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リィーネ森の魔女  作者: にのまえ


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47話

 ピィィーーーー!!


 甲高い笛の音が、リィーネの森全体に響き渡る。その笛の音を聞きつけ、父は冬の森を駆け抜け、封印の祠へと急いできた。


 そして、ゆっくりと結界が解かれ、父は森へ足を踏み入れる。


「祠の結界を解いたのか? シャーリー、何があった」


「父……魔王が復活したの!」


 私はそう叫ぶと、黒いもふもふをがっしと掴み、父の前に突き出した。けれど父はその姿を一目見るなり目を細め、次の瞬間、大声で笑い出した。


「ガハハハッ! ガイ、やけにちんちくりんになったなぁ」


「うるさい! キョン! 余だって、まさかこの姿で目覚めるとは思わなかった! すべては、あの魔女の性悪な仕業だ!」


「ああ、魔女リィーネか。あやつらなら今ごろ、嫁と一緒に魔女会に参加しているな」


 二人がまるで旧友のように言葉を交わす様子に、私は思わず目を丸くした。まさか、魔王ラガール・ガイアートが、父の友人だったなんて。


 それは兄も同じだったようで、驚きに眉間に深く皺を寄せている。


「しかし、どうして目覚めてきた? ガイは、人間の世界が嫌で、余生は好きな魔物に囲まれて祠の中で暮らすと言っていただろう?」


「聞いてくれるか、キョン。二日前のことだ。レッドドラゴン夫婦バーヤカとスルルが、卵を探してほしいと、余の夢に現れた」


「夢? 卵? あの夫婦にようやく子ができたのか……。だが、なぜ卵を探す?」


「なんでも、少し目を離した隙に人間に奪われたらしい」


「なっ……」


 言葉に詰まる父を前に、魔王は続ける。


 あまりにも必死に懇願され、断りきれずに目を覚ました。だが目覚めてみれば、この黒いもこもこの姿。首には首輪と鎖までついていて、身動きすら取れなかったという。


「この姿はあの魔女の呪いだ。魔王たる余を使い魔にして、こき使うつもりなのだろう」


「魔女リィーネが、ガイを……使い魔だと?」


 一瞬ぽかんとした父は、次の瞬間、腹を抱えて笑い出した。


「ハッハッハ! 前々から面白い魔女だと思っていたが。リィーネはなかなか面白いことを考えるなぁ」


 父の大笑いが、静かな冬の森に響いた。


 ⭐︎


 私は二人の壮大な会話についていけず、父を見たり、魔王を見たりと視線を行き来させていた。

 兄も口を挟むことなく、ただ黙って父と魔王のやり取りを聞いている。


「だいたい事情はわかった。シャーリー、そのガイについている鎖を引っ張ってみてくれるか」


「鎖を……引っ張るの?」


 父に言われた私は鎖だけを掴み、思いきり引いた。ジャラジャラと金属音が響き、鎖は元の長さよりも、倍以上ずるずると伸びていく。


 それを確認した父は何の躊躇もなく、魔王ラガール・ガイアートを口に咥え、そのまま走り出した。


「お、おい!」


 抗議の声を上げる魔王を無視し、今度は背中に乗せると、父は振り返りながら叫ぶ。


「シャーリー、ここは寒い! 祠はそのままにして、いったん家に行くぞ!」


「う、うん。兄、行こう」


「おう」


 私は急いでホウキを取り出し、兄と背中に乗せて空へ浮かぶ。こうして私たちは、魔王を乗せて走る、フェンリル父の背中を追い冬の森を後にした。

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