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リィーネ森の魔女  作者: にのまえ


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63話

 私たちは北の土地、ルルーカの街の近くへと転移した。すぐに周囲を見回して、全員が揃っていることを確認する。誰一人欠けていないのを見て、無事に転移できたことに胸を撫で下ろした。


 私はすぐさまポシェットを漁り、昨日作った薬水の瓶を二本取り出す。紫色に濁ったそれは、ガラーナの飴よりもはるかに苦い、魔力回復の飲み薬だ。


〈……まじか、シャーリー。それを俺に飲ませる気か?〉


〈そうだよ。これから魔力を使うから、兄も一緒に飲もう!〉


 蓋を外し、私は一気に煽った。

 口いっぱいに広がる、強烈な苦味と渋み。それでも、転移で消耗した魔力が一瞬で満ちていくのを感じる。


「グヘッ……。ゴホッ、さ、兄も飲んで」


「シャーリー。いま、変な咳したよな?」


「飲んで」


「……チッ。わかったよ。口を開けるから、いっきに流し込め!」


 観念した兄が口を開けた瞬間、私は容赦なく薬水を流し込んだ。次の瞬間、兄は全身を震わせて悶え始める。私はすかさずポシェットに手を突っ込み、口直し用のイチゴ飴を取り出して、ふうを取り口に放り込む、


「……ううっ、美味しいはずの。いまはイチゴ飴まで苦い……」


 その様子をじっと観察していたアルバートが、興味深そうに近寄ってくる。そして、私に手を差し出し、軽い口調で言った。


「シャーリー、それ、僕にもちょうだい」


 彼は魔法使いだが、この薬水は貴重な魔力回復薬だ。売ればかなりの額になる代物で、簡単に渡すわけにはいかない。


 私は一歩下がり、頭を下げた。


「すみません。これは貴重な薬なんです。おいそれとお渡しできません。皆さんには、すでに納品した回復薬があるはずです」


「へぇ……。もしかして、あの回復薬もシャーリーが作ったの? でも、この苦そうな匂いは薬水匂いだよね。それ欲しいなぁ」


(苦そうな匂い? 匂いを嗅いだだけで、薬水だってわかった?)


 この魔法使いアルバート、もしかして……薬水を飲んだことがあるとか? 断っても諦めないアルバートに困っていた。


 そこに。


「アルバート、またおまえか!」


 ローサン殿下の鋭い声が飛ぶ。


「そんなに暇なら、いますぐルルーカの街の冒険者ギルドに出向き。天幕設営の許可をもらってきてくれ!」


「えぇ、かしこまりました」


 アルバートは嫌がったが、殿下の命令には逆らえないのか、素直にルルーカ街の冒険者ギルドへと向かった。


 ⭐︎


 数分後。冒険者ギルドで許可を得て戻ってきたアルバートは、ローサン殿下の前で報告した。


「殿下、冒険者ギルドのギルドマスターに伝えてきました。街の東側にある原っぱであれば、天幕を張ってもよいそうです」


「そうか。それは助かる」


 殿下はみんなを見て、指示を飛ばす。


「騎士団長ミハエル、副団長リチャード。これより街の東側に天幕を張る」


「「かしこまりました」」


 騎士団と魔法使いたちは、許可の下りた原っぱへ向かい、次々と天幕を設営していく。今日の作戦が終われば、彼らはここで一夜を明かす予定のようだ。


 東側の原っぱに真っ白な、天幕が張られていく。その中の、立派な天幕から出てきたローサン殿下は騎士にテーブルを持ってこさせて、その上に地図を広げた。


「魔女、こっちに来てくれ! アルバート、ミハエル、リチャードもだ!」


「はい!」


 どうやら、これからどの村から回るのか話すようだ。


〈兄、行こう〉

〈ああ〉


 私は兄と並び、殿下のもとへ向かった。

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