジョーは魂を分解されそうなイメージだ。より恐怖を与えてくる。


 どちらもどちらだが、まだレイギヌスのほうが克服できる嫌さだ。フジョーは感じるだけで嫌悪するぜ。


「バリュードはこの嫌な気配に気がつかないのはなんでだ?」


 オレは数キロは離れているのに間近にいるように感じられた。


「オレに気がついたな」


 嫌な気配がオレに集中するのがわかった。


「数キロ先からでもモンスターを探知できるか。レブの感応力級に匹敵するな」


 味方にいれば頼もしいが、敵にいると厄介極まりないぜ。


 フジョーの探知能力範囲がどれほどのものかを探っていると、一本角のトリケラトプスみたいな草食系モンスターの群れに出会った。


「もしかして、これがゴルオか?」


 バリュードが飼っていると言う草食系モンスターってのは?


 とりあえず、手頃なのを狩って食ってみた。


「鎧竜よりは薄味か?」


 竜と言うよりは鳥味に近い。ミディアが好みそうな味である。


「まあ、不味くはないが、オレ好みではないな」


 とは言え、サイズも一、二トンはある。腹を満たすには充分な量と味だ。


「そう言えば、ゴルオの死骸はなかったな?」


 フジョーが食ったのはバリュードだけで、草食系モンスターは食ってなかった。フジョーもフジョーなりに好みがあるようだ。


「オレも好みのようだ」


 嫌な気配が近づいてくる。


 やはりフジョーは肉食系モンスターが好みのようだ。まったく、補食対象になるってのも不快なものだぜ。


 なんて肉食獣の傲慢な思考だが、自分が弱肉強食な世界に生きていると実感させてくれるのだから補食対象だと理解するべきだろうよ。


 嫌な気配を受けながらもこちらも敵意を向ける。


 あちらが感じ取れるまでかはわからないが、何日も対峙しているとフジョーの動ける速度と距離がわかってきた。


 フジョーは基本、待ち伏せ型。一日獲物が狩れなければ三、四キロ移動し、獲物を見つけたら一日中でも動くこともできた。ただ、一日中動くときは小まめに水分を補給している感じだ。


 秋から冬に変わる頃、馴染んだ臭いが風に乗って流れてきた。


「ゼルム族──ミクニール氏族か?」


 ルゼが今も流れてくるとは言ってたが、この状況で流れてくるなよ。


 フジョーにオレとの繋がりを悟られたくないが、見過ごすわけにもいかない。まだレオノール国の民ではないとは言え、万が一、生き残ってこのことが知れたら信用問題にも関わる。


 多少不利になろうがここは助けておくべきだろう。


 臭いの元に駆けると、十人規模のミクニール氏族が休んでいた。


「そこにいるのはミクニール氏族か?」


 いきなり姿を現したらびっくりされそうだから百メートルくらい離れて声を風で飛ばした。


「返事はいい。これは声を風に乗せて語りかけている」


 動揺する気配を感じる。オレもこのくらいの距離なら気配を感じることはできるんですよ。


「オレはレオガルド。お前たちが向かおうとしているところを守護する者だ。この先にバリュードを食らう存在がいる。食料が乏しいだろうがそこから動くな。少しずつ下がれ。気を剃らしたらお前たちと合流する」


 返事は聞かずにそっとその場から移動し、フジョーの周囲を回り、引きつけてからミクニール氏族とは反対の方向へと駆けた。


 半日駆けてから大きく迂回し、次の日の朝にミクニール氏族と合流した。


「驚くなと言うほうが悪いが、オレがレオガルドだ。レオノール国を守護する聖獣だ。お前らのことは逃げてきた者らから聞いている」


 恐怖するミクニール氏族たちに静かに語りかけた。


「お前たちを食うなら気づかれる前に食っているし、こうして語りかけてもいない」


 安心するかどうかわからんが、ミクニール氏族たちの前に寝そべった。


「……あ、あの、助けてもらえるのでしょうか……?」


「最初は見捨てようとしたが、お前たちはレオノール国へと向かっていると理解した。違うか?」


「はい。ミナレアの民を頼ろうと親族で向かっております」


「お前、ミナレアにいったことはあるのか?」


 言葉遣いが丁寧で、単語も多く知っている。脳内変換を楽にしてくれているのだ。


「はい。二、三回、いったことがあります」


 やはりか。オレが思う以上にミクニールとミナレアは交流が盛んだったようだ。


「そうか。向かうところすまないが、今は不味い。レオノール国との間に災害級の存在がいる。通るのは難しい。お前らは食われないだろうが、あれにレオノール国を知られるわけにはいかない。ここは下がれ。オレもついていく」


「で、ですが……」 


「そちらの事情は聞いている。だからオレがお前たちを一時的に守護する。バリュードからお前たちを守ろう」


 さて、どう決断するかと見ていると、全員が前脚を折って頭を下げた。


「はい。あなた様に従います」


 どう判断したかわからないが、守護すると約束したことは絶対に守ってやるさ。

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