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どうもオレです 白虎っぽい獣に転生して守護聖獣となりました  作者: タカハシあん
成長期編

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123 神官兼記録官

 航海の記録係だったマイアナ国の男が連れてこられた。


 記録係、と言うのだから年配の男を想像していたら、意外にも三十前の男だった。


「ロイです。十三から船に乗って、五年ほど記録係として働いてました」


「十三歳か。随分と幼いときから船に乗ったんだな? 記録係になるくらいの基礎教育を受けていたってことか?」


 記録係と言うのだから十三歳前に読み書きはできていたってこと。ならば、誰かに習うか、それなりの教育機関にいたかだ。


「はい。家が裕福でしたので、小さい頃より学んでいました」


「裕福なのに過酷な船乗りになるとは思いきったことをするな?」


 大航海時代の本を読んだことあるが、ブラック企業も真っ青な悪列な環境だ。成り手がいないから浚ったりまでしたほどだ。自ら進んで船に乗るとか気が狂ってるとしか思えんよ。


「いえ、父が騙されて莫大な借金を作りまして、その借金を返すためにわたしは売られました」


 あ、そういうオチね。納得納得。


「それでめげずに記録係になるのだから凄いヤツだ」


 普通なら裕福の子供が過酷な状況で生き残るだけでも大変だろうに、生き残るばかりか記録係にまでなるんだから運と才能、そして、根性のある男である。


「あ、ありがとうございます」


「もっと早くお前を見つけられていたらと思うよ」


 こいつは当たりだ。セオルやミドアに次ぐ当たりである。


「ミドア。船団が持ってきた本とか航海記録はどうしてある? 捨てはいないだろうな?」


 確か前に大切に保管しろと言ったはず。たぶん。


「コルモアで大切に保管しています。知識は絶やすな、とレオガルド様に厳命されましたから」


 昔のオレ、グッジョブ!


「コルベトラにはないのか?」


「ここでは保管できませんので、ありません」


 まあ、泥煉瓦の家だしな。保管なんて夢のまた夢か。


「紙を作れる職人、いたよな?」


「はい。ですが、材料を集めるだけで一苦労ですし、水も少ないので作れていません」


 また水か。将来、湖からの水路を造らないと発展も難しいかもな。


「今は、木の板で我慢するしかないか」


 木はいっぱいある。紙が作れるか、輸入できるまでは木簡で乗り切るしかないか。


「数十人、港造りから抜けさせて木を伐らせることに当たってくれ。木簡を作らせてロイにレオノール国の歴史を記録してもらう」


 まだレオノール国は十数年。今ならまだ記憶を記録にできる。歴史は絶対に残すべきだ。


「歴史を記録、ですか?」


「そうだ。歴史は国の財産。記録は明日へ繋ぐ力だ。ロイなら記録することの大切さがわかるだろう?」


「は、はい。それは」


「ロイ。お前を獣神の神官とし、レオノール国の記録官とする。レオノール国の出来事を記録して未来に残せ。そうだな。マップの氏名を与える。これからは、ロイ・マップと名乗るといい」


 安直とは言わないで。オレのネーミングセンスはこんなものなんです。ヤトアのときは数日悩んだけどな。


「あ、ありがとうございます! レオガルド様のご期待に添えるよう努力いたします!」


 過酷な状況にいたのに礼儀正しいヤツだ。これは性格だな。


「まあ、歴史を記録するのは後々にするとして、マイアナ国のことや航海での話を聞かせてくれるか?」


 レブの教育は一旦中止。まずはオレが世界を学ぶとしよう。外を知らずして内を纏めることはできないのだからな。


「そんな詳しい歴史は……」


「お前の見てきたこと、知っていることでいい。ミドガリア帝国のことはセオルたちから聞いているからな」


 一国より二国から聞いたほうが人間たちのことがわかると言うものだ。


「わたしの知っていることでしたら」


「ああ。知っていることだけでいいさ」


 それから午前はエサ探しに出かけ、午後からロイの話を聞くことにした。あと、ついでにマイアナ国の文字ま学ぶことにした。


 ロイの記録が曖昧なときは他のマイアナ国の者にも話を聞き、整合性を高めていった。


「レオガルド様は教育を受けたことがあるのですか?」


「なぜ、そう思う?」


「なにか、下地があって比べているように見えました」


 それがわかるか。こいつは本当に賢いヤツだ。


「そうだな。お前にも言っておくか、オレの秘密を」


 真実を記録させるならオレの真実を教えて残しておくべきだろう。その真実をどうするかはマップ家に決めさせよう。喩えそれが悪い方向にいこうともな。


 ロイを背中に乗せ、周りに人間がいないところへと移動した。


「ここでいいだろう。寒いなら火を焚くといい」


 ロイにはちゃんと装備させてきました。


「そうですね。火を焚かしてもらいます」


 風避けの壁となり、ロイが火を焚くのを眺めた。


 やがて薪に火がつき、焚き火の熱をほんのり感じた。


「オレはな、別の世界からこの世界に獣として産まれたんだよ」


 と語り出した。


 別の世界では人間だったこと。この時代より五百年は先の文明文化科学技術があったこと。人間としてどう生きてたかを。この世界に獣として産まれ、放浪してたこと、ギギと会ったことを事細かく、とまではいかないまでもオレの心情を混ぜて語った。


「……ど、どうしてわたしに語ったのですか……?」


「誰かに知って欲しかったのと、この真実を残しておきたかったからだ。元の世界からオレみたいな異人がこないとも限らないからな」


 ただ、伝えたいのかもしれないな。オレがいたってことをな。


「オレの秘密を知るのはレイトラル伯爵とロイだけだ。この秘密をマップ家に託す。世に出すかはマップ家で判断しろ」


 どうせその頃にはオレはいないだろう。真実を知られたところでオレには関係ないことだ。


「わかりました。レオガルド様の思い、マップ家が継いでいきます」


「ああ。頼むよ」


 そのためにもロイに嫁を与えてやらんとな……。

魔女のグルメ旅、よろしくです。

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