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リィーネ森の魔女  作者: にのまえ


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51話

 詳しい話をするから、一度城に来てほしい、そう殿下は言った。


 母からもらった地図は古く、私自身も北の地の地図を確認したい。それに、挨拶もろくにできないまま慌ただしく別れてしまった、できれば、書庫の妖精にも顔を出したい。


「わかりました。では、本日の午後にお伺いいたします」


「ありがとう。午後に会おう」


 殿下との通信が終わり、私は小さく息を吐いた。午後の話はおそらく、北の村々を巡る件だろう。ならば、ドラゴンの卵の在処は黒もこ魔王に聞けばいい。


「ドラゴンの卵探しに魔物駆除……面倒だけど、やるしかないわね」


 通信鏡を切り部屋の外へ出ると、兄が眉をひそめ、家全体に遮音の魔法をかけていた。


「兄、どうしたの?」


「いや、あいつらが騒ぎ始めてな。シャーリー、通信は何だった?」


「ローサン殿下から、魔物討伐の依頼を受けたの。午後に城へ行くことになったわ」


「はぁ!? 薬師魔女に魔物討伐をさせる気か? 何考えてんだ!」


 兄の反応も、もっともだ。


 王族との契約は、あくまで薬師としてのも

の。今回は駆使玉による魔物駆使ではなく、魔法による魔物討伐となるから、話が違ってくる。


「でもね兄。殿下について、各村を回ることになると思う。そうなれば、ドラゴンの卵も見つけやすいんじゃない?」


「……確かにな。外のあいつらも揉めはじめた。遮音を解いたら耳を塞げ」


 言われた通り耳を塞ぐと、兄が魔法を解いた。

 途端に、塞いだ耳越しでもわかるほどの怒声が響く。どうやら、ドラゴン夫婦と魔王が言い争っているらしい。


 その傍らで、父は黙したまま成り行きを見守っていた。


「魔王、村を攻めよう!」

「余はここから、動けぬ」

「そんな楔、断ち切れるでしょう! さあ、行きましょう!」


 卵を早く取り戻したいドラゴン夫婦と、動けない魔王。彼らが言い争うたび、黒い瘴気が滲み出し、周囲の木々が黒く変色していく。


(……ああ、森が苦しんでいる)


「いい加減にしなさい!」


 外に出て杖を構え、声を張り上げた。


「よくも、私の森を汚してくれましたね。今すぐその口を閉めなさい。さもなくば、この森から追い出します。魔王は祠へ戻します!」


 私の声に、ぴたりと沈黙が落ちた。

 魔王とドラゴン夫婦を横目に、父が静かに問いかける。


「シャーリー、殿下との話は?」


「流行り風邪の影響で、この国の冒険者が隣国に出ていて、不足しているそうです。それでローサン殿下から、北の大地にあらわれた魔物討伐の依頼を受けました。午後になったら城へ行き、詳しい話を聞いてきます」


「何? 隣国に出向いていて冒険者不足……? まさか、隣国でも風邪が流行っているのか」


 私は小さく頷いた。


「そうかこの風邪は、ドラゴン、お前たちの旅の影響だな。お前たちが身に纏う瘴気が少しずつ散り、病を広げたのだろう」


「まだ断定はできないけど、あなた達が言い争うだけで、周りの森はこうなったわ」


 そう言われて、魔王、ドラゴン夫婦は変色した木々を見回し、何も言えなくなった。

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