53話
森の木々は、保存魔法によって侵食が止まり、暖かな日差しが差し込んでいる。その中で「いただきます」と声をそろえると、山盛りのカツサンドへ手を伸ばした。
バターで香ばしく焼いたパン。甘辛いソースをたっぷりまとった分厚いカツは衣が軽く、噛むたびにサクッと音を立てる。そこにシャキシャキの野菜が合わさり、食欲を刺激する。
「美味しい、いくらでも食べられちゃう」
「うまい、シャーリー」
「ほんと、うまい!」
食パン一枚で作ったカツサンドを、一口でぺろりと平らげる父。両手に一口大に切ったカツサンドを持って頬張る兄。そして、それに負けない私。これが、いつもの食事風景だ。
「……すごい食欲だな」
同じテーブルに座る黒もこ魔王は、呆気に取られたように呟いた。ドラゴン夫妻は思念体のため食事はできず、本体は今も空の上にいるらしい。
彼らの分まで私たちが食べてしまわないよう、ドラゴン夫妻用のカツサンドはキッチンに置いてある。
(帰りに渡せばいいわね)
山盛りだった皿のカツサンドは、みるみるうちに減っていく。その様子をドラゴン夫妻は、驚いた目で見つめている。
「魔王もしっかり食べてね」
「うるさい、食べている」
そして、ものの数分たらずで、たくさんのカツサンドはお腹の中に消えた。食べ終えた私はお腹をひとなでする。
「ふうっ、食べたわ。魔力も回復!」
「シャーリー、口の周りにソースが付いてるぞ」
「そう言う、兄もよ!」
口をハンカチで吹いて、グラスに氷を入れて紅茶を注ぎ、一息つく。そうだと私はアイテムボックスを探り、クッキーの入ったガラス容器を取り出して蓋をあける。
「食後のバタークッキー!」
「それ、前に作ったやつだな」
あれだけのカツサンドを食べたのに、クッキーに手を伸ばす兄と私を見た魔王は「まだ食べるのか……!」と、目を丸くするのだった。
⭐︎
最後の一枚まで、クッキーを食べ。
「ごちそうさまでした。片付けが終わったら、王城へ行ってローサン殿下と話してくるね」
そう言い残し、私は大皿とガラスの容器を手に取って片付けに向かった。その後ろを、使い終わったグラスやカップ、ティーポットを抱えた兄が続く。
「シャーリー、手伝うよ」
「ありがとう」
並んで後片付けを始める。外では父が、黒もこ魔王とドラゴン夫妻に向かって「シャーリーに任せろ」と話している声が聞こえてきた。
今日これから王城で殿下と話す内容は、おそらく明日以降、北の大地にある村々を回る件だろう。ドラゴンの卵の場所さえ分かれば、私か兄のどちらかが回収すればいい。
片付けを終えた私は、王城へ向かう準備を整え、先に外へ出ていた兄のもとへ向かった。どうやら父と魔王、ドラゴン夫妻の話はすでについたようで、卵の回収は私に任せる、という結論になったらしい。
「わかりました。父、兄と一緒に王城へ行ってきます」
杖を握り転移魔法を発動させ、兄とともに王城へと転移した。




