146 再会を祝して
シャーロット号の艦長はロイドと言い、マイアナの軍人だった男で、二十九歳だそうだ。
捕まったときから協力的で、汚いことも進んでやり、勉強も欠かさず、その在り方がセオルの目に止まったそうだ。
それから三、四年、動向や性格、面接を何度かし、他のヤツらと話し合って大丈夫と判断。本人の希望で三番艦の艦長にしたとのこと。
オレも観察したが、人格に問題はない。まあ、艦長になるくらいだから野望なりあるだろうが、部下への対応はよく、下から慕われているのがわかった。
「マイアナにいたら出世したんじゃないか?」
いろいろ話て、そんなことを言ってみた。
「わたしは、貧乏な生まれでして、どう頑張っても出世なんかできませんでしたよ。ですが、レオノール国では違います。実力を示せば必ず出世できます。大将にすると言われても戻るつもりはありませんよ」
「そうか。レオノール国はまだ発展段階。帝国やマイアナと渡り合える頃には引退してるかもしれんぞ?」
「それでも、わたしはレオノール国で上を目指したいです」
まっすぐな目でオレを見てくるロイド。若いなーと思う反面、羨ましいとも思った。まっすぐ夢に向かってるんだからな。
「そうか。三十代はしっかり経験を積むことだ。よほどの天才でもなければ実力を出すのは四十五十になってから。そのときに真価が問われるものだからな」
ロイドは天才ではなく秀才だ。奇抜なことはせず、地道にキャリアを積み重ねていくタイプだろう。なら、今はしっかり経験を積むことが将来のためになるはずだ。
「……レオガルド様は本当に人を知っているんですね……」
「それほどじゃない。人といたいから人を学んでいるだけださ」
獣の思考はまだ残っている。だが、人といたいなら人の思考でいるべきだ。人を忘れたらオレはまた孤独になるんだからな。
「お前のことはオレも見ている。レオノール国を支える勇士をオレは正当に評価する」
「はい! レオガルド様を落胆させないようレオノール国を支えていきます!」
ビシッと敬礼して宣言した。
謎触手を動かし、ロイドの胸を優しく叩いた。
「お前のような男を守護できることを誇りに思うよ」
ちょっとリップサービスすぎるかと思うが、ロイドは二十九歳。これからの人材だ。このくらいやっても問題ないだろう。
「まあ、張り切りすぎるなよ。余裕がない上司は嫌われるからな」
「ふふ。注意します」
艦長としての仕事もあるのでそれで解放し、潮風を感じながら微睡んだ。
そして、大陽が真上にくる頃、ミドットリー島が見えてきた。
「プレアシア号より信号! 無事な到着を喜ぶ!」
「ゴルティアか。元気なヤツだ」
もう六十近いと言うのに海軍大将兼艦長として海に出ている。なんともパワフルなヤツである。
ミドットリー島の港開発は今も続いており、前になかった灯台ができていた。
港に入り、帆の張りを調整してゆっくりと桟橋に接岸した。
シャーロット号から下り、大きく伸びをする。やっぱり半日近く丸まってるのは辛いわ。
「お久しぶりです、レオガルド様」
「ああ。久しぶりだな、オールダー。元気にしてたか?」
ミドットリー島の司令官で男爵のオールダー。ここを任せているせいか、もう二年以上ミリドットリー島から出られてないのだ。
「はい。祖国にいた頃より健康です」
帝国もマイアナも暮らしは同じか。あちらに転生しなくてよかったのかもな。
「コルモアに戻りたいときはセオルに言えよ。島ばかりにいても退屈だろう?」
「いえいえ。島での暮らしも刺激的ですよ。最近、釣りばかりしていて嫁に怒られるくらいです」
「嫁? 嫁をもらったのか?」
「はい。レニーラの配下だった者です」
と言うので紹介してもらった。
「妻のサラです」
「サラです。その節はお世話になりました」
なんかしたっけ? とは思ったがとりあえず頷いておいた。
「そうか。オールダーをよく支えてよく躾ておけよ。男は女の尻に敷かれてるくらがちょうどいい」
「な、レオガルド様~」
「ふふ。まあ、そこは夫婦でがんばれ」
夫婦仲まで口を挟むつもりはない。精々捨てられないようやっていけ、だ。
今日は鈍った体を回復するために島の探索し、海にエサを探しに出た。
レイギヌスにより大きななものはおらず、一メートルくらいのマンボウ(?)みたいな魚がいたので謎触手で捕獲。美味しくいただきました。
「海水浴にきたみたいで楽しいな!」
贅沢を言えばギギと砂浜を走りたい。いや、ミドットリー島、走れるほどの砂浜ないけど!
そんな夢想しながら魚を捕獲し、腹が満ちたら港へと戻った。
プレアシア号も接岸しており、ゴルティアたちが下りていた。
「ご苦労さん。海はどうだ? なにかモンスターはいたか?」
「ええ。サーザストを見ました」
サーザスト? なんだ?
「簡単に言えば、大きな亀ですね。伝説ではミドットリー島より大きいのがいたそうですな」
この星は怪獣惑星なのか? フガクと言いサーザストと言い、論外な生命体が多すぎだな!
なにはともあれ皆で集まり、持ってきた酒で再会を祝した。




