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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
成長期編

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131/225

131 接着剤

「暖かくなったな」


 毛皮を持つオレでもわかるくらい気温が春のそれとなってきていた。


「レオガルド様、のんびりしてていいんですか?」


「んー。ミディアが追ってくるのを待ってるんだが、さすがにミナレアにいかないのも問題だな」


 のんびりしているのはわかっているが、ミディアを放っておくのも心配だ。熱中しすぎて野生化しないかを、な。


「ミディーなら大丈夫ですよ。レブねーさまに教育されましたから」


「レブはミディアにも教育できるのか」


 教育と言うか調教か? レブの能力はモンスターに絶大だな。オレにはまったく効かんけど。


「一旦、ミナレアにいっておくか」


 レブやチェルシーまできたらミナレアの守りが薄くなるからな。

 

 放置していた芋虫──パプパプを謎触手で絡め、駆け足ていどの速さでミナレアへと向かった。


 時速にしたらおそらく四十キロ。風を纏わないのでミナレアまで二日もかかってしまったが、パプパプを元気なままミナレアまで持ってこれた。


「レオ、遅い!」


 追いかけてこないと思ったら先に帰っていたようだ。


「ミディアを追いかけてくるの待ってたんだが、オレの臭い、わからなかったのか?」


「バリュードの血でわかんなかった」


 ミディアが振り返るそこに、ぐったりした灰色と黒毛が混ざったバリュードが倒れていた。


 微かに上下に動いていることからして生きてはいるんだろうが、完全に虫の息であった。


「手こずったか?」


 爪や牙の跡がないところを見ると、体当たりして虫の息にしたようだ。


「ううん。臭いを隠すのは上手かったけど、狩りをしたときの血の臭いまで隠せなかったからすぐに見つけられたよ」


 嗅覚が鋭いとこうもあっさりと見つけられるんだな。


「しかし、珍しい毛色だな。バリュードだよな?」


 形はバリュードなんだが、毛色が違うと別の種に見えるな。


「バリュードなのは間違いないよ。ただ、レブが言うには力が通じないって言ってた」


 レブの能力はモンスター限定ではあるが、触れるなら獣でも能力は使える。それが通じないってことは脳の作りが獣の脳ではないってことかもしれないな。


「一応、檻に入れておくか」


 虫の息だからと言って油断できないのがこの世界の獣である。男たちに指示を出して檻を作らせてバリュードを閉じ込めておくようにする。


「レブとチェルシーは?」


騎士ワルキューレを連れて第二次防衛線にいってる。バリュードの先遣隊が活発に動いているってさ」


 あーあの厄介な先遣隊な。すっかり忘れてたわ。


「明日からライザーともにミナレア周辺を見回ってくれ」


「わかった」


「誰かルゼ公爵にオレがきたことを伝えてくれ。あと、このパプパプ──蟲を知る者がいたら連れてきてくれ」


 ゼルム族にも知る者はいるはずと頼んだら、なぜか女ばかり集まった。なんでや?


「白蟲の粘液を固まるといろいろくっつけられるんです」


 くっつける? 接着剤か?


「どこの粘液だ?」


 全部食っちゃったよ、オレ。


「ここから出る粘液です」


 と、棒をパプパプのケツ(と思われる穴)に突っ込んだ。えげつな!


 棒の先には半透明の液体がついている。こう見ると、よく食ってるなって思うよな……。


「固まるまで結構かかりますが、固まってしまえば黒曜石のナイフでも剥がすのが大変です」


「どういったことに使うんだ?」


「大体は石を組むときに使ったりしますね。あとは黒曜石と柄を固定したり、木材も繋げたりとかです」


 意外といろんなことに使われているんだな。


「パプパプ──白蟲を捕るのは女の仕事なのか?」


「はい。町の周りによくいますから。ただ、ここまで大きくはないですけど」


 話を聞いたら二回り小さいらしい。あそこにいたのが特別なのか?


「結構いるものなのか?」


「そうですね。簡単に見つけられるので結構いるかと思います」


 そうなんだ。意識してなかったからまったくわからんかったわ。


「こいつは一生このままなのか?」


 まさか巨大蛾になるとかか? いや、巨大蛾なんて見たことはないな。


「長生きすると皮膚が固まって甲虫になりますね。大体は他の蟲に食べられてしまいますが」


 だから数を増やして種の存続を賭けてるのか。


「試しにこいつを飼い慣らして粘液を取れるようにするか。人間なら使い道や保存法を見つけてくれるかもしれんだろう」


 石や木に使えるなら船を造るときに重宝しそうだし、防水の材料になるかもしれない。今のうちから飼い慣らせる技術を見つけていくとしよう。


「レオガルド様、お久し振りです」


 パプパプに構っていたらルゼやジュニアがやってきた。


「ああ、久しぶりだ。元気そうでなによりだ。ジュニアも元気だったか?」


「はい。風邪一つ引くことなく過ごせました」


 一冬会わないだけで成長したものだ。ここの生き物の成長はあっと言う間だな。


「よかった。ゼル王も心配してたからな」


 まだジュニアは子供。親の側にいる年齢だ。それが王の息子だからと離れた土地で暮らさなきゃいけない。オレが勧めたとは言え、不憫である。


「夏になったら一回帰って姿を見せてやるといい。さすがにミナレアばかり見ていては次代の王にはなれないからな」


 ゼルの下で次代の王として知らしめる必要がある。ミナレアばかりには置いてられないのだ。


 館に戻るのもなんなので、その場で報告会を開くことにした。

魔女のグルメ旅、よろしく。

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