128 侵入
マイノカに到着し、少し話し合ってからミナレアへと出発した。
今回はオレ、レブ、チェルシー、ミディア、ライザーだけでいく。ギギやヤトアたちは置いていった。
基本案として、マイノカはレオノール国の首都と考えている。なら、まずここを発展させ、力をつけさせなくちゃならないだろう。
そのためにはオレがいなくちゃならないが、ここはモンスターが蔓延る地。ここはオレの縄張りだと示し続けなくちゃならず、定期的に縄張りを主張するために臭いつけしなければならないのだ。
とは言え、レオノール国は広大だ。オレの脚ですら端から端までいくのに二、三日はかかる。たぶん、北海道くらいの広さはあるんじゃなかろうか?
そんな広さをオレだけでカバーするのは不可能。チェルシーやミディアで割り振らないとあっと言う間に侵入されてしまうだろう。
「レブとチェルシーは平原を。ミディアとライザーは防衛線を。オレは広範囲を見回りながらミナレアへと向かう」
ただ、ミナレアへと向かうんじゃなく、モンスターを威圧しながら
ミナレアへと向かうことにした。
「わかった」
「任せて」
途中から別れ、オレはまず保護区のほうへと駆け出した。
保護区にはマンモスに似たミゴルが目に見えて増えていることがわかった。が、ちょっと警戒心が薄れてないか? オレの姿が見えるまで逃げないとか草食獣としてダメだろう。
まあ、増やすためになるべく動きの鈍い、年老いたのを狩るようにしている。野生が鈍るのも仕方がないことだろう。
「ん? 脚長蜘蛛か?」
風に乗ってひさに脚長蜘蛛の臭いを嗅ぎ取れた。
「ここら辺にもいたんだな」
どちらかと言えば山で見ることが多い蜘蛛だ。こんな平地で見るのは初めてかもしれんな。
「お、コミーを食うんだ」
蜘蛛の糸にコミーが何匹が絡まっており、体液でも吸われたのか干からびていた。
「……厳しいよな、ほんと……」
生態ピラミッドの上にいるオレが言うのもなんだが、一歩引いてこの弱肉強食な世界を見ると考えずにはいられんよ。
「なんて、脚長蜘蛛をいただくんだがな」
歯ごたえはないが、脚長蜘蛛の味はいい。糸を雷で焼き落とし、風の刃で長い脚長を切り落としてやった。
「ファンタジー小説なら蜘蛛の糸で服とか作っちゃうんだろうな」
だが、このファンタジーな世界では蜘蛛の糸を集める技術はなし。ミバールを増やしたほうが早いってものだ。
脚長蜘蛛を平らげてから次の場所へと向かった。
蟲系モンスターはともかく、獣系モンスターは水場に集まるものなので、それなりに飲みやすい川や泉、沼などを把握すれば無駄に走り回ることもない。
主な水場を回っていると、準モンスターまであと一歩な茶色の豹? ジャガー? なんかそんな感じの獣が水を飲んでいた。
……いろいろいるもんだ……。
オレの気配を察したようで、あっと言う間に逃げてしまった。
まだ脚長蜘蛛が残っているので追うことはせず、沼に雷を放って消毒。水分補給した。
「ん? おぉ、ナマズじゃん!」
二メートルくらいのナマズが何匹か腹を見せて浮いていた。
「ナマズか。そういや、食ったことないな」
ゴゴールのヤツらが食っているところを見たことはあるが、そこまで興味はなく、ふ~んって感じで流していた。
「いい機会だから食ってみるか。うおっ! 意外と重いな」
謎触手で持ち上げようとしたらずっしりと重たがった。
なんとか引っ張り上げ、ナイフで腹を裂いて内臓を出した。なんか泥臭そうなのでな。
軽い雷をナマズに放ち、寄生虫なんかを殺しておく。
「では、いただきます」
ガブリとナマズを一口で食った。
「……食感はいいが、味がうっすいな……」
辛うじて味は感じるが、望んでまで食いたいとは思わない。オレ的にはハズレだな……。
狩ったら食べるが信条なオレも二匹目には手が出ず、沼にリリースしてやった。いや、死んでんだけどね。
次の水場へと向かうが、準モンスター以下の獣ばかりで、脅威となるモンスターとは遭遇できなかった。
「やはり、オレがいるとわかってるようだな」
モンスターにもなれば察知能力や知能も高くなる。そんな相手を狩るとなるとこちらも知恵を使わなければならなくなる。
まあ、Sランクともなれば逆に知恵を使わなくなる。その身体能力を活かして狩りをするがな。
なにが言いたいかと言うと、知恵もあり身体能力も高いモンスターは厄介ってことだ。
「バリュードが潜入調査するとはな」
とある水場にバリュードの足跡を発見したのだ。
「足跡から準モンスタークラスか。単独行動してるな」
Aクラスともなればレブの察知能力で捕らえられるが、準モンスターだと集中しないと感じられなくなる。
その微妙なところをついてきている。
「威力偵察か?」
そうだったら厄介度が跳ね上がる。バリュードのボスは人並みに知能があるってことだ。
臭いはなんとなく嗅ぎ取れるていど。三日は経ってる感じな?
臭いを覚え、足跡を追うが、川で臭いが途切れていた。
「川で臭いを消すとか賢すぎんだろう」
準モンスターながら知能が高いとか、厄介この上ないな。
「これは、しっかりと狩らないと不味いかもな」
土地勘をつけられたらゲリラ戦とかやられそうだ。この臭いの主はしっかりと狩っておかないと後々苦労させられそうだぜ。
「いいだろう。人の知能を持った獣の恐ろしさを教えてやろうじゃないか」
そう宣言して臭いの主を探しに駆け出した。




