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リィーネ森の魔女  作者: にのまえ


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46話

 冬の大地の上空を、私たちはホウキで飛んでいた。ときおり吹く冷たい風が頬を差し、雪がしきりに降り続いている。吐く息は白く、眼下には冬枯れの森が、どこまでも広がっていた。


 中央の家を出るとき、あらかじめ身体を温める魔法をかけていたおかげで、思ったほど寒さは感じない。


「兄、祠が見えてきたから降りるわね」

「おう」


 背後で兄の手に力がこもるのがわかる。私は高度を落とし、祠を覆う結界の手前に着地した。


 すぐに杖を取り出し結界の状態を確認するも、二日前に見たときと変わらず、淡い光を帯びた魔法陣は確かに作動していた。


「大丈夫、結界は生きてるわ。この地に眠る魔王は、今回の魔物騒ぎとは関係なさそうね」


 魔女になったとき、ここリィーネ森の北に魔王が眠っていると、その封印を守っているとも母に聞かされた。


 兄も辺りを確認してうなずく。


「そうだな。だが……封印の内側にある祠も一度、見ておいた方がいいんじゃないか?」


 この兄の言葉にも一理あると、私は短く息を整え、結界を“一時的に”解いた。


 結界の内側は、まるで切り取られた別世界。

 背の高い木々が森のように茂り、その奥へと続く一本道の先に、封印の魔石で造られた祠が静かに佇んでいる。


 確認のため、一歩、また一歩と足を進めた、そのとき、近くの茂みがざわりと揺れ、私の前に、真っ黒で、もこもことした何かが姿を現した。


 隣の兄は警戒を怠っていなかったが、出現に気づくのが一瞬遅れ、前に出るのが間に合わなかった。


「なんだ、その黒いもこもこは? どこから入り込んだ?」


 だが、その声は無視される。


 黒い毛の奥から覗く、鋭い琥珀色の瞳。

 それは真っ直ぐに、私だけを射抜いていた。


「おまえ……魔女だな。なら、この鎖を消してくれ!」


 そう言って、黒いもこもこは首元を示す。

 それは首輪のように巻き、禍々しい鎖がつながっていた。


 ⭐︎


 私は杖を振り、黒いもこもこに鑑定をかけた。

 視界に浮かび上がったのは、名前、種族、能力値、魔力。


 そして、魔王ラガール・ガイアート(三百五十)。この文字を認識した瞬間、思考が止まった。


(……え?)


 慌てて表示を最初から見直す。だが、何度確認しても結果は変わらない。指先が震え、杖を強く握りしめる。


(ラガール・ガイアート……ま、魔王⁉︎)


 思わず黒もこを凝視したまま、声を張り上げていた。


「嘘よ! 母は……母は、魔王はもう目を覚まさないって言っていたのに! どうして、どうして起きてるの⁉︎」


 黒もこ。否、魔王ラガール・ガイアートはきょとんとしたように首を傾げた。


「それは余にもわからぬ。目を覚ました時には、この姿で、首輪と楔が付けられていた」


 そう言って体を揺らすと、ジャラリと重たい音を立てて、奥へと続く楔が鳴った。


 母からリィーネ森の管理を任されて、一年とちょっと。それなのに外で令嬢にいじめられて、いまは風邪が流行り、昔私をバケモノだと捨てた村の人間に会い、周辺の村では魔物が出没し。


 そして、魔王の復活。


(……お、重すぎる)


「ああーー! どうしたらいいの? いまは母がいないのに魔王だなんて……手に負えないし。誰に、誰に伝えれば……」


 半ば泣きそうになった私を、落ち着かせようと、兄が背中をぽんぽんと軽く叩く。


「兄ぃ~」


「落ち着け、シャーリー。まずは、キョン様に報告しよう」


「……父に? うん、そうだね」


 私は兄に、こくこく頷いた。


「なら早く、父に伝えないと。父からなら、きっと、母にも伝えられるはず!」


 私は胸元から緊急笛を取り出して、思いきり息を吸い込み吹いた。

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