58話
王城で話したことは、すべて父に伝えた。
魔法使いのことも口にしようとしてと思ったがぐう、ぐうっと鳴った自分のお腹に、言葉を止める。
(……話すのは夕飯の後にしよう)
「じゃ、夕飯作ってくるね」
そう言ってキッチンへ向かうと、兄も当然のようについてくる。兄も話し合いで疲れているから休んで、と言うべきか一瞬迷ったけど。
今日は転移魔法に複製魔法、それに兄との語り合いを使い、思っていた以上に魔力を使っている。明日はもっと消耗するだろうし、準備も必要だ。
(……夕飯は手伝ってもらおう)
「お腹すいたね。夕飯は何がいい?」
「うーん。ハンバーグか、肉団子なんてどうだ?」
(ハンバーグにするか、肉団子にするか)
魔冷庫の中身を思い返す。中に少し硬めの肉と、細切れの肉がまだ残っていたはず。それなら細かく刻んで肉団子にして――。
「決めた。肉団子入りミートスパゲッティにするわ」
「美味そうだな」
残っていた肉を細かく刻み、みじん切りにした玉ねぎ、卵、パン粉、塩コショウを加えてこね、肉団子を作る。大きなフライパンを二つ用意し、肉団子を並べて表面に焼き色をつけた。
そこへ作り置きのミートソースを加えて軽く煮込み、パスタを五百グラムずつフライパンに入れる。全体を混ぜながら煮込み、塩コショウで味を整える。
汁気がほどよく減り、パスタが柔らかくなったところで完成だ。二人前を容器にとりわけて。
「できたわ。兄、このまま外のテーブルに運びましょう!」
外の灯り魔法の下で待つ父たちのもとへ、兄と一緒にフライパンを持って出る。五人前のパスタが入ったフライパンは父の前に置き、もう一つのフライパンは私と兄、そして魔王の分だ。
「いただきます」
そう言って、夕飯が始まる。
食べ始めた私たちを見て、思念体のドラゴン夫婦は、体を休めるため山へ戻ると言った。
「あ、待って」
私は家の中へ戻り、お昼に作ったカツサンドと、容器に入れた肉団子入りミートスパゲッティをカゴに詰める。それを持って、外で待つドラゴン夫婦のもとへ戻った。
「魔女の気持ちは嬉しいが、この姿では持てない」
そう言われ、私は暗くなった夜空を指さす。
「ドラゴン夫婦がいる空の上まで届ければ、受け取れる?」
「え? 受け取れますが……」
「わかった。ホウキで向かうから、先に戻って待っていて」
そう告げると、ドラゴン夫婦は少し驚きつつも「では、明日」と言い残して姿を消した。
今、食事の手を止めてまで.物語の中でしか知らない、ドラゴンの姿をこの目で見たかった。それは兄も同じだったのだろう。気づけば、私の隣に立っている。
「兄も行く?」
「ああ、連れて行ってくれ」
そこまでしてドラゴンが見たいのか、と呆れた顔をする父と魔王に、私と兄は顔を見合わせて笑った。そしてホウキに乗り、夜空へと飛び立った。




