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リィーネ森の魔女  作者: にのまえ


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66話

〈これは酷いな……〉


 ローサン殿下の後ろに続き、アーミ村の中へ入り、兄の背に乗ったまま見渡した光景に、私は思わず息をのんだ。


 崩れかけた家屋、血の跡、家を失い地面に座り込む村人たち。被害は、想像を遥かに超えている。


〈えぇ……思っていた以上に酷いね。私も傷薬や、回復薬を出した方がいいかな?〉


〈いや、ローサン殿下が納品した分から出すだろう。シャーリーが気にすることじゃない〉


 兄の声は落ち着いていた。私も小さく頷く。


 殿下と騎士団長が、村長のもとへ向かうのを見送り、私と兄は村の中央へ進んだ。副団長、アルバートの指示で、騎士や魔法使いたちが怪我をした村人の手当てをはじめた。


 村の中央に着くと私は兄の背から降り、杖を取り出す前に、手のひらにドラゴンからもらった鱗を乗せた。


(鱗に反応がない。この村に卵はないみたいね)


 次の村かなと杖を取り出して、地面に突き立て、魔力を流し込みイメージをはじめる。


(魔物がぶつかっても壊れない壁。木壁、土壁よりも強い、村を囲む立派な壁)


 だとしたら、物語中に出てくるあやふやな想像でもなく、森を守る結界もダメかな。


(いちいち、ここまで直しに来るのも面倒!)


 なら私が実際に目で見た、ルルーカの街の外壁、王城で見た城壁を思い浮かべる。


 えーっと両方とも石壁。ルルーカの街は北と南に入り口があったが、アーミの村は出入り口が一つ。だったら、ぐるりと囲むような城壁の方がいいかな。


(だけど、城壁よりも規模は小さく。魔力も最小限にして……)


「『石壁』」


 と唱えた瞬間。村が揺れる、ゴゴゴッと轟音が村全体に響き渡る。村の外周りに、私がイメージした通り、小さなレンガ状の石が積み上がっていき、石壁が出来上がっていく。


 これは、いままでの木の柵など比べものにならない、頑丈な石壁。


「……っ!?」


 その様子を近くで、村人を治療していた、魔法使いが、思わず手を止めてこちらを凝視する。村に物資を運ぶ騎士たちにも、足を止めて、ざわめきが走る。


「あんな短い詠唱で、ここまでのものが出来るなんて」


「魔女は、私達とは魔力の規模が違い過ぎる」


 周りの驚きの声に耳を傾けながら、さらに魔力を重ねる。数分後、城壁に似た石壁で村を完全に覆い、出入り口の位置に合わせて立派な石の門が出来上がった。


(うん、うん、いい感じにイメージできたかも)


 どう? 出来栄えはどうなの? と周りを見ると、アルバート以外の魔法使いが、私の魔法と魔力に震え上がっていた。でもこれくらいしないと、また魔物が出たとき対処できないよね。


 作り終えた、私は杖をしまい。


「よし、これで壁は終わり」


 と呟くと、周りは息を呑んだ。

 終始、そばで見守っていた兄だけが、困ったように肩をすくめる。


〈シャーリー。こんな小さな村に石壁なんて、少しやりすぎじゃないか?〉


〈え? そうなの? 村の周りに壁を作るなんて初めてだし、その壁のイメージも、王城の城壁、ルルーカ街の石壁くらいしか、壁のイメージが思い浮かばなかったの〉


 思い浮かべてもそれくらい。


〈でも、アーミ村に合わせて、規模を小さくしたからいいよね〉


〈……そうか。シャーリーの行動範囲が、森と王城、ルルーカの街だけだったな。他を知らないんだ、仕方がないか〉


〈そうでしょう。本の挿絵では、イメージか上手く出来なかったし〉


 だが周りは、小さな村にできあがった石壁に驚いていた。

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