145 三番艦シャーロット号
明日、コルモアに出発しようかと考えていたらミディアとライザーが帰ってきた。
「お帰り。って、そいつはどうしたんだ?」
黒と灰色の毛を持つバリュードが一緒にいた。
あ、あいつか。すっかり存在を忘れていたが、殺してはいなかったっけ。
「ミディアの弟だよ」
弟? お前、兄弟いたの? 生き別れの再会的な?
「弟分です。名前はポヤーです」
ライザーがその経緯を教えてくれた。
なんでもミディアがポヤーなるこいつを哀れに思い、レブの感応力で言い聞かせてミディアの弟分としたようだ。
「レブの力が働いたならモンスターの域に入っているってことか」
獣だと波長が合わないのか、モンスター限定なんだよな、レブの力は。
「言葉はしゃべれませんが、理解はできるみたいですよ。ポヤー。レオ様に挨拶しなさい」
本当にわかるようで、オレの前にきたら伏せて頭を下げた。
賢いヤツではあったが、まさか土下座みたいなことをするとは。なんか頭がいい方向が間違ってないか?
「ポヤーか。今日からオレらは家族だ。ミディアとライザーを頼むな」
謎触手でポヤーの頭を撫でてやると、顔を上げて頭を擦りつけてきた。完全に犬だな。
「ポヤー、寂しかったみたいです。群れから除け者にされてたみたいですから」
だからミディアは弟と言ってるのか。
「ミディア。人のいるところでの暮らし方をよく教えておけよ」
「うん。農業村で教える。あそこならポヤーも怖がらないと思うから」
確かにベイガー族ならポヤーも受け入れてくれるか。
「そうか。農業村を守ってくれな」
親交を兼ねて狩りにでもいきたいが、コルモアにいかなくちゃならない。ポヤーが慣れたらコルモアへと顔見せにいくよう伝え、次の朝にはマイノカを立った。
ギギも連れていきたいところだが、ゼルがいない今、マイノカを仕切れるのはギギだけ。泣く泣く諦めた。
六日かけてコルモアに到着。竜獣の毛皮の他に酒樽を背負わせているから時間がかかったのだ。
まずはお互いの挨拶を済ませ、カルオンたちには二日の休みを与えた。
「レオガルド様。三番艦が完成しました」
カルオンたちを休ませ、ゼルたとの話し合いの席で、セオルがそんなことを報告してきた。
「それはいい知らせだな」
マイアナの開拓船はすべて解体して流用してるが、戦艦は改修してレオノール国の戦艦にする計画を立てていた。
材料がないので何年もかかったが、これでレオノール国は三隻の戦艦を所有することになった。これでレニーラが自由に動けることだろうよ。
港に見にいくと、なかなか立派に改修されていた。
「レオガルド様。名前をつけてください」
「オレでいいのか? 艦長になるヤツにつけさせたらいいだろう」
前の二艦も艦長になるヤツがつけたはずだ。あれ? 違ったっけ? 昔過ぎて記憶が曖昧だわ。
「オレでいいのならわかった」
さて。どんな名前にしたらよいのやら。ここは女性名がいいか? 野郎が乗るならそのほうがいいだろう。
「うん。シャーロット。シャーロット号でどうだ?」
なんならマリーベルでもいいぞ。
「はい。シャーロット、いい名です!」
艦長になるだろう男が承諾してくれたので、レオノール国所属三番艦は、シャーロットと命名されました。
処女航海、って言うかわからんが、物資を積んでミドットリー島へと向かうことにした。
「久しぶりにオレもいってみるか」
一応、オレが乗れるスペースも造ってくれと要望は出していた。まあ、マイアナの戦艦は五十メートルくらいと、ミドガリア帝国の戦艦の三分の二なのでかなり丸まっていないといけないといけないがな。
「是非、お願いします!」
艦長の強い希望もあり、オレもいくことに決めた。
せっかくなのでゴゴール族から五人くらい連れていくことにした。海の怖さを知っておくのもいいだろうと思ってな。
「おれもまたいってみたいな」
ゼルもいきたそうにしてたが、このあと農業村にいかないとならない。次にいくのはジュニアに留守を任せるようになってからだな。
「そう言えば、ロウズは襲ってきたりしないのか?」
ミドットリー島にいく前に食っておかないとな。
「ロウズは臆病なので襲ってはきません」
「そうなのか。見た目は凶悪そうなのにな」
襲ってこないのなら問題ないと、五日後を目標に出発の準備を進める。
その間に、カルオンとゼル、セオルを交えての話し合いとコルモアの視察。飲みにケーションをして理解を深めた。
オレもロウズを狩り、コルベトラへといったりとやることいっぱい。あっと言う間に五日が過ぎ、出航日和の天候だった。
乗り込む場所が狭いので苦労したが、まあ、半日の我慢。眠っていれば苦はないさ。
たくさんの人間が集まって見送ってくれてるが、丸まってる状態では応えてやることもできない。兵士たちよ。オレの分まで応えてやってくれ。
港を出るための帆が張られ、少しずつ桟橋を離れていく。タグボートもないのに凄いものだ。
三十分くらいかけて港を出ると、潮の臭いがいっぱいになった。
「レオガルド様! ミドットリー島へ向かいます!」
「ああ。風と雷を司るレオガルドがシャーロット号の航海を祝福する」
すべての帆が張られ、ミドットリー島へと走った。




