147 同盟航路
ミドットリー島でも話し合いを行う。
定期的にコルモアやコルベトラにいってはいるが、大陸の奥のことは又聞きだ。見た者からでないと正しくは伝わらないだろう。
まあ、いろいろありすぎてこと細かに話していたら何十日とかかる。重要なことや、他種族の暮らしを話して聞かせた。
二日ほどで止めておき、ゴルティアやロイドは定期航海に出た。
その辺は詳しく聞いてないが、航海はいつか決めて、そこを走ってコルモアやコルベトラに向かうそうだ。
レニーラのクレンタラ号は、もっとも遠い航海──これは外洋を通る航路で、帝国やマイアナからくる船の監視を目的としている。
これからは三艦になったので、もう少し航路を拡大して、いつか帝国に向かう航海の練習とするのだ。
航海技術は帝国やマイアナより高く持たせ、いずれくるだろう大航海時代に備えるのだ。
もっとも、この世界の海にもモンスターはいるので大航海時代にならないかもしれないが、レイギヌスがある限りくるとみて動いていたほうがいいだろう。そのためにもミドットリー島は強化していく必要があるのだ。
定期的にコルベトラで港造りに岸壁を崩した岩を少しずつ運び、埋め立てに使っている。
一回で数百キロだが、塵も積もればなんとやらである。十年も続けたらそれなりの港ができるはずだ。
とは言え、海底の均しはオレがやっておこう。第二港として計画してる場所の海底を砕き、岩をえっちらほっちら脇に積み上げていく。
「レオガルド様は器用だね」
少し体が冷えたので日向ぼっこしてたらレニーラたちがやってきた。
「獣の体ではこれが精一杯だがな。人間のような手が欲しいよ」
せめてゼルム族のような半人半獣ならやれることが増えるんだけどな~。
「航海はどうだった? 十日ほどの長期だったと聞いたが?」
「嵐に遭わなかったから順調だったよ。この時期なら二十日ほどで帝国までいけるかもしれないね」
「そのためには艦を一新しないとダメじゃないか? それに、保存食の開発もしなくちゃならんしな」
この世界にガラスはあるらしく、貴族なんかには出回っているそうだ。
「知識があるとは怖いものだな」
「あったからと言って技術がなければ宝の持ち腐れ。お前らがいてくれてこそ宝になるものだよ」
言葉だけでは細かいことは伝わらないし、理解もできないものだ。技術とは一つ一つ積み重ねていかないとならないものだからな。
「それなら帝国やマイアナではなく、国と同盟を結んではどうだろうか?」
「同盟? できる国があるのか?」
「まあ、国と言ってもいくつもの島が集まった諸島連合体だがな」
諸島連合体? そんなのがあるんだ。
「ここから遠いのか?」
「三十日から四十日、と言ったところだな。ギリギリいけるとは思う」
つまり、まだ運次第ってことか。
「やるなら来年。訓練をしっかりして、保存食の開発をしてからだな」
レニーラとしてはオレの許可が欲しいから言ったんだろうよ。
「セオルとしっかりと話し合えよ」
「ふふ。理解ある上司がいると言うのは本当にありがたいものだな」
上司じゃなくて守護聖獣だよ。
「お前は死ぬまで前を向いてないとダメなヤツだろうからな。さっさと同盟航路を築き、パラゲア大陸の調査をやるといい」
レニーラも四十半ば。精々七十歳くらいが限界だろう。もう三十年もないんだから生き急げ。こいつはそれが似合ってる。
「レオガルド様の期待に応えるためにも同盟航路は来年中に築いてみせるよ」
「無茶はしても無理はするなよ。と言うか、算段はあるのか? 同盟するにも先立つものは必要だろう?」
こちらから持っていけるものって言ったら毛皮しか思いつかんぞ?
「なに、帝国金貨とマイアナ金貨がある。資金面に問題はないさ」
「金貨? そんなものがあったのか?」
未知の大陸に金貨なんて持ってくるのか? なんのために?
「開拓は新たな町を築くこと。人間の領域を増やすこと。なら、金は必要だろう?」
なるほど。人間らしい考えだ。
「だから諸島連合体が適切と言うわけか」
そこなら帝国やマイアナの金貨でも使える。商売相手としてはちょうどいいってことだろう。
「そう言うことさ。まあ、こちらの珍しいものも持ってはいくがな」
「それも含めてセオルと話し合え。オレは賛成するから」
「ああ。レオガルド様が許してくれるなら大体の問題は片付いたものさ」
「セオルを泣かすなよ。あいつにはあと三十年は働いてもらう予定なんだからな」
胃を痛めるようなことはしないでくれ。セオルは稀有な存在なんだからよ。
「わかっている。無理は言わないよ」
疑わしいところだが、同盟を結べるところがあるのなら確かに必要だ。多少の無茶には目を瞑ろう。
「コルモアにはいついける?」
「六日後だな。もちろん、天候次第ではあるが」
「なら、それで帰るか。ゼル王にも教えておかないとならないからな」
同盟航路はゼル王の命としなくちゃならない。その説明をしなくちゃならないだろうからな。
「それまで第二港を進めておくか」
六日もあれば一隻入れるくらいの広さにはできるはずだ。
体も温まったので、港造りを再開させた。




