表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リィーネ森の魔女  作者: にのまえ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

60/67

59話

 兄を背に乗せ、私はホウキで夜空へと舞い上がる。ドラゴン夫婦が待つ空を目指し、高度を上げていくと、上から低く響く声が降ってきた。


「こっちだ、魔女」


 声の方へ顔を向けた瞬間、月夜を背に、真っ黒なドラゴンが二体、悠然と空を舞っていた。月明かりを受けて鈍く光る、頑丈そうな鱗。圧倒的な存在感と威圧、鋭く光る赤い瞳。


 物語の中の存在とはまるで違う。

 これが、本物のドラゴンだ。


(……すごい。それしか言えない)


 その感想は、どうやら後ろの兄も同じだったようだ。


「すげぇな……ダンジョンの奥にいるドラゴンとは、比べものにならない。圧と迫力が段違いだ」


 興奮を隠せない兄の声に、私は黙って頷いた。


「ええ。本音を言えば、もう少し近くで見たいけれど……羽ばたきの風圧で、吹き飛ばされてしまう」


 彼らの羽が生む風が届かない距離を保ち、私たちは空に留まっている。


「お二人に、お昼と夕飯を渡したいのだけど、これ以上近づけないです」


「ん? そうか。なら、少し待っていろ」

「ええ、待っていてね」


 ドラゴン夫婦がそう告げると、何かを唱え始めた。次の瞬間、二体の額に魔法陣が浮かび上がり、下で見た思念体の姿に、人型へと変化した。


 先ほど森で見た淡い思念体とは違う。近寄ることをためらわせる、重厚な威圧感がそこにあった。さすが、古代から生きるドラゴンだ。


 奥さんのスルルが近づいてくる。私は、今日のお昼に作ったカツサンドと、先ほど作った夕飯の肉団子入りミートスパゲッティを差し出した。


 彼女はそれを嬉しそうに受け取り、まず香りを楽しむように目を細める。


「とてもいい香りね。後でいただくわ。それから、これはバーヤカと私からの贈り物よ。きっと明日、卵を探すのに役立つはず」


 そう言って渡されたのは、黒く艶やかな鱗が二枚。


「ありがとうございます。明日は必ず、卵を見つけます」


「シャーリーと俺に任せてください」


 兄と並んで頷き、手をドラゴン夫婦に振って森へ戻る。


 地上では、父が五人前の肉団子入りミートスパゲッティを平らげており、魔王は何か言いたげな様子で待っていた。


「魔女。二人から、貴重な鱗をもらったのだな。それを持って近づけば、卵の場所を教えてくれるだろう」


「はい。ドラゴン夫婦も同じことを言っていました。魔王、食べ終わったらこの国の地図を出しますので、卵の場所を教えてください」


「ああ、ゆっくり食べてからな」


 そう言われたものの、魔王と私たちは肉団子入りミートスパゲッティを、あっという間にぺろりと平らげてしまった。


 それでもまだ少し物足りなくて、私はみんなの紅茶を淹れ、少し前に作っておいたパウンドケーキとガトーショコラを持ってきて、テーブルに並べた。


 それをつまみながら、アイテムボックスから複製した地図を取り出す。


「魔王……卵の場所を教えてください」


 一瞬、魔王が「まだ食べるのか」とでも言いたげな目を向けたが、広げた地図を覗き込み、ここだと指をさした。なんと、指差ししたのはヤスラ村のある場所。


 そこは、私が一番行きたくない村だ。


 だけど、そんなことを言ってはいられない。彼らに、卵を見つけると約束したのだ。


「そうですか。ここに、卵があるんですね」


「ああ。細かな場所までは分からないが、確かにそこだ」


「ありがとうございます。明日はその村を、くまなく探します。片付けが終わったら、お風呂の準備をしますね」


 今日は疲れがよく取れて、入浴時に花が咲く、見た目もいい花風呂にしよう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ